2015-04-09

式年造替『国宝御本殿特別公開と御仮殿特別参拝』@春日大社

式年造替『国宝御本殿特別公開と御仮殿特別参拝』@春日大社

20年に一度の式年造替が進む「春日大社」で、いよいよ『国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝』が始まりました(2015年5月31日まで)。通常は建物の姿すら観られない御本殿が間近で拝見でき、写真では気付かなかった色んな驚きがありました!同時に、御仮殿・後殿・磐座なども公開されていますので、ぜひ期間中にご参拝ください!


春日大社「第六十次 式年造替」の特別公開

20年に一度の、大規模な社殿の新調・修復事業「第六十次 式年造替(しきねんぞうたい)」が進められている『春日大社』。この期間中には、普段は立ち入れないような場所も拝観できる、さまざまな特別参拝の企画が行われています。

その中で、私自身がもっとも待ち望んでいた『国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝』が始まりました(2015年4月1日~5月31日)。

春日大社の御本殿は、普段は神職や皇族の方以外は立ち入ることが許されない、春日大社の中でも特別な場所です。

式年造替にあたり、御本殿の修繕作業が行われますが、お祀りしている4柱の神さまは、その期間中のみ「御仮殿」へ遷られています。

(参考記事「東京新聞:春日大社で神様のお引っ越し 20年ぶり「仮殿遷座祭」」)。

神さまがお戻りになられる「本殿遷座祭」は、2016年11月6日に執り行われます。その期間中の今、神さまがお留守になった間だけお住いを拝見できる、ということですね。

さらに、御本殿とともに、こんな場所にも参拝させていただけます。

●「御仮殿(おかりでん)」特別参拝
●「後殿(うしろどの)」特別参拝(140年ぶり)
●御本殿「磐座(いわくら)」初公開
●禁足地「御蓋山浮雲峰遥拝所(みかさやま うきぐものみね ようはいじょ)」特別参拝(詳しくはこちら

これらはすべて、今だけしか拝見できませんから、とても貴重な体験になることは間違いないでしょう。


国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-01

20年に一度の「式年造替」が進む『春日大社』。さまざまな奉祝行事が執り行われ、普段よりもさらに賑やかになっています。神護景雲二年(768年)の創建以来、千二百年にわたり御殿の建て替えと御神宝の新調を続けているんですから、すごいことですよね!

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-03
「国宝 御本殿 特別公開」のポスター。普段は近づくことすらできないこの御本殿を、間近に拝見できます!「二十年に一度、いまこのときかぎり。」というキャッチコピーのとおり、次の式年造替が行われる二十年後までこんな機会はないでしょう

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-05
この日は普段よりも参拝客が多く、春日の神鹿も驚いているかのようです

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-06
南門の前の様子。門前の桜が見事に咲き誇っていました

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-07
南門の内側、幣殿の前から見たところ。桜のシーズン真っ盛りの奈良は、海外からの観光客も多く、午後遅めの時間でしたが参拝客でいっぱいでした!


「式年遷宮」と「式年造替」の違いとは?

春日大社の式年造替は、20年に一度、社殿や御神宝を新しく作り変え、常に清浄な状態を保ち、ご神威を増していただくために行われます。

これと同様の事業として、2013年に伊勢神宮で行われた「式年遷宮(しきねんせんぐう)」があります。こちらは、20年ごとに新たな社殿を建て、神さまに完全にお遷りいただくもの。神さまが移動なさるので「遷宮(せんぐう)」となります。

20年ごとに完全に社殿を新しくするような神社は、現在ではもう伊勢神宮くらいしか遺されていません。

(※ちなみに、出雲大社の遷宮は、60~70年ごとに不定期に行われるため「式年遷宮」とは呼ばれません)


一方、春日大社では、建物をもとの姿のように美しく造り替えます。作業中は別の場所(御仮殿)へお遷りいただきますが、また同じ建物にお戻りいただくため「造替(ぞうたい)」と呼ばれます。

現在の御本殿は、幕末に造替されたもの。平安時代からの建築様式を忠実に遺しており、それを修復しながら受け継いでいるため国宝に指定されています。伊勢神宮の御本殿は、完全に建て替えてしまうため、文化財指定はないのだそうです。


国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-02

式年造替の説明。『「式年」とは「定まった一年の年限」、「造替」とは「社殿を作り替える」という意味。神さまのお引越しを「遷宮」といいますが、春日大社では本殿の位置は変えずに建て替え、あるいは修復を行うため「造替」といいます』


