興福寺『中金堂再建現場』特別公開を拝見してきました
興福寺の本堂にあたる重要な建物「中金堂(ちゅうこんどう)」。これまで7度も焼失してきましたが、2018年の落慶を目指して再建中です。そんな工事現場が一般公開される「興福寺 特別公開2015 中金堂再建現場」へ行ってきました(2015年4月6日~4月19日)。屋根の高さから間近で建物を拝見でき、五重塔や東金堂も見晴らせました!貴重な機会ですのでぜひ!
7度も焼失してきた「中金堂」を再建中
奈良市登大路町の世界遺産寺院『興福寺』。有名な「阿修羅像」などの貴重な仏像、奈良のシンボルでもある「五重塔」(国宝)など、数多くの文化財が伝わる古刹です。
しかし、その中心となるもっとも重要なお堂「中金堂(ちゅうこんどう)」は失われており、2018年(平成30年)の落慶を目指して、2010年から再建工事が行われています。
(詳しくは「中金堂再建勧進のお願い」のページをご覧ください)
興福寺の中金堂は、藤原不比等が中心となって714年に完成しました。丈六の釈迦如来像、菩薩像4躰(十一面観音二躰、薬王・薬上菩薩)、四天王像、2組の弥勒浄土像が祀られ、藤原氏の氏寺らしい、とても華やかなものだったようです。
しかし、1046年に近隣の火災が延焼し、焼失してしまいました。それ以降、6回も再建されてきましたが、すべて焼失。江戸時代に仮再建されたものは、老朽化のため2000年に解体されたままになっていました。
新しい中金堂は、2018年に完成予定ですが、この春、「興福寺 特別公開2015 中金堂再建現場」と銘打って、工事現場の一般公開が実施されています(2015年4月6日~4月19日)。
工事用の足場を登って、屋根瓦を目線レベルで見学できるのですから、これは貴重なチャンスですね!
興福寺の「特別公開2015 中金堂再建現場」のポスター。拝観料は「大人1,500円、中高生1,000円、小学生500円」とややお高めですが、中金堂再建現場はもちろん、国宝館と東金堂も入場できます。国宝館・東金堂はその日に拝観できなくても、今回の入場券を提示すれば2015年末まで入館可能です
この覆屋の中で、興福寺中金堂の再建工事が続けられています。今回の特別公開では、屋根瓦の高さまで上がれます!工事用の足場が組まれている今だけしか観られない景色でしょう
実物大の模型、VR映像、槍鉋の実演も!
中金堂の東側から入場すると、まずは手荷物預かり所(無料)などがあり、その先に中金堂に関する資料の展示コーナーがあります。この日は雨模様で、午後遅い時間帯だったため、入場者もまばらでゆったりと見られました
実物大の「組物」の模型。巨大なパーツを組み合わせて軒を支える部材です。このコーナーでは、中金堂再建の模様を解説したパネル、屋根に乗せられる「鴟尾(しび)」の2分の1サイズの模型なども展示されていて、スケールの大きさが実感できるようになっています
槍鉋(やりがんな)の実演スペース。槍鉋は、社寺の建物を建てる宮大工さんが使用する古式の大工道具で、時間帯によっては実際に使っている様子を見せていただけるとか。この日はもう終了していましたが、削り屑を持って帰れるようになっていました
VRゴーグルをつけて興福寺再建の様子を体感できるコーナーも。約3分間の映像中、ゴーグルをつけながら右を向くと、映像も右へ視点移動するなど、不思議な感覚が味わえます。映像自体は派手なものではありませんが、リアルで驚きました!
興福寺中金堂のリアルな模型。実物の20分の1サイズで、一部は瓦や壁を取り払い、内部が見えるようになっています。本物は、間口36.6m、奥行23.0m、高さ19.8m。柱などは鮮やかな朱色に塗られます。単層の建物ですが、2階建てに見えるような裳階(もこし)という屋根がつけられ、その下が回廊になっています。古い寺院建築ではもっとも格式の高いスタイルです
巨大な屋根に連続する瓦!美しいです
いよいよ工事現場へ立ち入ります。いきなり傾斜30°の急坂を登りますので、ハイヒールなどでも拝観は不可。レンタルシューズ(有料)があります。なお、工事現場の1階部分は撮影禁止ですが、それ以外は撮影できます
足場の3階、瓦屋根を目線レベルで。もっとも上層の屋根ですから、この高さで拝見できるのは、足場が組まれている今だけです
軒の反りが美しいですね!軒丸瓦・軒平瓦は、発掘調査で出土した創建当初の文様を復元しているとか。軒丸瓦は「線鋸歯文縁複弁蓮華文」、軒平瓦は「均整唐草文」で下に鋸歯文を入れているそうです
頭上にはクレーンが取り付けられていました。クレーンゲームのように現場内を移動するのでしょう。個人的な趣味嗜好ですが、古式にのっとった寺院建築と、現代のソリッドな鉄骨などが組み合わさった風景が大好きです!伝統と現代技術のアンバランスさがいいんですよね(笑)
延々と続く屋根瓦。吸い込まれそうですね。真ん中には、作業用の板が遺されていました
この美しい屋根の上、白い幕で覆われているのが「鴟尾(しび)」です。先にVRゴーグルをつけて観た映像に、この鴟尾を取り付けた様子が映されていました
鴟尾の説明。魔除けや防火の願いを込めて大棟の両端に取り付けられます。高さ2.06m、重さは1.1t。全体に金箔が施され、西の鴟尾には「再建で天平の風が吹くだろう」という意味の銘文が刻まれているとか。「金堂再建 天平風● 鴟尾放光 普照一切 願此土安 天人充満 種種荘厳 衆中遊楽 諸法勝義」(●部分は、さんずい+弓+爾)
絶景!興福寺の伽藍を見晴らせます
興福寺中金堂の高さは19.8m。その屋根レベルまで登れるのですから、周りの景色もよく見えます。2箇所ほど「撮影ポイント」という踊り場のようなスペースが設けられていて、外の景色を撮影できるようになっていました!
