2012-11-11

薬師寺東塔『第2回保存修理現場見学会』へ行ってきました

薬師寺東塔『第2回保存修理現場見学会』へ行ってきました

大規模な改修工事が行われている、薬師寺の国宝「東塔」。その現場を一般公開する『薬師寺東塔保存修理現場見学会』の第2回目に行ってきました。間近で見る古塔は傷みも目立っていましたが、風雨に耐えてきた凄みも感じられました。巨大な相輪が目の高さにあるという、普段は見られないアングルも新鮮で、とにかく楽しかったです!


東塔は完全にバラバラに解体して修理します

奈良の西の京にある古刹『薬師寺』。そこに建つ美しい三重塔「東塔(国宝)」は、薬師寺が平城京に移ってきた奈良時代から現存する、唯一の建築物です。

そんな貴重な塔ですが、傷みが激しくなってきたため、2009年7月から2018年までという長期にわたって、保存修理工事を行なっています。今回の修理は、あの巨大な塔を全てバラバラに解体して、必要な部分の修復を行ってから組み立て直すもの。全ての部材の解体が完了するのは2014年のことになるという大工事となります。

そんな歴史的な工事の現場を一般公開する「薬師寺東塔保存修理現場見学会」は、初回が2012年6月2日・3日の2日間行われ、今回が2回目となります(2012年11月10日・11日)。奈良県の広報誌や「第2回 国宝薬師寺東塔保存修理現場見学会」(第1回目はこちら)といったところで見学希望者を募っていますので、それに当選すればどなたでも参加できます。

滅多に無い貴重な機会なんですが、奈良県民の方にもそんな情報は知らなかった…という方も少なくないでしょう。さらに、参加申し込みは往復ハガキのみですので、ネットで簡単に応募することもできません。面倒な感はあります。

しかし、1日5回×2日間×各回25組(50名)=500組(1,000名)が参加できますが、それをはるかにオーバーして抽選になっているのですから、お手軽に応募させる必要もないのでしょうね。私の周りでも抽選に外れた方も多かったので、かなりの人気ぶりだったようです。


薬師寺東塔修理見学-01

美しい金銅仏・薬師三尊像が祀られる薬師寺の「金堂」。この日は朝から強い雨でしたが、たくさんの観光客の方の姿が見られました。右手に見える覆い屋が、国宝「東塔」の工事現場です。改めて見ると大きいですね!

薬師寺東塔修理見学-02
東塔の覆い屋を裏側から見たところ。手前の黒い部分がつづら折りのスロープになっていて、ここを歩いて上がります

薬師寺東塔修理見学-03
なお、2012年9月から、薬師寺の大講堂裏手の「食堂跡」の発掘調査も行われています。いつもよりも騒々しい感はありますが、発掘調査の現場を間近に見るチャンスでもあります。平日の晴れた日を狙って行ってみるといいかもしれませんね


ヘルメットを被って現場へ。大迫力でした!

薬師寺東塔の保存修理現場見学会は、裏手の東回廊部分に集合し、そこで全員がヘルメットをかぶって入場します。

私はこれまでにも、東塔初層の特別公開などにも参加していますので、間近に見るのは初めてのことではありませんでしたが、やはり迫力がありました。スタッフの方の説明も分かりやすいですし、細部を見ると傷みも目立っていて、何故大掛かりな修理が行われるのかが目に見えて伝わってくるようでした。

改めて思いましたが、こんな巨大な建造物を全て分解して、修復して、また元の姿に戻そうというのですから、とんでもないことですね!例えば、唐招提寺の千手観音像の解体修理でも「あれだけ手の数が多ければ大変だろうな」と思ったりしますが、その比ではありません。すごいことをなさっているんですね!


薬師寺東塔修理見学-04

見学会は東塔の裏手の東回廊部分から始まります。ここで受付を行い、ヘルメットを手渡されます。参加者が見られるように模型などの展示物も用意してあります。スタッフの皆さま、本当にお疲れ様でした!

薬師寺東塔修理見学-05
みんながヘルメットをかぶって、工事現場の中へ入っていきます。参加者は各回ごとに25組(50名)。これを1日5回行います

薬師寺東塔修理見学-06
東塔の周りにはしっかりした足場が組まれています。係の方の分かりやすい説明を聞いたり、パネルの展示を見たり。距離も近くていきなり感動でした!