入場者には特別記念品の「匂い袋」も

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-09
「御本殿特別公開」へは、正面の南門からではなく、西側の「慶賀門」から入場します。巫女さん(春日大社では「みかんこ」と呼びます)に受付をしていただきます

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-08
受付の前に、臨時の手水(ちょうず)が設けられています。ここで手と口を清めてから参拝します

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-10
参拝料金「1,000円」を支払うと、入場券・パンフレットとともに、「式年造替特別記念品」がいただけます。記念品の中身は、お香が入った小型の匂い袋。天然の漢方香料・龍脳・白檀・桂皮・丁子などが配合されています。春日大社はお清めに香を用いる日本では数少ない神社なのだとか

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-12
この日は、春休み中であり、特別公開が始まって間もなかったこともあって、かなりの行列になっていました。行列に並んでトータル1時間ほどで参拝を終えました。もっと空いた日であれば、のんびりと拝見できたかもしれません


神さまが遷られた「御仮殿」特別参拝

本殿のご造替作業を行っている間、神さまが仮住まいなさっているのが、本殿左手の重要文化財「移殿(うつしどの)」です。式年造替のたびに新たに建物を建てるのではなく、普段は「内侍殿(ないしでん)」と呼ばれる建物を「御仮殿(おかりでん)」として使用しているのだとか。

こちらには、通常は御本殿の正面に祀られている「六面の御神鏡」が遷されていました。

神さまの依代であり、まさに神そのものともいうべきものですから、それを拝見できるのも20年に一度です。決して派手派手しいものではありませんが、思わず背筋が伸びました!


国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-13

御本殿に向かって左手にある「内侍殿(ないしでん)」(重文)。平安時代の859年創建で、1650年に造替されています。式年造替の際に一時的に御神霊が遷るため「移殿(うつしどの)」とも呼ばれてており、ここに「六面の御神鏡」が祀られていました(※内部は撮影禁止です)


140年ぶりとなる「後殿」特別参拝

今回、140年ぶりに参拝が許された「後殿(うしろどの)」。明治維新以降、立ち入りが禁じられていましたが、その中に入ってお詣りできました。

それぞれ小さなお社で、このような神さまが祀られています。

・佐軍神社 - 悪縁を絶ち平穏をお守りくださる神様
・杉本神社 - 建物の高層階で生活する人々の安全をお守りする神様
・海本神社 - 食の安全を守る神様
・栗柄神社 - 出入りの門をお守り下さる神様
・八雷神社 - 雷の力(電話・通信・電気)で人々に幸せをもたらす神様

そして、本殿の脇には、この2柱の神さまがおわします。

・飛来天神社 - 空の旅の安全をお守り下さる神様
・手力雄神社 - 勇気と力の神様

こうした神さまたちを間近でお詣りできるだけではなく、御本殿を裏側から拝見できることも興味深いですね。なにせ初めてのことですから、御本殿に近づいて細部が見えるだけでも興奮しました(笑)

さらに、後殿からは、御本殿の第一殿と第二殿の間にある「磐座(いわくら)」が拝見できます。今回が初公開とのこと。岩そのままではなく、表面を白い漆喰(しっくい)で塗り固めた小さな岩という、とても珍しいものでした。

この磐座は、春日大社の記録を調べてみても記述が見当たらず、由来が不明なのだとか。まだまだ不思議なことはたくさんあるんですね!


国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-15

さらに行列は続き、重文「宝庫」などを横目に、140年ぶりの公開となる「後殿(うしろどの)」参拝を待ちます

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-17
この門の先が「後殿(うしろどの)」です(※内部は撮影禁止)。小さなお社が並び、御本殿の背後の様子もしっかりと拝見できます。今回が初公開になるという、御本殿の「磐座(いわくら)」も拝見できました!


鮮やかな朱色!「国宝 御本殿特別公開」

後殿を参拝した後は、いよいよ国宝「御本殿」を拝見します。式年造替で神さまがいらっしゃらない状態の留守宅のようなものですが、今だけの貴重な体験です。

春日大社の御本殿は、「春日造(かすがづくり)」という神社建築様式の四棟が、横一列に並んでいます。屋根は檜皮葺、柱はあざやかな「本朱」(他よりも赤が濃い)で塗られています。

