當麻曼荼羅絵解きと尺八体験@當麻寺中之坊(葛城市)
葛城市の『當麻寺 中之坊』で、「當麻曼荼羅絵解き」「尺八演奏」などを体験してきました。節をつけて曼荼羅を解説していく絵解きも不思議な魅力がありましたし、初めて触った尺八も、意外とちゃんと音が出て我ながら驚きでした!お寺で開催されるイベント的なものはほぼ初体験でしたが、とても楽しいものでした。(※「写仏」体験の記事はこちら)
二上山の麓にある、中将姫ゆかりの名刹
葛城市の二上山の麓の古刹『當麻寺(たいまでら)』。中将姫(Wikipedia)の伝説が残り、中将姫が織り上げたとされる「當麻曼荼羅」をご本尊としています。また、毎年5月14日にはその来迎の模様を再現した『聖衆来迎練供養会式(練供養会式、お練り)』でも有名です。
【追記】當麻寺の「練供養会式」は毎年5月14日でしたが、2019年から「毎年4月14日」開催へと変更になります。
うちの奥さんは地元出身ですから、小さな頃からことあるごとに来ていたそうですし、今の自宅からも近いため、これまでにも何度もお参りしてきました。そしてこの日、當麻寺の塔頭の一つ、高野山真言宗の寺院『當麻寺 中之坊』にて、初めての「まんだら絵解き」「写仏」「尺八」などを体験してきました。
なお、當麻寺中之坊では、毎月16日にご本尊の「導き観音祈願会」(定例行事)が行われています。この日に合わせて様々な法要やイベントなどが催されますので、16日にお参りいただくといいでしょう。
葛城市にある、高野山真言宗寺院『當麻寺 中之坊』。大和三名園のひとつ、史跡名勝「香藕園(こうぐうえん)」があり、春には「ぼたん園」で見事な牡丹の花が咲き誇ります。役行者が開いた、當麻寺の中でも最古の塔頭とされます
當麻寺中之坊の山門をくぐったところ。書院(重文)・茶室「丸窓席」(重文)・霊宝館・写仏道場などが続きます。建物裏手には国宝の三重塔の「東塔」を借景にして名園「香藕園」が広がっています
當麻曼荼羅の内容を歌うように読み解きます
當麻寺中之坊では、「當麻曼荼羅」に描かれた内容を、節をつけて歌うように解説する「當麻寺曼荼羅絵解き」という行事が遺されています。
當麻寺曼荼羅絵解き當麻寺には古来より、「當麻曼荼羅」に描かれた内容を解説する「絵解き」が伝わっています。極楽浄土の光景を独特の節回しで説く一節があり、もとは曼荼羅堂にて行われておりましたが、現在は中之坊に伝承されています。
「絵解き節法会」とも呼ばれており、五木寛之氏には「芸能の源流」と称されています。
この日は、當麻寺中之坊の實秀長老が登場くださって、五木寛之さんの『風の王国』の中で「艶のあるバリトン」と評されたというお声をご披露いただけました。また、お話ぶりもさすがで、當麻寺の縁起から(法隆寺の50年後の開基と、その古さが分かりやすいですね)、中将姫が織った當麻曼荼羅がご本尊になった経緯など平易な言葉で語られます。私たちを含めて20名ほどが参列していましたが、誰にでもイメージしやすかったと思います。
當麻曼荼羅は1300年ほど前に織られたものですが、絵解きが始まったのは今から300年ほど前のことです。實秀長老は、昭和22年に當麻寺へ入門し、すぐに「絵解き師」としての修行をなさいました。その後、他の絵解き師の方の引退によってこの行事は一時断絶していましたが、昭和45年に復活。現在は、前田青邨画伯の高弟・入江正巳画伯の作となる「平成當麻曼荼羅」を用いて、この法要が続けられています。