薬師寺東塔修理見学-07
展示してあったパネル。柱の根元が破損して浮いていたり、礎石自体が沈下していたりしています。また、中心を通る「心柱(しんばしら)」には、足元の内部に虫害か腐ったかして大きな空洞ができてしまっているとか。これが今回の大修理を行うことになった最大の要因なのだそうです

薬師寺東塔修理見学-08
軒先の組物は「三手先」。部材を複雑に組み合わせて、屋根をできるだけ大きく広げるような工夫をしています。こうすることで雨も避けられ、日本建築らしい美しさも増します

薬師寺東塔修理見学-09
遠目では分かりませんが、間近に来ると部材が意外と傷んでいることがはっきりと伝わってきます。あと、垂木(屋根の裏側の円柱型の木材)の間には、全て鳥よけの釘が入っているんですね。今まで気づきませんでした

薬師寺東塔修理見学-10
足元に大きな空洞が見つかった心柱。直径90センチにも及ぶ大きな木で、初層から相輪の上の水煙まで、東塔の中心に独立して立っています。三層の裳階(もこし。軒下につけられる屋根状のもの)部分で別の木を継ぎ足して高さを確保しています

薬師寺東塔修理見学-11
屋根が目前に見える足場にも登らせていただけました(この上での写真撮影は禁止)。鬼瓦などが目の前で、ものすごい迫力でした!

薬師寺東塔修理見学-12
東塔の北側に設けられたスロープをのぼって行きます。東塔の高さは相輪も含めて約34m。高さ25mあたりまで自分の足でのぼります

薬師寺東塔修理見学-13
スロープの途中から、各階の工事の進行状態が見えます

薬師寺東塔修理見学-14
かなり物々しい雰囲気ですね。地上から上げられた部材や東塔から下ろされた部材など、色んなものが見えます。あの巨大な覆い屋の中では、こんな工事が行われていたんですね


瓦を下ろした屋根を見下ろし、相輪は目線の高さ!

相輪とほぼ同じ高さの三層目まで上がると、瓦を下ろした様子が見下ろせます。塔の屋根をてっぺんから眼下にみるなんて経験はなかなかできませんし、塔の周囲に複雑に組まれた足場を見ているだけでも壮観でした。

また、相輪の根本部分、心柱を包む「刹管(さつかん)」というパーツには銘文が刻んであることも初めて知りました。そこには、天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を願い薬師寺を建立したという薬師寺の由来が書かれている、とても珍しいものなのだとか。またそれがよく見えるようにライトで照らされ、双眼鏡も設置してあり、とても見やすくて感動しました!

その他、土居葺の上に「瓦葺 前川佐市郎」という墨書があったり、小さな「点検口」が開いていたりと、今しか見られない貴重なものをたくさん拝見できました。


薬師寺東塔修理見学-15

三層目へ到達。相輪が目の前に見えます!すでに水煙は取り外されていて(近くに水煙の本物が展示してありましたが撮影禁止でした)、瓦も全て下ろされていました。ここでも係の方から興味深いお話を伺えました

薬師寺東塔修理見学-16
足場に囲まれた薬師寺東塔の相輪

薬師寺東塔修理見学-21
三層目はもう全て瓦が下ろされいて、下地となる「土居葺」があらわになっています。当然のことですが、瓦を下ろす作業は上の階層から進められるんですね

薬師寺東塔修理見学-22
相輪の一部にライトが当てられていて、そこがよく見えるように双眼鏡も設置してありました

薬師寺東塔修理見学-23
実は薬師寺東塔の相輪の下部には、銘文が刻まれています。スタッフの方に伺ったところ、「知る限りでは他の塔の相輪にはこのようなものは見当たらないはず」とのこと。珍しいもののようです

薬師寺東塔修理見学-24
反射して見づらいですが、相輪の銘文の写しも展示されていました。解説によると、前半は天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を願い薬師寺を建立したという由来を示し、後半は、中国・唐の西明寺の鐘銘らしきものが刻まれているそうです

薬師寺東塔修理見学-25
土居葺の上に見える、「瓦葺 前川佐市郎」という墨書。過去の修復の際に大工さんが書いたものなんでしょうね

薬師寺東塔修理見学-26
瓦の葺き方の分かりやすい説明。一番下が「土居葺」。そこに葺土を盛って「平瓦」を乗せ、さらに砂漆喰で「丸瓦」を置いていきます

薬師寺東塔修理見学-29
この面には、小さな「点検口」が設けられていました

<薬師寺東塔修理見学-27
ただただかっこいいですね!


今後も開催予定がありますので、ぜひ応募を!

東塔そのものも面白いですが、その他の展示物も興味深かったです。修理の際に収められた「棟札」や、東塔の「断面図」、屋根から下ろされた鬼瓦や平瓦など、どれも見ていて楽しいものでした。

今回の見学会は1日に5回ずつ行われ、所要時間は1時間ほどでした。スタッフの方の説明を聞いて、じっくりと現物や展示品を見て、しっかりと写真撮影をできるだけの時間の余裕もあり、本当に楽しかったですね。同様の見学会はまた開催予定とのことですので、ぜひ参加してみてください!