中金堂再建現場から観た、興福寺五重塔と東金堂。この高さから見下ろせることなんて、もう二度とないかもしれませんね。かなり雨脚が強かったのですが、それなりに風情がありました
ちなみに、同じ日に地上レベルから撮った、興福寺五重塔と東金堂。当然のことですが、かなり印象が違ってきますね
興福寺・五重塔(国宝)
興福寺・東金堂(国宝)
雨に煙った若草山
別の位置からは、興福寺・南円堂(重文)もこんな角度から観られました
興福寺・北円堂(国宝)。興福寺の伽藍が眼下に眺められるなんて、一生の記念になりました!
裳階の高さから三手先の組物もはっきり
足場の2階部分へ降りたところ。大屋根の下側の「裳階(もこし)」と呼ばれる屋根の高さです。「整理整頓」の文字が、まだ再建途中の現場であることをリアルに伝えています
裳階の軒の反り。ここはまだ瓦が乗せられておらず、軒下の部分に並べられていました
屋根の組物もはっきりと見えます。5m弱の深い軒を支えるため、木のパーツを3段階に組んで支える「三手先組物」という形です。軒をより広く出すことで、下に回廊のようなスペースが設けられたり、雨風も避けられ建物が長持ちするようになります。瓦が乗った重い屋根ですから、大げさなほどしっかりと組まれています
足場はこのくらいの広さです。今だけしかできないことですので、ぜひ体験してみてください!
中金堂には講堂の仏さまが遷られます
再建中の中金堂ですが、仏さまがお入りになる予定の1階部分は撮影禁止でした。等身大の仏さまのイラストが描かれたタペストリが、ちゃんと三尊像形式でかけられていました。
簡単にスタッフの方とお話させていただきましたが、中金堂が完成した際には、すぐ北側の「講堂」(以前は「仮金堂」と呼ばれていたことも)に安置されている、三尊がこちらに遷られることは間違いないようです。
●釈迦如来坐像 像高362.0cm 江戸時代 木造
●薬王菩薩立像 像高362.0cm 1202年 木造(重要文化財)
●薬上菩薩立像 像高360.0cm 1202年 木造(重要文化財)
2009年に開催された『お堂でみる阿修羅』(紹介記事)の際に、堂内で拝見しましたが、ゆったりとした堂々たるお姿でした。他にどの仏さまがいらっしゃるかはまだ正式に決まっていないようですが、真新しい大きな本堂でまたお会いできる日を楽しみに待ちたいと思います!
興福寺にある境内図。真ん中に位置するのが再建中の「中金堂」で、そのすぐ北側に「講堂」があります。ここに「釈迦如来座像」がおわします。中金堂落慶の暁には、ここに遷られてくるのでしょう
中金堂の再建のためには、多大な費用がかかります。「中金堂再建勧進所」では、「中金堂」「令興福力」などの御朱印がいただけます。また、瓦や木材の御浄財も受け付けられています(丸瓦平瓦など1,000円より)。ぜひご協力ください!
回廊の基壇上を歩く鹿たち。何年か後には、ここに立派な回廊が再建される予定ですので、こんな風景も見られなくなりますね
■興福寺 特別公開2015 中金堂再建現場
HP: http://www.kohfukuji.com/news/detail.cgi?news_seq=00000125
日程: 2015年4月6日(月) - 4月19日(日)
時間: 9:00 - 17:00
拝観料: 大人1,500円、中高生1,000円、小学生500円
※拝観料に「中金堂再建現場・国宝館・東金堂」が含まれます
■興福寺
HP: http://www.kohfukuji.com/
住所: 奈良県奈良市登大路町48
電話: 0742-22-7755
宗派: 法相宗大本山
本尊: 釈迦如来
創建: 669年
開基: 藤原不比等
拝観料: 境内-無料、国宝館-600円、東金堂-300円
拝観時間: 9:00 - 17:00
駐車場: 近隣に有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩7分ほど
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