これが最後!第5回『正倉院正倉』工事現場を見学しました
ほぼ3年に及ぶ改修工事が終了間近の『正倉院』。その様子が間近で観られる「正倉院正倉整備工事現場公開」へ参加してきました。第5回目となる今回は、最後の一般公開です。中倉の内部へ入れるなど素晴らしい体験になりました!
正倉院を間近で観られるラストチャンスでした
聖武天皇・光明皇后ゆかりの品などを収蔵していた「校倉造(あぜくらづくり)」の倉庫『正倉院』(Wikipedia)。建物は正式には「正倉院正倉」といい、国宝に指定されています。
毎年秋、この正倉院に収められていた宝物を、奈良国立博物館で一般公開する「正倉院展」には、毎年たくさんの方が押し寄せます。
正倉院の建物は、東大寺大仏殿の北西側にあります。2011年から、約100年ぶりとなる大規模な修復工事が行われてきましたが、それもほぼ完成。2014年11月ごろから、また以前のように一般公開を再開する予定です(門の前から外観が眺められるのみです)。
ほぼ3年にわたる修復工事期間中には「正倉院正倉整備工事現場公開」として、計5回の一般公開が行われてきました。私たちも第2回目に参加して、間近で拝見する本物の迫力に圧倒されてきました。
今回は、その最終回となる5回目の一般公開です。事前申込みをしたところ、見事に当選したため、改めて拝見することができました!
今回は、先回(2回目)との違いを中心にお伝えしますので、『特別公開『正倉院正倉』工事現場を見学してきました』の記事を合わせてお読みいただくことをオススメします。
第5回(最終回)となる『正倉院正倉整備工事現場公開』。5日間の公開期間に、事前申し込みで当選した約8,400人の方が見学したそうです。足場に囲まれた正倉院が見られるのもこれが最後です
まずは床下の高さから。大きな三角形の校木(あぜき)を井桁に組み上げた「校倉(あぜくら)造り」も目の前ですし、正面に出っ張っている「台輪(だいわ)」には手が届きそうな距離です
校倉造りの校木。10メートル近い長さで、創建当時のままの木材が使用されているとか。今回は中倉の内部まで拝見できましたが、雨風にさらされない内側の部分がきれいな状態に保たれている様子まで見られました
正面に突き出た「台輪」。古くはここに板を渡して、北倉・中倉・南倉を移動したりしていたとか。銅板の裏側を見ると、文字のようなものが見られたり、打ち損ねに近いような釘などが見られたりします
南倉側から
日本でもっとも有名な高床式建物の土台部分。朽ちた部分を継いであったり、金輪で締めて固定したりした様子が見られます
「中倉」の中へ入れました!これは嬉しい!
階段を上がって、正倉院の床レベルへ上がります。これは北倉側から
正倉院正倉の軒。保管用の倉庫ですから、目的の神仏を祀る寺社建築のような華やかさはなく、ただただシンプル。実用本位ですね
南倉の扉は、しっかりと勅封されていました。以前に拝見した時には、この鍵の実物が間近で見られるようになっていました。毎回少しずつ違った見せ方をしてくれています
そして、今回の現場公開で驚いたのが、中倉の扉の内側2メートルほどのところまで入れるようになっていたこと!これは「正倉院の中に入った」と言っても過言ではありませんね!もちろん、建物などに触れるのは厳禁です
中倉の内部から天井を見上げたところ。正倉院の内部は「2階建て+屋根裏スペース」のような構造になっています
中倉などの1階部分はガランとしたスペースになっています。辛櫃(からびつ)に収めた宝物をここに積むなどして保管していたそうです。左手奥の壁面が、中倉と南倉の間の校木(あぜき)。外の部分はやや風雪で傷んでいますが、中は美しいままでした
その上の2階部分には、近世になって入れられた、管理用のガラス戸の棚がずらりと並びます。ここにあの貴重な宝物が収まっていたかと思うと、ちょっと感動しますね!
