
鬼が暴れ火の粉が飛ぶ!「だだおし(追儺会)」@長谷寺
桜井市の古刹『長谷寺』で、毎年2月14日に催される修二会結願の大法要「だだおし(追儺会)」を拝見してきました。国宝のお堂の周りを巨大な大松明を従えた鬼たちが火の粉を飛ばしながら暴れ回り、熱さに思わず後ずさるほどの大迫力でした!これできっと、今年は無病息災で過ごせると思います!
火祭り「だだおし」は修二会の結願法要です
2月8日から7日間、長谷寺では身も心も清らかになって新年を迎えるための法要「修二会(しゅにえ)」が催されます。その締めくくりの2月14日に行われるのが「だだおし」の儀式です(正式には「追儺会(ついなえ)」と言います)。以前は夕方から行われていましたが、近年では文化財保護や参拝者の利便性を考慮して、毎年「15時ごろ」から行われています。
ちなみに、東大寺二月堂で行われる「お水取り」も、同じ修二会の法要です。
だだおしの語源には諸説あり、「だだ」は閻魔大王が持つ生前の行為を審判する杖とする説や、疫病神を駆逐する「儺押し(だおし)」から来たとする説、だだだ…と鬼を追い出すところから来た説などがあるそうです。
長谷寺を開山し、西国三十三所を設立した「徳道上人」が、718年に病を得て、一時冥土へ行った際に、閻魔大王から「まだ死んではならない。生き返って西国三十三カ所観音霊場を開基せよ」とのお告げがありました。その際にいただいた「閻浮壇金宝印(えんぶだごんほういん)」を諸仏や参拝者の額にあてて、悪霊退散・無病息災の加持祈祷を行ったことから始まったと伝わっています。
だだおしの法要は、2月14日の15時から行われます(バレンタインデーとか関係ありません)。この日は「仏像ワンダーランド」の管理人ナルサワさんと待ち合わせて、約1時間前から本堂の真正面に陣取りました。
参道にもだだおしのポスターが貼ってあったり、売店にはカラフルな「厄除鬼」が売っていたりと、とても賑やか。この日は暖かだったため、長い登廊の途中で寒牡丹などを眺めながら歩いていると、まるで春が来たかのようでした。
長谷寺の参道に貼ってあるポスター。2月3日の「長谷寺節分祭」と、2月14日の修二会結願大法要「長谷寺だだおし」は、どちらも鬼が主役です。力強いですね!
売店には「厄除鬼」が販売されていました(大1,000円、小800円)。土鈴になっていて振ると涼やかな鈴の音が響きます。鬼がモチーフですが、凛々しくも可愛らしいですね
長谷寺の仁王門をくぐると、すぐに399段の石段「登廊(のぼりろう)」が始まります。ここに立つと長谷寺へお参りに来た感が一気に沸き上がってきますね
14時半ごろの長谷寺・礼堂の様子。法要は15時からですが、すでにたくさんの方が集まってきていました。ここは京都・清水寺のような崖造り(舞台造り)の建築ですが、こんなに人が乗っても大丈夫なんだろうか…と心配になるほどの混雑ぶりになりました
だだおしの特別祈祷札「牛玉札(ごおうふだ)」。ナルサワさんがいただいたものです。これは大札で1体3,000円でいただけます(小札は1,000円)。これをいただいた方は、礼堂(国宝)に上がることができて、そこから法要に参列できます
だだおし法要中の回廊の様子。礼堂に上がっている方も、本来は堂内を撮影すべきではありませんが、皆さんカメラを向けていました。鬼が暴れ回る時間帯になると、少し高い礼堂側からの方が見やすいですから、出来れば牛玉札をいただいておくべきでしょう
散華がまかれたり、走りの行があったり
15時ころになると、境内に鐘の音が鳴り響いて、僧侶の方々が本堂へ向かいます。しばらく待ち時間があって、本堂前で姿が見えるのは20分後くらいです。
法要の工程は、まずは悔過導師(けかどうし)たちが、本尊・十一面観世音菩薩像の御前で、人々の罪科を懺悔する法要(悔過法要)の後、唐櫃に収められた「如意宝珠(にょいほうじゅ)」などの封印が解かれ、本法要が執り行われます。その後、御本尊様、左上段の天照皇大神宮、右上段の春日大明神、大導師以下の僧侶たち、参拝者の順で、額と牛玉札(ごおうふだ)に宝印の加持が行われます。
本堂側では散華がまかれたり、ご本尊の周りを走って回る「走りの行」などが行われたりしていますが、残念ながら礼堂前に陣取っていると、これらはほとんど見えません。ちょっとした取り残された感があります(笑)
悔過導師(けかどうし)たちの方々が入堂なさいます。こうして間近で見られるのは嬉しいですね
導師の方たちも。すぐに履物をしまう方もいらっしゃったりします
如意宝珠(にょいほうじゅ)や閻浮壇金宝印(えんぶだごんほういん)など、七種の秘宝が入った唐櫃が目の前を通ります。この後には大導師さまたちが続きます
ひと通りの法要が終わって、いよいよ鬼たちが暴れ回る時間帯がやってきます。僧侶の方が何度も「大松明の火がすぐ近くをを通りますので、少しずつ後ろへ下がってください」とお願いをしていらっしゃいました。この時すでに16時45分。立ちっぱなしですでにだいぶ疲れています…
暴れまわる鬼たち!大松明の熱が間近に!
