2014-09-24

庭園・茶室「八窓庵」が期間限定で無料公開中@奈良博

庭園・茶室「八窓庵」が期間限定で無料公開中@奈良博

奈良国立博物館「なら仏像館」が改修工事のために休館中のため、その代わりに「庭園と茶室(八窓庵)」などが一般公開されています。八窓庵は、有名な古田織部好みとされる多窓式茶室で、「大和の三茶室」といわれているものだとか。庭園内では渋い燈籠なども観られました。通常はなかなか入れない場所ですので、この機会にぜひ!


庭園茶室・関野ホール・青銅器館が無料公開中

奈良公園内にある「奈良国立博物館」。新館は『第66回 正倉院展』(2014年10月24日~11月12日)の準備期間のため、旧館「なら仏像館」は、建物内外の改修工事のために休館しています(2014年9月~2016年3月まで)。

しかし、その代わりに、こんな特別企画が開催されています。

庭園と茶室(八窓庵)仏教美術資料研究センター(関野ホール)青銅器館の無料特別公開(詳細

●地下回廊での『特別企画 正倉院展ポスター 昭和22-昭和63』(紹介記事

普段は一般公開されていないエリアを無料で見学できるのですから、これは嬉しいですね。

なお、無料特別公開の期間は12月7日までですが、『第66回 正倉院展』の開催期間は、この無料公開も一旦中止されますのでお気をつけください。正倉院展と同時に観られないのは残念ですが、たくさんの方が押し寄せる大きな展示ですから、仕方ないんでしょうね。


庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-01

「庭園・茶室、関野ホール、青銅器館を特別無料開放!」の案内。なら仏像館の旧館にともなう特別公開で、事前の申し込みなども一切必要ありません

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-02
入口でいただける「庭園散策マップ」。茶室の説明はもちろん、庭園内の石塔や古木などもしっかりと説明されています。また木々が生い茂っていてよく見えませんでしたが、この庭園は、春日若宮おん祭の際に神様がお遷りになる「御旅所」のすぐ裏手でした。それだけでちょっと感動しました(笑)


大和の三茶室の一つ。織部好みの八窓庵

無料公開中の庭園と茶室「八窓庵」は、奈良博の西新館の裏手にあります。

八窓庵は、江戸時代中期に建てられたもので、漫画『へうげもの』の主人公としても知られるようになった、武将であり茶人である「古田織部」(Wikipedia)が好んだ「多窓式茶室」という形式だとか。

もとは興福寺・大乗院庭園(現在の奈良ホテルの南)にあったものが、1892年(明治25年)に現在地へ移設されました。

博物館の中庭にある八窓庵(はっそうあん)は、もとは興福寺の大乗院庭内にあった茶室で、含翠亭(がんすいてい)ともいい、江戸時代中期に建てられました。江戸時代の名茶人、古田織部(ふるたおりべ・1544-1615)好みと伝えられる多窓式茶室として有名です。

この茶室と興福寺塔頭慈眼院の六窓庵 (ろくそうあん 現所在東京国立博物館)、東大寺塔頭四聖房の隠岐録(おきろく 東京へ移建の後、戦災で消失)と称される茶室とあわせて大和の三茶室といわれていました。

この茶室は、茶会の手続きをして料金を支払えば、今でも貸し出してもらえるのですが、一般人にはなかなかそんな機会もありません。特別公開は貴重なチャンスなのです。


庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-03

心字池(しんじいけ)越しに見た茶室「八窓庵(はっそうあん)」。すぐ向こう側に奈良国立博物館の西新館の建物があります。博物館のすぐ裏手にこんな庭園があることを、ご存じない方も多いかもしれません

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-04
茶室「八窓庵」。草庵式という形式です。初期の茶道では、中国文化と禅宗の影響が大きい「書院式」が主流でしたが、15世紀の奈良の人「村田珠光」らによって草庵の茶(侘び茶)が大成されてきました

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-05
八窓庵は、江戸中期に建てられた茶室。草庵式・入母屋造り茅葺平入屋根・柿葺(こけらぶき)土間庇。創建当初の姿をよく保っていて、「織部好みとされるこの茶室は、千利休の好む極端に狭い茶室から、小堀遠州が好んだ四畳半台目のゆったりとした茶室に移行する中間のきわめて貴重な遺構である」とのこと