天井側のアップ。真ん中に見えるのは棟札でしょうか。屋根裏部分には黒い金属部品と、新しく入れられた材木が見えますが、これはすべて耐久性を高めるための部材です。ちなみに、吊るされている電灯もこの一般公開用に付けられたもの。火事の原因にもなりかねない照明設備は取り外されるそうです
こちらは北倉側。扉の外から内部が見られるようになっていました。この北倉こそ、主に光明皇后ゆかりの品を納めた倉で、開扉には天皇の許可を必要とした「勅封倉」でした。正倉院の中でももっとも由緒正しい場所といえるようなところです
北倉は1階部分にも棚が入っています。この棚にあんな宝物やこんな宝物が収められていたかと想像すると、胸がドキドキしました(笑)
縦位置で。全体の構造が分かりやすいでしょう
奈良時代の瓦279枚が現役で使用されます
さらに上の3階部分(正倉院正倉の屋根のレベル)では、さまざまなパネルや模型などの展示があります
今回は「瓦」を中心に分かりやすい展示でした。これは各時代の平瓦と丸瓦を、実際に触って確かめられるコーナー。一番手前は、奈良・天平時代の平瓦。本物に触れるなんてすごい!これは重さが3.9kgあり、新しいものほどどんどん軽くなっていきます。手に持ってみると違いが歴然でした
奈良・天平時代の丸瓦。重さ3.1kgの本物で、表面の布目もくっきりと見えました。お役御免になったものとはいえ、実際に触れるのはすごいですね!なお、正倉院正倉で使用する瓦は約34,600枚。こんな重さのものを大量に乗せているんですから、木材の負担も大きかったでしょうね
正倉院正倉の屋根瓦の配置図。色の付いていない北面・西面は、すべて現代製法の新しい瓦です。手前の東面は、黄色-室町・慶長時代、水色-江戸時代、薄緑-伝統製法のものなど。向かって左手の南面は、奈良時代の瓦279枚に加え、ピンク色-鎌倉時代のものなどを使用しています
東面の屋根。少しずつ色が違っていて、時代ごとの瓦がまとめて使用されているのが分かります。奥側から、伝統製法の瓦、室町・慶長時代の瓦、江戸時代の瓦が並んでいます
北東側の鬼瓦。今回の展示では、鬼瓦もそれぞれどの時代のものかの解説がありました。手前の一の鬼瓦は明治のもの、上の二の鬼瓦は新しく取り替えられたものだとか
北西側の一の鬼瓦は、正面下部に「ニシノキヤウ宗左衛門」とヘラ書きがある、室町・慶長の時代のもの。まじまじと鬼瓦を観る機会も滅多にありませんが、迫力ありますね!
西面の瓦。すべて現代製法の瓦が使用されています。軽くて丈夫になっているんでしょう
軒の木材も見えます。この距離で見ると瓦の新しさが目立ちますね
南西側の鬼瓦。注目なのは、その向かってすぐ右手にある瓦たちです。ここに天平時代の瓦を再利用したものが並べられています!
手前から4列くらいまでが奈良時代の瓦です(一番下の丸瓦は室町・慶長のもの)。よく見ないと気づかないくらいですね。この時代のものは、平瓦259枚、丸瓦20本が再利用できて、もっとも環境の良い南面の両端に使用されているとか
この図と照らし合わせながら、どの時代のものかを眺めていくと違いが分かって楽しかったです
天平・鎌倉・室町などの古瓦が使用されていると思うと、迫力がありますね
丸瓦のデザインも時代によってさまざまです。室町・慶長時代のものと江戸時代のものが使用されていますが、「東大寺」「東大寺正倉院」などのパターンがありました
こちらもまた別パターン。見ているだけで面白いです!
国宝の正倉院の建物の(しかも屋根の部分まで)、こんなに間近で拝見できるのも、これが最後でしょう。貴重な体験をさせていただきました。2014年11月からはまた外観のみ拝観できるようになりますので、その時にまた拝見したいと思います!
■正倉院正倉整備工事現場公開
HP: http://www.kunaicho.go.jp/event/genbakokai/genbakokai.html
※このような現場公開はすでに終了しており、もう申し込みもできません。
■参考にさせていただきました!
正倉院 - 宮内庁
正倉院 - Wikipedia
天平の技、間近で - 正倉院正倉の修理現場公開 | 総合 | 奈良新聞WEB
正倉院:正倉を現場公開 工事完了で11日まで - 毎日新聞
■関連する記事