2011-10-19

『三重塔(国宝)』の初層特別公開@興福寺

『三重塔(国宝)』の初層特別公開@興福寺

世界遺産にも登録されている『興福寺』。2011年11月23日まで開催されている『興福寺国宝特別公開2011(三重塔初層・北円堂内陣)』に合わせて、国宝の三重塔を内部を拝観してきました。


興福寺で三重塔と北円堂が同時公開中

世界遺産・興福寺では、2011年10月8日~11月23日までの間、『興福寺国宝特別公開2011(三重塔初層・北円堂内陣)』という特別開扉が行われています。

毎年、秋には無著・世親菩薩像(国宝)で有名な「北円堂(国宝)」の特別公開が行われますが、今年は同時に「三重塔(国宝)」が公開されました。

私たちは、秋の特別公開の際に何度もお詣りしていて、五重塔の初層が公開された模様は記事にしています。

今年は時間の関係もあり、これまで拝観したことが無かった三重塔(と、この日が年に一度の開扉だった「南円堂(重文)」)だけお詣りしてきました。


興福寺『三重塔』特別公開-14

2011年10月8日~11月23日まで行われる、『興福寺国宝特別公開2011(三重塔初層・北円堂内陣)』のチラシ。上が北円堂に安置されている弥勒如来像、無著・世親菩薩像(全て国宝)、下が三重塔の弁才天坐像、十五童子像です。北円堂は毎年定期的に公開されていますが、三重塔は珍しいですね


小さいながらも優美な姿の美しい塔です

興福寺というと、奈良のランドマークにもなっている「五重塔(国宝)」が有名すぎるため、南円堂前の石段を下ったところにもう一つ美しい塔があることに気付かれない方も多いでしょう。

興福寺の「三重塔(国宝)」は、高さ19.1m、崇徳天皇の中宮皇・嘉門院聖子の発願により、1143年に建立されました。治承4年(1180年)の平重衡の南都焼打によって焼失しましたが、鎌倉時代前期に再建されました。興福寺の諸堂の中では、北円堂と並んで最も古い建物となります。

大きな塔ではありませんが、説明に「鎌倉時代の建物ですが、木割が細く軽やかで優美な線をかもし出し、平安時代の建築様式を伝えます。」とあったように、たおやかで優美な雰囲気が感じられます。


興福寺『三重塔』特別公開-01

興福寺・三重塔(国宝)は、南円堂前の石段の途中にあります。境内の一段低い位置にあるため、普段はあまり目立ちませんが、とても美しい塔です

興福寺『三重塔』特別公開-02
普段は静かな興福寺・三重塔も、初層の特別公開が行われている間は、テントが張られてやや風情のない姿になってしまいます。この日(10月17日)は年に一度の南円堂の特別開扉の日でしたが、月曜日の昼下がりだったため、それほど混雑はしていませんでした。拝観料は大人300円・中高生200円・小学生100円です

興福寺『三重塔』特別公開-03
興福寺・三重塔の説明。初層内部は4つの柱をエックス型に板でつなぐという、他に類例を見ない独特のものなのだとか。塔の中央が三角形に区切られていて、そこに弁才天像が祀られている形になります

興福寺『三重塔』特別公開-04
三重塔をアングルを変えて。ここに人が入っている姿を見ること自体が初めてです。毎年7月7日に法要が行われますが、こうして初層内部を拝観できる機会は滅多にないでしょう


宇賀神を戴く八臂「弁才天坐像」が

興福寺の三重塔は、毎年7月7日の法要に合わせて、年1回だけの特別開扉が行われています。しかし、私はその日に参拝したことがなかったため、敷地内へ立ち入るのは初めての経験でした。

三重塔の初層は4面全て見られるようになっています。中央の4つの柱をエックス型に板でつなぎ、須弥壇の部分が三角形になるという珍しいものでした。この形はこの塔のみなのだそうです。東に薬師、南に釈迦、西に阿弥陀、北に弥勒を各千体、外陣の柱や扉にも宝相華などが描かれているそうですが、色彩が薄れてしまって、残念ながらはっきりとは分かりませんでした。天井は、格式の高い折上格天井です。

仏像が祀られているのは、東面のみ。ここのご本尊となる像高38.5cm、江戸時代初期の作で旧世尊院伝来の「弁才天坐像」が、その前にはそれぞれ丸太のような粗い台座に乗った眷属の十五童子像が祀られています。八臂(腕が8本)で、それぞれに宝珠・弓・三又戟などを持ち、頭上には鳥居と、蛇の体を持つ宇賀神(うがじん)を戴いています。

興福寺にはあまり弁財天像のイメージはありませんが、弘法大師が天川から勧請した、特に「窪弁才天」と呼ばれる方なのだそうです。



 明治時代になり廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の嵐がおさまる頃、三重塔に新たに御仏像が祀られます。興福寺旧塔頭(たっちゅう)・世尊院の弁才天とその諸尊です。弁才天は元のお名前をサラスヴァティー(Sarasvati)と申され河の女神でした。やがて学問・智慧・音楽を司どる女神となり、中国で美音天・妙音天などと訳されました。日本では吉祥天と混同されたため、福徳・財宝の神とされ室町時代中期頃より七福神の一に数えられるようになりました。ですから、俗に弁財天と書かれます。お姿は、八臂座像で15童子を眷属とされています。