薬師寺東塔修理見学-18

東塔に収められていた「棟札」。向かって右の大きなものが昭和の修理、左の小さめのものが明治の修理のもの。昭和のものは、「奉修覆東塔」という大きな字とともに、大僧正や文化財保護委員会の方々、信徒惣代さんの名前などが書き記してあります

薬師寺東塔修理見学-19
薬師寺東塔の断面図。中央の心柱が三層目の裳階部分で継がれている様子などが分かります。私は断面図が大好きなので、この画像もスマートフォンのホーム画面に登録したいくらいです(笑)

薬師寺東塔修理見学-20
向かって左手が明治初期、右手が今回の修理の直前のもの。だいぶプロポーションが違って見えますね。明治時代の東塔は、やや欄干が太めで、三層目には縦のつっかい棒(?)のような部材が入れられているのが目立ちます。アーネスト・フェノロサがこの塔を「凍れる音楽」と称したというエピソードが伝わっていますが、彼が見たのはこの明治時代の姿だったのでしょう。面白いですね!

薬師寺東塔修理見学-30
屋根から下ろされた歴代の鬼瓦たちもずらりと並んでいます。古いものは室町時代や江戸時代のものもありました。それぞれ表情が違って面白いですね

薬師寺東塔修理見学-31
平瓦の中には奈良時代のものも!薬師寺がこの土地へ移ってきた当時からずっと使用されているのでしょう

薬師寺東塔修理見学-32
覆い屋の一部が開放されていて、美しい景色が見られるようになっていました!東塔から見る西塔。その向こうには、池越しの薬師寺が見られる撮影スポットの定番「大池(勝間田池)」があります。このアングルからこの景色が見られるなんて、一生に一度でしょうね

薬師寺東塔修理見学-33
ネット越しですが、大きな金堂も見下ろせました

薬師寺東塔修理見学-34
薬師寺の大講堂側。ここは透明な素材が使われていて見やすくなっていました。この広場でコンサートなどが行われるんですから、不思議なものですね



大きな地図で見る


■薬師寺

HP: http://www.nara-yakushiji.com
住所: 奈良県奈良市西ノ京町457
電話: 0742-33-6001
宗派: 法相宗大本山
本尊: 薬師三尊像(国宝)
創建: 680年
開基: 天武天皇
拝観料: 500円(「玄奘三蔵院伽藍」公開時は800円)
拝観時間: 8:30 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり(普通車500円)
アクセス: 近鉄「西ノ京駅」下車すぐ

※見学会などの開催スケジュールは、「文化財保存課・文化財保存事務所/奈良県公式ホームページ」などに掲載されます。まめにチェックしてみてください。


■参考にさせていただきました!

きっすいの奈良人:薬師寺東塔修理現場見学会


■関連する記事






 【薬師寺東塔『第2回保存修理現場見学会』へ行ってきました】へのコメント
山口展德  13-01-01 20:06

薬師寺西塔再建工事に参加した17人の大工の一人ですです、当時西塔をする大工のメンバーは50代40代30代20代バランスを考えて全国から又金堂の時の経験者を数人入れた人達で出来ました
当時奈良県出身は西岡棟梁だけでした
九州、福井 大阪 兵庫 愛知 静岡 神奈川 東京 栃木 岩手 北海道
全国から古建築の技術を継承して地元に根ざした大工を広める事になったので良かったかなと思います
私達は西塔組と言われました。
今は地元で工務店をしています
西塔の再建工事の折に東塔の実測に何度も立ち会ったこともあり懐かしく思いました
又当時鳩が地垂木の間を通り東塔の中に巣を造るので板に5寸釘を刺す工事が一番安いので行いました
私は木組みの中身を掻い潜りながら上層の瓦に似た点検口を開け屋根に出たことも何度も有りました
貴方のHPを見せていただき懐かしく思い出しました
又内部の構造 検査結果 など解りましたら御知らせいただければ有りがたいです
私のHP戸田村再発見http://web.thn.jp/yamanobu/
に西塔工事の内容が有ります
今度 東塔工事の内容は公開されないと思うので参考に成ると思います
宜しく山口より

naka  13-01-05 15:22

>山口さま

西塔再建に関わられた方からコメントをいただけるなんて光栄です!
西岡棟梁のご著書なども拝読したことがありますが、大変なご苦労でしたよね。勝手ながら、代表して御礼を言わせてください。本当にありがとうございました。

あの点検口から出入りなさっていた方が実際にいらっしゃるんですね!当たり前のことなんですが、それだけでちょっと驚きです(笑)

●奈良の薬師寺 西塔再建工事の記録 戸田村再発見
http://web.thn.jp/yamanobu/yakusiji.htm

ホームページも拝見しました。すごいお写真ばかりですね。ぜひ参考にさせていただきます。コメントありがとうございました!





  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