『長谷寺の名宝と十一面観音の信仰』@あべのハルカス美術館
大阪阿倍野区にある「あべのハルカス美術館」で開催中の『長谷寺の名宝と十一面観音の信仰』を拝見しました。普段は遠くからしか拝見できない、御本尊の両脇侍「難陀竜王立像」と「雨宝童子立像」が間近で、後ろ姿まで見られます!チラシの写真で見るよりもはるかに美しく力強くて感動的でした。また、長谷寺式の十一面観音像がずらりと並んでいたり、国宝の寺宝が続々と登場したりと見どころいっぱいでした!
仏像から工芸品、図像まで。見応えあります
大阪市阿倍野区の超高層ビル「あべのハルカス」の16階に位置する『あべのハルカス美術館』で開催中の「長谷寺の名宝と十一面観音の信仰」が開催中です(2016年2月6日~3月27日)。
奈良県桜井市の古刹「長谷寺」は、白鳳時代の686年、道明上人が天武天皇のために「銅板法華説相図」(国宝)を祀ったことから始まりました。724年に徳道上人が十一面観音像を造立して以来、観音の聖地として発展し、源氏物語や枕草子などにその名前が登場し、時の権力者・藤原道長らが参詣しています。
長谷寺というと、像高10mを超える長谷寺式と呼ばれる形式の「十一面観音立像」(重文)や、京都・清水寺のような高台に作られた懸造(舞台造)の本堂、牡丹など四季折々の花の御寺というイメージがありますが、あまり寺宝をじっくり拝見する機会はありません。今回の企画展では仏像から工芸品、図像、経典など、さまざまなジャンルが展示されていて迫力ありました!
あべのハルカス美術館「長谷寺の名宝と十一面観音の信仰」のチラシ表面。企画展の主役ともいえるのが、寺外では初公開となる御本尊の両脇侍です。向かって右手が「難陀竜王立像」(重文、鎌倉時代)、左手が「雨宝童子立像」(重文、室町時代)。いずれも長谷寺本堂で拝見できますが、かなり遠目からしか見られないため、間近でじっくり拝見できるのは貴重です
チラシ裏面。長谷寺の創建から伝わる「銅板法華説相図」(国宝)、美しい蒔絵がほどこされた「丸文散蒔絵経箱」(国宝)なども。また、右手に錫杖、左手に水瓶を持った「長谷寺式」十一面観音像も集められていて、会場では7躯がずらりと並ぶ様子は壮観でした!
期間限定「十一面観音カプチーノセット」も
あべのハルカス16階にある「あべのハルカス美術館」のフロアは、大きな垂れ幕と長谷寺に関係するちょっとした展示があります
正面には「修二会」法要の締めくくりとして毎年2月14日に催される「だだおし」(紹介記事)の赤鬼と、巨大な松明の展示も。鬼たちが暴れまわる迫力のある法要ですので、ぜひ長谷寺でライブで見てみてください!
手前のベンチで休憩していた方がいたので、かなり分かりづらいですが、前後二重になった巨大なパネルがあり、覗き込むと御本尊・十一面観音立像のおみ足に触れているシーンが再現されています
17階(美術館の1フロア上)の「CAFFE CIAO PRESSO」さんでは、長谷寺展の期間中だけのスペシャルメニュー「十一面観音カプチーノセット」(@680円)も提供されています!ラテアートで観音さまのお顔と長谷寺の文字が描かれています。飲む前に手を合わせたくなりますね(笑)
間近で拝見すると迫力が違います!
以下、図録より気になった部分を簡単にご紹介してみます。掲載されていた「難陀竜王立像」は鎌倉時代の作。この画像では頭上の龍がところどころ破損していますが、現在は見事に修復されています。間近で拝見すると、美しい文様がはっきりと見てとれますし、今にも動き出しそうなリアリティがあります。背中側まで拝見できるなんて、もう二度とないかもしれません
室町時代の「雨宝童子立像」。こちらも衣服の文様がくっきり。お堂にいらっしゃる時には気づかなかった美しさです。長谷寺のご尊像は何度も火災にあっており、現在のお像は1538年に再興されましたが、それとほぼ同時期に造像されたものだとか。なお図録の解説によると、雨宝童子は天照大神、難陀竜王は春日明神と同体とされるとか。中世の長谷寺は興福寺の末寺だったため、春日曼荼羅なども伝わっています
京都・乙訓寺の「十一面観音立像」(重文)。早良親王が幽閉されたお寺として知られています。鎌倉時代末期に南都仏師によって造像され、奈良・秋篠寺から移されたものだとか。静かに立っていながらも衣紋の立体感や力強さがにじみ出ているよう。よく考えてみると、鎌倉時代の十一面観音像はあまり拝見した記憶がないので、とても貴重な体験でした
大和高田市・長谷本寺の「十一面観音立像」。平安時代の造像で、ゆったりと穏やかな表情です。長谷寺の御本尊と同じ材から作られたと伝わっているため、この像を祀るお寺も長谷本寺と名乗ることになったのだとか。会場ではさまざまな長谷寺式十一面観音像が見られますので迫力ありますよ
長谷寺の縁起を記した絵巻物「長谷寺縁起」。会場には3パターンほど展示されていました
長谷寺の塔頭寺院・能満院に伝わる「長谷寺式十一面観音像(三十三身)」(重文)。鎌倉時代の作。十一面観音を中心に描き、その周囲に三十三の変化観音を描いています。こうした図像や縁起絵巻、曼荼羅などの展示も充実していました
江戸時代に描かれた「長谷寺牡丹品種画帖」。花の御寺として名高い長谷寺では、現在150種・7000株の牡丹が植えられています。この画帖では、牡丹の花の絵と品種名を博物学的な視点から描いたもの。現在では存在しない品種もあるとか。お寺にはこんなものも伝わっているんですね!
二代目歌川広重の錦絵「諸国名所百景 大和長谷寺」。あべのハルカス美術館の企画展では、最後にこうした名所図会などが展示されるのも楽しみのひとつです。各時代によってさまざまなパターンがありましたが、これは登廊の途中から切り取り、満開の桜を配しています。何種類かを見比べられるのも楽しいところです
■あべのハルカス美術館
HP: http://www.aham.jp/
住所: 大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話: 06-4399-9050
休館日: 月曜日(祝日の場合は開館)
開館時間: 10:00 - 20:00(土日祝は 18:00まで)
■長谷寺の名宝と十一面観音の信仰
HP: http://www.aham.jp/exhibition/future/hasedera/
開催期間: 2016年 2月6日(土) ~ 3月27日(日)
休館日: 月曜
料金: 一般 1,300円、大学・高校生 900円、中学・小学生 500円
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