そして、法要のクライマックスとして、本堂内外を巨大な大松明を従えた鬼たちが、舞台造りの本堂(国宝)を火の粉を飛ばして暴れ回ります。
この宝印授与の儀式に前後して、太鼓・法螺貝が堂内に激しく鳴り響き、二尺余もある大鬼面の赤・青・緑色の三色の鬼が現れ、金棒を振り翳し大音勢で堂内を暴れ廻る。すると僧侶達が「すわえ」(※注 木偏に若)と四手に挟んだ牛玉札の威力を持って堂外へ追い出し、追われた鬼は男衆と共に大松明を担ぎ、本堂の周りを練り歩く。大松明は、長さ一丈五尺余り(約4.5メートル)重さ三十貫目超(約120キロ)という巨大なもの。本堂の周囲に火の粉をチラシ東の広場に出ると、暴れ回った鬼達は何処ともなく退散する。
案内書きより
青・緑・赤の三色の鬼がそれぞれ2~3周するのですが、まっすぐ歩いたりせず、右へ左へと暴れながら進むため、後ろに続く大松明が大きく左右に振られます。炎がすぐ頭上に迫ってきて、その熱で思わず後ずさってしまうほどの大迫力でした!
火の粉が舞いますので、洋服や持ち物が焦げることもあり得ます。穴が開いても後悔しない服装で挑みましょう。また、回廊側はカメラマンさんたちも必死ですし、鬼の動きによって大きく前後へ動きます。小さなお子さんやお年寄りは危険ですので、牛玉札をいただいて礼堂の上から見た方がいいでしょう。
この日、鬼が暴れていたのは17時~17時30分くらいまででした。これを間近で見るために3時間以上も立ちっぱなしでいるのも大変でした。次回以降は礼堂の上から見るようにしたいと思います(笑)
緑の鬼さんと、それを押し留めるように後に続く男衆。この至近距離です!
約120キロもある巨大な大松明が目の前を通り過ぎます!ものすごい熱気に、思わず後ずさるほどでした
青鬼さんが登場!後ろの方の必死の形相が勢いを物語っていますね。鬼役の方は、事前にかなりの量のお酒を飲んでいるとかいないとか。暴れる準備万端でこの法要に挑んでいらしゃるようです!
後ろの僧侶の方が、落ちた火の粉に柄杓で水をかけて回っています。東大寺二月堂のお水取りも同様ですが、国宝の建築物でこれだけの大きな火が灯されるんですから、ちょっと信じられないくらいです
この炎が大きく左右へ揺れるのが怖いんですよ。リアルな熱さです。担ぎ手の方は本当に大変です!
最後に現れる赤鬼さん。赤鬼の火が一番大きいのだそうです。私たちは押し合いに疲れて、すでに少しずつ後ろへ下がり始めていました
鬼が去った後は、大松明は納経所の前で消火されます。この松明の燃え残りの炭は、家内安全・無病息災のお守りになるのだとか。皆さん、争うように拾っていました
YouTubeに「長谷寺のだだおし」というタイトルで動画が上がっていました。迫力が伝わってきますので、ぜひご覧ください
■長谷寺
HP: http://www.hasedera.or.jp/
住所: 奈良県桜井市初瀬731-1
電話: 0744-47-7001
宗派: 真言宗豊山派総本山
本尊: 十一面観音(重要文化財)
創建: 686年
開基: 道明上人
拝観料: 500円(特別寺宝展は別途100円)
拝観時間: 8:30 - 17:00(10月~3月は 9:00-16:30)
駐車場: 有料駐車場あり
アクセス: 近鉄大阪線「長谷寺駅」下車、徒歩15分
※長谷寺のだだおし法要は、毎年2月14日に行われます(15時ごろから)
■参考にさせていただきました!
長谷寺 - Wikipedia
長谷寺だだ押し
長谷寺 だだおし|春日野奈良観光
■関連する記事