2010-03-12

観光前に知っておきたい『奈良と京都の違い』とは?

観光前に知っておきたい『奈良と京都の違い』とは?

奈良と京都。いずれも日本を代表する古都ですが、関西圏以外の中には、その違いを理解されていない方も多いと思います。出来るだけ分かりやすく「奈良と京都の違い」についてザックリとまとめてみました。

※もちろん、例外も数多くありますので、大雑把なイメージとしてお考えください。


奈良と京都は「歴史」が違います

  • 奈良

邪馬台国の所在地については諸説ありますが、卑弥呼の時代(3世紀前半)から、奈良が中心的な地域であったことは間違いありません。古墳時代・飛鳥時代・奈良時代と続き、794年に平安京に遷都されるまでが、奈良の時代だったといえるでしょう。

法隆寺-16
奈良を代表する古刹「法隆寺」。飛鳥時代の創建。地震が多い日本にありながら、今まで何事も無かったかのように立ち続けているだけでも驚きです


  • 京都

794年の平安京遷都から現在まで、帝がおわすところとして、日本の中心であり続けました。政治の中心が鎌倉や江戸へ移った時代であっても、日本文化の中心地であったことには変わりありません。

清水寺@京都-30
京都を代表する大寺院「清水寺」。いつ行っても沢山の観光客で賑わう一大観光地になっています


  • 卑弥呼や大化の改新など、古代史の舞台となったのが奈良
  • 1千年以上、日本の文化的な中心であり続けたのが京都


奈良と京都は「文化」が違います

  • 奈良

飛鳥時代や奈良時代には、飛鳥文化・白鳳文化・天平文化などが栄えました。1300年前後が経っているにも関わらず、今でもこの時代の建築物や仏像などは奈良に数多く遺されています。世界最古の木造建造物である法隆寺・金堂は、607年の建立、710年頃の再建とされています。地震の多い日本にあって、1300年も建物が立ち続けていること自体が驚くべきことでしょう。

源平の争乱(平重衡の東大寺焼き討ち)や戦国時代の戦乱(松永久秀の乱)によって、東大寺や周辺の寺院は幾度か焼失していますが、法隆寺の建造物や各寺院に遺された仏像などの文化財には、天平時代のものが現存しています。

しかし、その一方で、主に平安時代以降の文化である「庭園」などは驚くほど少なめです。また、仏像なども制作年代が極めて古いため、その技術を発展させて作られた京都の仏像と比較すると、地味に見えるものが多いでしょう。

また、仏教文化が日本に流入する以前に作られた「古墳」も数多く遺されており(約9,000基)、古墳文化の全盛期を偲ばせるような巨大古墳が多いのも特徴です。

※古墳の数でいうと、京都は「約11,000基」ありますので、奈良よりも多いそうです


  • 京都

平安時代以降の都であり、北山文化・東山文化などの中心地となりました。遣唐使を廃止してから生まれた国風文化の中心でもあり、現在「日本らしさ」を感じる文化や風習などの大部分は京都発祥のものです。794年の平安京遷都から現在まで、ずっと日本文化の中心地であり続けたのが京都です。

しかし、室町時代の1467年から、11年間にわたって京都を中心として争われた「応仁の乱」によって、京都の建築物や文化財などは大きな被害を受け、これ以前のものは数多くありません。応仁の乱以降の復興期に再建された、華やかな文化が遺されています。

奈良と比較すると、日本人が古都をイメージする時に連想しやすい「庭園」に素晴らしい作例が多いです。仏像も、制作年代が奈良よりは新しいため、技術的にも優れた華やかなものが多いのが特徴です。細部まで精密に彫刻された建造物なども数多く見られます。誰が見ても、そのすごさが分かりやすいでしょう。