正面に向かって右手が第一殿、順番に第四殿まであります。

・第一殿 - 武甕槌命(たけみかづちのみこと)。茨城・鹿島神宮より神鹿に乗っていらっしゃった神さま
・第二殿 - 経津主命(ふつぬしのみこと)。千葉・香取神宮からお迎えした神さま
・第三殿 - 天児屋根命(あめのこやねのみこと)。大阪・枚岡神社からお迎えした、藤原氏の遠祖神
・第四殿 - 比売神(ひめがみ)。天児屋根命の妃神。

それぞれの棟の間の「御間塀(おあいべい)」には、美しい獅子と神馬が描かれており、これが絵馬の原型となったと言われているそうです。

実際に拝見して思ったことをメモ代わりに書き出しておきます。

●4棟の御本殿、それぞれの屋根の間に巨大な「雨樋(あまとい)」のようなものが渡されていること。斜めから写した写真だとあまり目立ちませんが、正面からだとその大きさに驚きます。屋根から雨滴が落ちるのを防ぎ、建物を清浄に保つためなのでしょう。

●傾斜地に建っているため、第一殿から第四殿へ、少しずつ下がっていること。地面を平らにならして4棟が同じ高さにしてあるものだと思い込んでいたのですが、屋根の高さを比べてみると、少しずつ違います。御蓋山に近い第一殿のほうが高くなっていました。

●建物の朱色も、獅子と神馬の絵も、どれもとても色鮮やか。これから式年造替の修復に入るとは思えないほどでした


国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-26

春日大社の国宝「御本殿」の外観(パンフレットより)。写真では何度も拝見していますが、本物を目の前にすると、やはり感動が違います。四棟が横一列に並んでいて、大きな樋(とい)が間にかけられていること、それぞれに段差があること、棟の間に描かれた獅子と神馬の絵が美しいことなど、実際に観てみて初めて気づくこともたくさんありました(※もちろん撮影禁止です)

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-18
御本殿を拝見した後は、すぐ前にある「中門」をくぐって回廊の外へ出ます。この中門をくぐることができるのも、おそらく20年に一度きりでしょう。感慨深いです!


「御蓋山浮雲峰遥拝所」の特別参拝も

さらに、通常は禁足地として立ち入りが禁じられている、「御蓋山浮雲峰遥拝所(みかさやま うきぐものみね ようはいじょ)」の特別参拝もできます。

私たちは、昨年秋にすでにここへお詣りし、「御蓋山遙拝所も!『御本殿特別参拝(新順路)』@春日大社」という記事に詳しく書いてありますので、そちらもご覧ください。

遙拝所の正面にある「御蓋山」は、鹿島神宮の神さまが白鹿に乗ってここに鎮座したとされ、聖なる山(神奈備)として崇められてきました。現在でも禁足地として入山が制限されている場所ですから、遠くからとはいえ、こうして参拝することができるのも、とても貴重な体験なのです。


国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-19

2014年秋から参拝ルートに加わった「御蓋山浮雲峰遥拝所」。御蓋山は、百人一首にも収められた「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」安倍仲麿の歌で有名ですね

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-20
また、4月5日までの限定で、ご神宝も特別公開されていました。白鹿に乗って三笠山に降り立った武甕槌命を描いた「鹿島立神影図(かしまだちしんえいず)」と、その際の従者で春日社司の祖となった中臣時風・秀行が持っていたとされる「鹿島立鉾(かしまだちほこ)」が拝見できました


<オマケ>春日大社の写真など

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-21

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-22

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-23

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-24

国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝@春日大社-25



■春日大社

HP: http://www.kasugataisha.or.jp/
住所: 奈良県奈良市春日野町160
電話: 0742-22-7788
主祭神: 武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神
創建: 768年
開門時間: 9:00 - 17:00(神苑)
入場料: 萬葉植物園 500円 など
駐車場: 有料駐車場あり
アクセス: 近鉄奈良線「奈良駅」から徒歩約25分。または、奈良交通バス「春日大社本殿行」で10~15分


■国宝 御本殿特別公開と御仮殿特別参拝

HP: http://www.kasuga-houshuku.jp/special/honden/

期間: 2015年4月1日(水)~5月31日(日)
拝観時間: 8:30 - 16:45
参拝料: 1,000円(式年造替特別記念品付)

※実際にお詣りしたのは「2015年4月2日」でした


■参考にさせていただきました

式年造替中の春日大社、御本殿の特別拝観に行きました。 | 寺社巡りドットコム
謎の磐座が初公開!『国宝御本殿特別公開』春日大社「第六十次式年造替特別公開」 | 奈良県 | Travel.jp[たびねす]
奈良倶楽部通信 part:II: 春日大社「国宝御本殿特別公開」と「御神宝特別拝観」


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