絵解きでは、曼荼羅を指し棒でさしながら、そこに描かれている意味や教訓などが歌うように語られて、その世界観に引きこまれます。仏の教えを広めるためにエンターテインメントと融合したのかとも想像できますから、まさに「芸能の源流」と言えるかもしれません。トータルで20分程でしたが、決して堅苦しいものではありませんので、気軽に参加して欲しいですね。
なお、後から「平成當麻曼荼羅」の間近に近づいてしげしげと眺めることもできますが、出来れば少しだけ早めに入場しておいて、先に曼荼羅に描かれた内容を見ておくといいですね。阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩の三尊を中心に、聖衆三十四尊や仏教的な説話などが描かれています。踊るように祈る姿の方や、本当に小さな小さな仏さまなどの細かい描写も多いので、ぜひじっくりと観てみてください。
中之坊の前に立っていた「まんだら絵解き」の案内。開催予定日時は、ホームページの「イベント」ページでご確認ください。団体の方は別の日付でも申し込むことが出来るようです
天井絵が美しい「写仏道場」を舞台として、「平成當麻曼荼羅」を使った當麻曼荼羅絵解きが行われます。この日の参列者は20名ほど。祝日にあたったこともあり、小さなお子さんも興味深そうに曼荼羅を見つめていました(※通常は撮影不可)
写仏道場の格天井は「絵天井」になっています。巨匠・前田青邨氏の作品(雁を描いたもの)や、上村淳之氏、片岡鶴太郎氏など、150枚もの作品が飾られています。ちなみに、すべて反りが少ないベニヤ板に描かれていて、今でも製作は続けられているとか。参拝者は庭園から眺められますが、絵解きや写仏を行うと建物内でじっくりと拝見できます(※通常は撮影不可)
・開催日時は「イベント情報」ページでご確認ください
・参加の御供えは、中之坊拝観料(500円)+絵解き拝聴・絵天井特別拝観料(400円)の計900円です
・16日開催の場合は、14時から「導き観音祈願会」が行われますので、合わせてどうぞ
毎月16日は「導き観音さま」のご縁日です
毎月16日には、當麻寺中之坊のご本尊となる「導き観音さま」(こちら)の法要『導き観音祈願会』が行われます。
この仏さまは十一面観音像で、中将姫さまの守り本尊として信仰されていたもの。女人の守り本尊といわれ、良縁・安産・子授けなどに霊験あらたかなのだそうです。祀られているお堂は「中将姫剃髪堂」と呼ばれ、通常は扉を閉められていますが、この日はご開扉となります。導き観音さまの右手には「五色ひも」が結ばれていて、その紐を触れてご縁を結ぶことができますので、ぜひお参りしておきましょう。
當麻寺中之坊のご本尊「導き観音さま」が祀られている「中将姫剃髪堂」。普段は閉められていますが、毎月16日の法要の日にはご開扉されます
法要準備が行われていた中将姫剃髪堂。その名前の通り、ここで中将姫さまが剃髪したと伝わっています。建物は桃山時代のもので、ご本尊の導き観音さまは平安時代の作。7月の晴天の日だったため気温は高めでしたが、お堂は風が通り抜けて涼やかでした
僧侶の方々が登場して『導き観音祈願会』が始まります。数名の読経のユニゾンが響き、それに合わせるように「尺八」の音色が絡むという、とても不思議なものでした。なかなか見慣れないスタイルで、(失礼な言い方ですが)かっこいいんです!ちなみに、古くは尺八を奏でながら旅をする虚無僧で知られる「普化宗」(Wikipedia)という禅の宗派がありました。読経+尺八の組み合わせも行われていたのかもしれません
導き観音さまとつながれた「五色ひも」は、後からこうしてストラップとして販売されていました。見た目も美しいですね
初の「尺八」も、意外と上手く吹けました!