  • 古墳・遺跡・社寺・仏像、全て古い歴史を持つのが奈良
  • 社寺・仏像・庭園、誰でも魅力が分かりやすいのが京都


奈良と京都は「混雑度」が違います

  • 奈良

奈良県の面積は「約3691平方キロ」(全国40位)。人口は「約142万人」(全国29位 ※2005年)。

観光客の数は、2008年で「約3580万人」(元データ)。京都の半分程度ですので、京都のような観光客で大混雑するようなことはあまりありません。その分だけ、町の規模は小さく、飲食店やお土産物屋さん、宿泊施設の数も少なめです。


  • 京都

県の面積は「約4613平方キロ」(全国31位)。人口は「約265万人」(全国13位 ※2005年)。

観光客の数は、2008年で「約7800万人」(元データ)。奈良の約2倍ですので、観光シーズンのピークはもちろん、それ以外の時でもかなり混雑しています。


  • 観光客の大混雑も少なく、比較的のんびり楽しめるのが奈良
  • 混雑を覚悟してでも行きたくなるのが京都


「文化財の数」はどちらも多いです

  • 奈良

国宝・重文登録件数(美術工芸品・建造物のみ)は、「国宝:198件」「重要文化財:1,377件」(元データ)。

世界遺産は、「法隆寺地域の仏教建造物」「古都奈良の文化財」「紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県・三重県の3県)」の3件。


  • 京都

国宝・重文登録件数(美術工芸品・建造物のみ)は、「国宝:226件」「重要文化財:2,241件」(元データ)。

世界遺産は「古都京都の文化財」の1件。

(※ちなみに、全国の総数は「国宝:1,079件」「重要文化財:12,709件」。登録数一位は東京で、国宝が無い県は、群馬・徳島・宮崎の3県です)


  • 奈良県も京都府も、日本有数の文化財の宝庫です


奈良と京都は「県民性」が違います

  • 奈良
「大和の建て倒れ」と言われるモノ持ち天国は、猿を調教して稼ぐようなことはせず、鹿を放し飼いにする、悠々自適ぶり。「大和の寝倒れ」というようにのんびりとした気質だが、観光客(カモ)を見るや豹変、「大仏商法」の仮面を被り、待ちの姿勢を保ちつつ、目先の金に執着する。寛容で順応性に富み、開放的だが、攻め込まれた経験が少なく、体を張ったアプローチには滅法弱い。おっとりしていて、人間関係も穏やかで、コンプレックスやストレスとも無縁、養子にするならもってこい。だが、やはり古都、田舎扱いされると猿のように向きになる。三都物語のメロディーを聞けば、なおさらだ。

「県民性一覧 - 日本辞典」より


  • 京都

江戸が三代なら、京都は十代。「この前の戦」とは応仁の乱を指すというお国柄。イチゲンさんはお断りドス。カモの足元を見て「オイデヤス」に始まり、湯豆腐を食わせるだけで勿体付け、婉曲な表現で小馬鹿にしながら、弱みを見せるとトコトンつけ上がり、実力本位の狼藉者と見るや、柔らかい口調で必殺技・「カンニン」を繰り出す、そして、ほくそ笑みながら「オオキニ」で締める。古くは「京の着倒れ」、現代も身だしなみには気を使うところは、揺るぎない都人の誇り。ところが、分別ゴミはアパウトらしい。気に入ったものは躊躇なく取り入れる進歩的な頭脳を持ちながら、せかせかしたところが全くない、そこは都人、一味違う。

「県民性一覧 - 日本辞典」より


奈良と京都、それぞれに良さがあります!

ここからは、奈良在住の奈良ファンである私個人の目線になりますが、、、、

京都の良さは、やはり誰もがイメージする「古都」の雰囲気がそのまま味わえる「分かりやすさ」がポイントでしょう。清水寺や三十三間堂、龍安寺や銀閣寺のお庭などは、歴史などに興味がない方であっても、パッと見てすぐにすごさが理解しやすいのです。

全てを見て回ることが不可能に思えるほどたくさんの社寺が存在しますし、町の規模も大きいため、飲食店やお土産物屋さんも豊富。大きな博物館や二条城など、社寺だけではない楽しみ方もできます。海外からの旅行客を一泊二日でもてなすとしたら、私なら京都へ連れていきます。

