2012-01-07

万葉集の歌に親しめる「超訳」本などお勧めの2冊

万葉集の歌に親しめる「超訳」本などお勧めの2冊

日本最古の和歌集『万葉集』。その時代背景や読み手のプロフィールなどを知らなくても、現代の「詩集」のようにスラスラと読めて、気軽に歌に親しめる本『超訳 万葉集―心に響く万葉の言葉』と『万葉集 (日本の古典をよむ 4)』の2冊をご紹介します。どちらも分厚い単行本ですが、気軽に万葉歌に触れられるでしょう。


万葉集を「親しみやすい歌集」に

2011年は色んな万葉集関連本を読んできました(私の読書リストは「ブクログ」にまとめてあります)。初心者向けの解説本は、以前別の記事にまとめてあります。


今回は、万葉集の時代背景などを知らない方でも、普通の「歌集」として楽しめる2冊をご紹介しておきます。古い言葉を使って詠まれた歌ですから、さすがに現代語で書かれたものほどシンプルではありませんが、いずれもとても分かりやすい内容でした。


万葉集本「超訳万葉集」など-01

『万葉集 (日本の古典をよむ 4)』と『超訳 万葉集―心に響く万葉の言葉』。万葉集は、4,500首以上もある歌集ですから、最初から順番に読んでいこうと思ったら大変です。この2冊は万葉集の代表的な歌をピックアップして、現代語訳つきで紹介しています


『超訳 万葉集―心に響く万葉の言葉』

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植田 裕子

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万葉集の名歌たちを、現代にも通ずる言葉に「超訳」した一冊。この手の本は、現代的に訳そうとするあまり、読んでいて赤面するような訳がつけられるものも多いのですが、本書では適度な超訳っぷりで、分かりやすく読みやすくなっています。

全体が5章に分かれていて(恋・四季・無常観・旅・レクイエム)、掲載歌数は150首ほど。もともと恋の歌(相聞歌)が多い万葉集ですから、全体の半数以上のページを割いていますが、有名な人物の歌に偏ることなく、作者不詳のものからも多数収録されています。作者別に見ていったのではなかなか目に触れない歌に出会えるのも、こういった本の魅力でしょう。

見開き2ページで、右には万葉歌、左には現代語訳と簡単な解説文。文字も大きめで読みやすいですし、万葉集を親しみやすい歌集として甦らせています。この時代の歌も、現代人と同じような悩みや喜びを持ち、とても共感できるものばかりですから、このような本から万葉集の世界に入ってみるのもいいですね。


万葉集本「超訳万葉集」など-02

越前の国に配流になってしまった「中臣宅守(なかとみのやかもり)」と「狭野茅上娘子(さののちがみのおとめ)」が交わし合った歌の中で、最も有名で情熱的なものです。後宮の女官だった狭野茅上娘子との結婚が問題視されたとも考えられています。訳を読むと、少しだけ現代詩に近い言葉遣いになっていますね

君が行く 道のながてを 繰り畳ね
焼き亡ぼさむ 天(あめ)の火もがも
狭野茅上娘子 万葉集 巻第15-3724
あの人を奪い去る この長い道をたぐり寄せ 焼きつくしてしまいたい さあ、天の炎よ ここへおいで

万葉集本「超訳万葉集」など-03
額田王(ぬかたのおおきみ)の有名な歌。訳は「あなたはやって来る 紫草の野を 禁じられたこの野を ああ、そんなに手を振って 噂になるのも 怖くないの」。超訳だけあって、通常よりも感情が入った訳になっています。シチュエーションはともかく、現代の歌にもありそうな言葉遣いですね

万葉集本「超訳万葉集」など-04
万葉の時代の人は、くしゃみが出たり眉が痒くなったりすることを、恋人が訪ねてくる予兆だと考えていました。そんな内容を歌ったものもあります。右に万葉歌が、左に超訳と解説があり、とても読みやすくなっています

万葉集本「超訳万葉集」など-06
恋唄だけではなく、有名な「あをによし 寧楽のみやこで 咲く花の 薫(にほ)ふがごとく 今盛りなり」といった歌も収録されています。超訳は「うるわしの都 奈良の都 咲き誇る花のように 今を盛りと輝ける」。超訳とはいえ、それほど突飛な訳しかたではないので、自然にスラスラと読めます


続編『超訳万葉集〈2〉心重なる、恋の歌』も

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植田 裕子

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…とご紹介の準備をしていた2011年12月、続編となる『超訳万葉集〈2〉心重なる、恋の歌 』が発売となりました。こちらはどうやら恋の歌がメインとなっているようですね。また私も読んでみたいと思います!


シンプルな『万葉集 (日本の古典をよむ 4)』

万葉集 (日本の古典をよむ 4)万葉集 (日本の古典をよむ 4)
小島 憲之

小学館 2008-04
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日本の古典の「読みたいところ、有名場面をセレクト」したシリーズの万葉集版。よく知られた歌を中心に300首余りが収録されています。

特徴的なのが、相聞歌や雑歌などでまとめてしまわずに、ちゃんと収録順に掲載されていること。万葉集はもともとかなり雑多な順番に並んでいるため、歌のタイプごとに再編集したものの方が読みやすい場合もあります。しかし本書では、巻第一から巻第二十まで、それぞれの巻ごとの特徴を解説しながら紹介されているため、万葉集の全体的な構造を把握しやすくなっています。

現代語訳もシンプルで理解しやすいですし、冒頭と巻末に掲載されている解説も分かりやすいですね。短いながらも、その歌が詠まれた背景も簡潔に解説されていますので、どのような人物がどのような状況で詠んだ歌なのかも把握しやすくなっています。万葉集を最初から最後まで読み通すのはなかなか難しいものですが、その世界にサッと気軽に触れるにはいいでしょう。


万葉集本「超訳万葉集」など-08

『万葉集 (日本の古典をよむ 4)』の特徴は、巻ごとの特徴などが掲載されていること、歌の順番を編集していないことなど。万葉集の雰囲気を残し、シンプルな直訳に近い訳としています。歌それぞれに解説がついているので、流れを把握するのに向いています

万葉集本「超訳万葉集」など-07
狭野茅上娘子の歌が紹介されているページ。訳は「あなたの行く 長い道のりを 手繰り重ねて 焼き滅ぼしてくれるような天の火がないものか」。シンプルですね

君が行く 道の長手を 繰り畳ね
焼き滅ぼさむ 天(あめ)の火もがも
狭野茅上娘子 万葉集 巻第15-3724
あなたの行く 長い道のりを 手繰り重ねて 焼き滅ぼしてくれるような天の火がないものか

それぞれに長所がありますので、ぜひお好きなタイプを見つけて、万葉集の歌の世界に親しんでみてください。



■関連するURL

万葉集 - Wikipedia
Nippon Archives || 万葉集~ココロ・ニ・マド・ヲ~
たのしい万葉集: 万葉集の入門サイトです


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