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-06
全体が茅葺で、手前の土間部分は柿葺。その下にある小さな「にじり口」から入室します。武士も刀を置いて、一度頭を下げないと入室できないようにするため、と言われています

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-07
裏手。立ったまま出入りできる入口もあります。手前の部分は瓦屋根。シンプルに見える建物ですが、窓の形なども含めて、いろんな変化が散りばめられています

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-08
にじり口の部分を内側から。内部の撮影などはできますが、室内に入ることはできません

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-09
内部は意外と明るくて広々しています。手前の茶室(四畳台目)に、相の間(四畳)・水屋(三畳)が附属しています。天井は、この写真の左手側が蒲天井、右手側が化粧屋根裏になっています

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-10

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-11

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-12

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-13

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-14
茅葺の庇の裏側。丁寧で美しい作りですね!


庭園の「般若寺型燈籠」「利休型石燈籠」など

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-15
庭園の「仏教美術資料研究センター」側から入ると、すぐに大きなアラカシの古木があります。奈良公園側からは、大和葺きの「露地門」から入場できますので、ぜひ観察してみてください

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-16
アラカシの根本部分は、完全な空洞に。この状態でもしっかりと大きな身体を支えているんですからすごいですね

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-17
茶室の控室となる「寄付待合」の建物。ここに移築される前は、奈良帝室博物館の事務所のいちぶで、正倉院の古切れの整理を行う御物修理所としても使われたそうです!すごい歴史があるんですね!

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-18
風情ある飛び石も

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-19
お茶会で亭主の迎えがあるまで待つ「腰掛待合」。貴人席を設けたL字型。京都・薮内家の茶室「燕庵」のものを写しているとか

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-20
寄付待合の前にある「般若寺型燈籠」。六角石灯籠で、奈良・般若寺の石燈籠を基本とする形式だとか。「見所の多い石燈籠です」とあったので、説明を読みながらじっくりと細部を観察してみると……

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-21
火袋に唐獅子と牡丹を彫刻。その下部には十二支の動物を巡らせてあります。頂部の宝珠の下には、下向きの蓮弁が

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-22
基礎石には雌雄の鹿の彫刻があり、一つの石燈籠に19頭もの動物が刻まれているとか。特徴のすべては理解できませんが、じっくり見てみると面白いですね

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-23
14世紀、凝灰岩製の「宝篋印塔」。火焔宝珠をいただいている、大分県の国東半島に分布するタイプの塔だとか

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-24
江戸時代の「利休型石燈籠」。説明には「総体六角をなし、蕨手の付いた甲高の笠、胴張りの火袋をもつ燈籠を利休型と称する。宝珠や竿、基壇を欠失するが、なおも愛らしい姿が興趣をさそう。」とありました。燈籠にもいろんな種類があるんですね!

庭園・茶室「八窓庵」無料公開@奈良博-26
庭園に植えられた「ナラノヤエザクラ」。平安時代の女流歌人・伊勢大輔が詠んだ「いにしへの ならのみやこの 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」という歌が有名ですね。樹勢が弱く、殖やすのがとても難しい木なのだとか



■庭園・茶室、関野ホール 特別無料公開

HP: http://www.narahaku.go.jp/events/2014event/sekinohall_hassoan.html
会期: 2014年9月17日(水)~10月22日(水)、11月13日(木)~12月7日(日)
休館日: 月曜(別途、休館日開館日あり)
開館時間: 9:30 - 16:00
観覧料: 無料

※実際に展示を拝見したのは「2014年9月19日」でした


■奈良国立博物館

HP: http://www.narahaku.go.jp
住所: 奈良県奈良市登大路町50番地
電話: 050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
休館日: 月曜日(休日の場合は翌日休み)
開館時間: 9:30 - 17:00
駐車場: 周辺の有料駐車場を利用
アクセス: JR・近鉄「奈良駅」から、市内循環バス外回り(2番)「氷室神社・国立博物館」バス停下車すぐ(近鉄奈良駅から徒歩約15分)

※奈良国立博物館「なら仏像館」は、2014年9月より、建物内外の改修工事のために休館しています(2016年3月まで予定)。


■参考にさせていただきました

八窓庵など無料公開 - 期間限定で奈良博 | 社会 | 奈良新聞WEB


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