一方で、奈良は分かりやすい魅力が感じられるものは少なめです。東大寺の仁王像と大仏さま、奈良公園の鹿(あとは興福寺の阿修羅像くらい)などは魅力が伝わりやすいと思いますが、それ以上楽しむためには、少しだけ予備知識が必要になってきます。何も知らないで奈良に来てしまうと、「大仏と鹿しか見るものが無い」と思われてしまうのも仕方ないことだと思います。

ただし、華やかな京都と比べると、明らかに地味で渋めの奈良ですが、一度その魅力を知ってしまうと、次々に行きたい場所が増えてくる不思議な場所でもあります。

何も予備知識もなく明日香村へ行ったとしても、ただの田舎にしか見えませんが、ほんの少しだけ興味を持つと、あれほど歴史的な魅力が詰まった場所は他にはありません。1300年以上も昔に日本を揺るがす政争の舞台となり、今なお様々な遺跡が発掘されている場所なんて、他にはまず見当たらないでしょう。

先日、某テレビ番組でタレントの方が「30歳を過ぎたら奈良の魅力が分かる」というニュアンスの発言をされていましたが、まさにその通りだと思います。

何も考えずに修学旅行で連れてこられるだけでは、奈良の大仏さんの大きさと鹿の多さしか記憶に残らないのも当然でしょう。しかし、ある程度の年齢になって、主体的に物事を見られるようになると、奈良の面白さや素朴な魅力に気づくことができると思います。

奈良は、京都ほど観光客であふれ返るような大混雑にはなりませんし、どこに行ってものんびりとしています。飲食店・お土産物屋・宿泊施設・大きな商業施設などは少ないですし、繁華街を歩いたってすぐにお店が途切れます。若いうちはそれが物足りなく思えることも多いのですが、ある程度の年齢になってくると、そののんびりとした田舎っぽさに惹かれてくるのです。

京都と比べれば、奈良の仏像や建築物や街並みは、全て「素朴」です。しかし、それは1千年以上にわたって、人々から大事に拝まれてきた歴史を持つ、途方もないスケールの素朴さなのです。

京都でも、十分に非日常的な古き良き日本を感じることはできます。観光地としての厚みが違いますので、明らかに奈良よりも刺激的な体験ができることは間違いありません。しかし、奈良には「古き良き日本の原風景」と言えるような空気感があります。刺激は少ないかもしれませんが、ほっこりと心が落ち着く場所なのです。

聖徳太子・卑弥呼・天平仏・古代史・鹿男あをによし・鹿・奈良町など。キーワードは何でも構いませんので、少しだけテーマを持って奈良をのんびりと巡ってみてください。若い頃には気付けなかった奈良の魅力を再確認できるはずですので、肩の力を抜いてゆったりと楽しんでみてください!


  • 想像力を働かせて楽しみたいのが奈良
  • シンプルに日本情緒を味わいたいなら京都


奈良のことでご記憶いただきたいのは・・・

観光ガイドブックなどには、京都のオマケのような扱いで奈良が取り上げられるため、関西以外にお住まいの方には区別がつきづらいかと思いますが・・・。


  • 奈良の大仏さんの大きさに感動して、たくさんの鹿と戯れられるのが奈良です!
  • 「柿食えば」の俳句でお馴染みの、日本を代表する古刹「法隆寺」があるのが奈良です!
  • 大ブームを巻き起こした「阿修羅像(@興福寺)」がいらっしゃるのが奈良です!
  • 聖徳太子がいらっしゃったのも、教科書でお馴染みの大化の改新が行われたのが奈良です!
  • 万葉集でたくさんの歌が詠まれたのも、いたるところに大きな古墳があるのも奈良です!


「京都・奈良」とひとくくりにされやすいですが、奈良は京都とは全く別の魅力を持った土地ですので、どうぞお見知りおきを!


●参考サイト
京都と奈良の違い - 教えて!goo
京都と奈良の違いって、何でしょう? - Yahoo!知恵袋






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