「導き観音祈願会」に続いて、尺八奏師「泉川獅道」さんによる3曲ほどのミニ演奏会が行われ、そのまま尺八の演奏体験会が始まります。毎月16日の法要の後にほぼ毎月開催されていて(30分ほど)、料金も入山料のみ、講習費などは不要です。
「尺八は音を鳴らすだけでも難しい」と聞いたこともありますし、私のような楽器経験が全く皆無の人間には難しいだろうと思っていました。しかし、参加者それぞれに尺八が手渡されて、先生たちのアドバイスを聞きながら吹いていると、時々いい音が出るんですよね。
ただし、あくまでも時々であって、一旦口を離してしまうとまた鳴らなくなったりしますし、指で多くの穴をふさぐ(=低い音を出す)と、これだけで音が出づらくなります。簡単そうに思えるちょっとしたことが出来ないので、これが悔しいんですよね(笑)
ちなみに、尺八の世界では「首ふり3年、コロ8年」という言葉があるとか。首を振って音の加減ができるまでに3年、指の動きでいい音が奏でられるまでに8年かかる、という意味なのだそうです。そこまで突き詰めるのは大変だと思いますが、またチャレンジしてみたいと思いました。
當麻寺中之坊では、毎月16日の無料講習だけではなく、日を決めて「グループレッスン」なども開催されています。他ではなかなか出来ないことですから、ぜひ体験してみてください。楽しいですよ!
導き観音祈願会に続いて、尺八奏師・泉川獅道さんのミニコンサートが始まりました。3曲ほどと短い時間でしたが、至近距離で聴く生の尺八の音色は、腹に染み入るようです。お堂の雰囲気とも相まって、素晴らしい体験になりました!
尺八の演奏を拝聴した後には、尺八体験もさせていただけました!尺八ってきっとそれなりに高価なものだと思いますが、10本以上も用意してあって、一人に一つずつ貸していただけました
この日の尺八体験のために揃った尺八たち!これだけの本数があるのも初めて観ますし、実際に触るのももちろん初めてです
尺八の楽譜を見せていただきましたが、もちろん何のことやら…。不思議な暗号のようですね
尺八の口の部分。ここに薄めに唇をあてて、力を入れ過ぎない程度に息を吹き込みます。私は全く楽器経験がありませんし、尺八は音を鳴らすのも難しいと聞いていたので、ほぼ諦め気分で挑んでみたのですが…
泉川先生から吹き方の指導をしていただきます。驚いたことに、何度かチャンレンジしているうちに、意外といい音が出るようになるんですよ!演奏とは程遠いものですが、「音は出せた」ことは間違いありません。数十分の間でも、少しずつ上達しているのが分かるって嬉しいですね
こんな感じで、人生初の尺八を吹いてます!一度いい音が鳴ったあとでも、口を離すとまた鳴らなくなったりしますし、低い音(穴を多めに押さえる)と鳴らなくなったりと、いろいろと難しいんですが、とりあえずは音が出たので良しとしましょう(笑)
・体験講習は、16日(ほぼ毎月)開催。中学生以上は入山料500円が必要ですが、講習費は無料です
・グループレッスンは、「第1木曜日」「第3木曜日(または16日)」に開催。1回約60分で、一般料金は、月1回-3,000円、月2回-5,000円など。
・個人レッスンは、開講日は要相談。1回約60分で、月1回-5,000円、月2回-8,000円など
■當麻寺 中之坊
HP: http://www.taimadera.org/
住所: 奈良県葛城市當麻1263 中之坊
電話: 0745-48-2001
宗派: 高野山真言宗
本尊: 導き観音さま
拝観料: 大人 500円、小学生 250円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料(「二上山ふるさと公園(無料)」から歩くことも出来ます)
アクセス: 近鉄南大阪線「当麻寺駅」下車、徒歩15分ほど
※取材日は「2012年7月16日」でした
※中之坊の拝観と、當麻寺の伽藍三堂(本堂・金堂・講堂)の拝観は別料金です
※写仏道場内は撮影不可です。今回は特別のご許可をいただいて撮影させていただきました。お気をつけください
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