鑑真和上の故郷の花「瓊花」特別公開 @唐招提寺(奈良市)
鑑真和上ゆかりのお寺『唐招提寺』では、毎年4月中旬~5月ごろ、中国・揚州の名花「瓊花(けいか)」が一般公開されます。隋の皇帝・煬帝が気に入って門外不出とした花で、国内で見られる場所が限られるとても貴重なものです。ガクアジサイのような姿からとてもいい香りが漂い、その周りを美しい蝶が飛び回るという、素晴らしい光景が見られました!
御影堂供華園「瓊花(けいか)」特別開園
中国から苦難の末に渡ってきた「鑑真和上」が開いた、奈良市の世界遺産寺院『唐招提寺』。ここでは毎年4月中旬~5月ごろ、鑑真和上の故郷である、中国・揚州(現在の江蘇省揚州市)の名花「瓊花(けいか)」が一般公開されます。
この花は、かつて隋の第2代皇帝・煬帝がとても気に入り、門外不出にしたのだとか。
唐招提寺の瓊花は、1963年の鑑真和上遷化1200年の記念事業で、中国仏教協会から一株が贈られたもの。それを地道に増やし、現在では10株あまりまで殖えているそうです。
唐招提寺の本堂前に立てられた『御影堂供華園「瓊花」特別開園』の案内。毎年4月中旬から5月ごろに公開されますが、2016年は「4月23日~5月5日」。例年よりもやや早めに開花したそうです。比較的早めに見頃は終わってしまうと思われますので、お早めにどうぞ!
瓊花が見られるのは、金堂や講堂の奥にあたる、御影堂のお庭・供華園(くげえん)です。御影堂は国宝「鑑真和上坐像」を祀るお堂で、敷地は通常は非公開ですから、とても貴重な機会です
唐招提寺・御影堂供華園の「瓊花」の花。ガクアジサイ(額紫陽花)に似た花姿は写真ではよく拝見していましたが、ここまで大きな木だとは知らなかったので驚きました!4~5mほどまで育つそうです
瓊花をアップで。こうしてみるとまさにガクアジサイですね。真ん中に小さな花が密集して咲き、その周りに額(がく)に見立てられる装飾花を8つ付けます。すぐには見分けがつきません
瓊花は全部で10株あるそうです。この日はたくさんの方が瓊花の花に見入っていました。人の背と比べると、高い木であることがわかりやすいですね
瓊花とガクアジサイの違いは?
花の特徴である「真ん中に小さな花が密集し、その周りに装飾花が付く」という点では似ていますが、細かく調べると、いろいろと違う点も多いのだとか。
●瓊花(けいか)の特徴
・スイカズラ科の半常緑低木(4mほど)
・装飾花の数は必ず8つ、花びらは必ず5枚
・たおやかな良い香りがする
(参考:瓊花とは - 植物図鑑 Weblio辞書)
●ガクアジサイの特徴
・ユキノシタ科の落葉低木(1mほど)
・装飾花の数は決まっておらず、花びらは3~5枚
・ほぼ香りはしない
瓊花のアップ。わかりずらいですが、装飾花の数は8つ、花弁の数も5つでそろっています。また、辺りにはものすごく品のいいたおやかな香りを漂わせていて、皇帝に愛された花というのもわかるような気がしました
こちらは以前に撮影してあった、橿原市・久米寺のガクアジサイ(紹介記事)。この花の例では、装飾花の数は8つより多くなっていて、花弁の数はほぼ4つです。花によってばらつきがあるのだとか。見比べてみないとわかりづらいですね
瓊花の香りに誘われて、たくさんの美しい蝶が寄ってきていました。この瓊花の香りを再現した「天平香・瓊花」というお香も、境内の売店で購入できるそうです。「唐招提寺お土産人気No.1」と紹介されていましたので、興味のある方はぜひ!
ちなみに、瓊花の周りをやや忙しなく飛んでいた蝶は「アオスジアゲハ」(Wikipedia)のようです。青い翅が美しいですね!一般的に「とまるときに翅を閉じるのが蝶、開くのが蛾」と区別されるといいますが、この蝶は翅を開いてとまることも珍しくないそうです
昭和天皇と趙紫陽氏が植樹した瓊花も
なお、御影堂供華園は建物脇にあるお庭ですが、御影堂の正面(立ち入りできません)には、昭和天皇お手植えの瓊花が咲いていました。ちょうど影になるのでこの画像だとほぼ分かりませんが、現地だと存在は確認できます
そしてもう一箇所、唐招提寺の境内の「鑑真和上御廟」の前にも、1本だけ瓊花が植えられています。境内の北東に位置する静かな一角で、雰囲気ありますね
御廟の参道脇は、美しい苔が見られることで知られています。しばらくいいお天気が続いていたので、苔はやや乾き気味。雨上がりに来てみたいですね
こちらが鑑真和上が眠る御廟です。円形の塚になっていて、周りをぐるりと一周できます。「天平の甍」を書いた小説家・井上靖さんの石碑などもあります。このすぐ右手に注目してみると……
手前に植わっているひょろっと高い木が瓊花です。樹上の高い位置に花を咲かせていました。こちらは1982年、唐招提寺を訪問した中国の首相・趙紫陽さんが植樹されたものだとか。いろんな思いが胸をよぎりました
唐招提寺の境内の様子など
境内のツツジも満開直前でした
御影堂供華園の瓊花の隣には、藤棚の藤も見られました。もう間もなく見頃です
シャガの花。お寺さんの雰囲気には抜群に似合うお花ですね
唐招提寺の金堂。ご本尊・盧舎那仏坐像、薬師如来立像、十一面千手観世音菩薩立像と、巨大な乾漆造の三尊が並び、木造の梵天・帝釈天立像に四天王立像が脇を固めます。もちろんすべて国宝。豪華すぎて、頭を垂れるのも忘れて見とれてしまいそうになります
鑑真和上御廟の近く、参道脇に残っていた土塀のなごり。自然と同化していくようです
戒壇を囲む土塀は、表面に漆喰が塗られた端正なもの
唐招提寺の「戒壇」。古くはここに建物があり、僧侶のとなるための受戒が行われてきた、神聖な場所です。当時の姿は想像しづらいですが、今の姿も美しくていいですね
■唐招提寺
HP: http://www.toshodaiji.jp/
住所: 奈良県奈良市五条町13-46
電話: 0742-33-7900
宗派: 律宗(総本山)
本尊: 廬舎那仏(国宝)
創建: 759年
開基: 鑑真
拝観料: 600円(新宝蔵は別途100円)
拝観時間: 8:30 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり(500円)
アクセス: 近鉄橿原線「西ノ京駅」から徒歩10分
■御影堂供華園「瓊花」特別開園
HP: http://www.toshodaiji.jp/about_spring.html
期間: 4月中旬~5月ごろ(※花の状態によって前後します)
場所: 御影堂供華園
※瓊花の花は「日本では唐招提寺と皇居でしか見られない」という説明も聞きますが、東大寺・勧進所、法花寺、日本上陸の地に建つ鑑真記念館(鹿児島県南さつま市)などでも育てられているそうです
■参考にさせていただきました
瓊花とは - 植物図鑑 Weblio辞書
唐招提寺 御影堂供華園─奈良と揚州をつなぐ清楚な瓊花(奈良県奈良市) | 祗是未在
唐招提寺の瓊花(けいか)が満開 2010.5.3 ( 祭りと伝統 ) - ノンさんのテラビスト - Yahoo!ブログ
瓊花(けいか)とその咲いている場所
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