 興福寺南円堂の建立の時は、弘法大師空海が無事の完成を祈り天川弁才天に参籠されたと伝えられています。そのとき宇賀弁才天を感得し、ためにその神を興福寺に窪弁才天として勧請しました。またこの時、南都に七弁才天をも勧請し、その際に供物に餅飯を整えて7ヶ日の布施を施したことから、餅飯殿町の名がおこったということです。冬嗣と親交のあった大師のこと、十分創造できる言い伝えではあります。


興福寺『三重塔』特別公開-05

三重塔初層の内部は4面全てから見られました。四天柱を板でエックス状に結ぶため、須弥壇は三角形になっていて、東面に弁才天坐像と十五童子像が祀られています(他の面は誰もいらっしゃいません)。東に薬師、南に釈迦、西に阿弥陀、北に弥勒を各千体描き、さらに外陣の柱や扉にも宝相華などが描かれていますが、薄れていてはっきりとは分かりませんでした

興福寺『三重塔』特別公開-08
三重塔の回廊部分には、おそらく特別公開期間中だけだと思いますが、しっかりと板が被せられていて、貴重な国宝建築物にダメージが少なくなるようになっています。拝観の際には、塔の内部は撮影禁止であることと合わせて、「建物にカバンなどが当たらないようにお気をつけください」と注意がありました


組物や斗帳なども撮影してきました

三重塔の内部はもちろん撮影禁止ですが、敷地内から組物や金具などを間近に撮影できるいいチャンスでしたので、何枚か撮影してきました。


興福寺『三重塔』特別公開-06

普段はまず見られない角度から、三重塔を眺められました。過剰な装飾のない、とてもたおやかな印象を受けます。「鎌倉時代の建物ですが、木割が細く軽やかで優美な線をかもし出し、平安時代の建築様式を伝えます。」と説明にありました

興福寺『三重塔』特別公開-07

興福寺『三重塔』特別公開-09

興福寺『三重塔』特別公開-10

興福寺『三重塔』特別公開-11
三重塔の斗帳(とちょう)。興福寺は鹿2頭が向かい合っているものをよく見ますが、こちらは鹿1頭です。美しいですね!


宝蔵院胤栄の守り本尊『摩利支天石』

なお、興福寺・三重塔の前には、不思議な形の『摩利支天石』があります。

これは、安土桃山時代の興福寺の僧兵であり、十文字槍を使う「宝蔵院流槍術」の祖である「宝蔵院胤栄」(ほうぞういんいんえい。Wikipedia)」の守り本尊だったもの。

私は宮本武蔵を描いた漫画「バガボンド」のファンで、そのライバルとして登場する胤栄も大好きです。柳生の里の武家屋敷
旧柳生藩家老屋敷」を見学した際に、興福寺境内にこんな岩があることを聞いていたので、改めて見られて感激しました。

宝蔵院胤栄は、猿沢の池に映る三日月を突いて槍の修行をした方で、宝蔵院の庭にあったこの岩に摩利支天(まりしてん。陽炎を神格化した女神)を祀っていました。その後、高畑町の個人宅へ移動し、1999年、現在の場所に移設されたのだそうです。説明も少なく分かりづらいですが、ぜひ宮本武蔵とバガボンドファンの方はチェックしておいてください!


興福寺『三重塔』特別公開-12

三重塔の前に、「宝蔵院胤栄 守り本尊 摩利支天石(奈良宝蔵院流槍術保存会)」とある岩が置かれています。これは十文字槍を使う「宝蔵院流槍術」の祖である胤栄が、この岩に摩利支天を祀っていたものだとか。現在の奈良国立博物館の位置にありましたが、個人宅へ移設され、1999年に現在の場所へ移されたそうです

興福寺『三重塔』特別公開-13
この角度から見ると、のんびりとくつろいだ人の顔に見えますね(笑)。岩があるだけで、ほとんど説明もありませんが、お見逃しなく!



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■興福寺

HP: http://www.kohfukuji.com/
住所: 奈良県奈良市登大路町48
電話: 0742-22-7755
宗派: 法相宗大本山
本尊: 釈迦如来(国宝)
創建: 669年
開基: 藤原不比等
拝観料: 境内-無料、国宝館-600円、東金堂-300円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良線-近鉄奈良駅 徒歩7分

※西国三十三所の第九番札所(南円堂)
※南都七大寺の一つ

※実際にお参りしたのは「2011年10月17日」でした。


■参考にさせていただきました!

興福寺 - Wikipedia
宝蔵院胤栄 摩利支天石
摩利支天石 (奈良旅館観光ガイド)


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