餌やり禁止!?宮島の鹿と人間の共存の難しさ@広島県宮島
世界遺産『嚴島神社』を有する、広島県廿日市市の「宮島」。奈良公園と同じように、人間の身近に野生の鹿が存在する場所として知られています。しかし、市街地に住み着いてしまった鹿を野生へと戻すため、鹿への餌やりが全面的に禁止されています。奈良県民としていろいろと考えさせられました。奈良では観られない「海をバックにした鹿」などの写真もどうぞ!
「宮島の鹿はお辞儀するのか?」確認できず
2015年の5月末ごろ、初めて中国地方へ旅行へ行ってきました。世界遺産『嚴島神社』のお詣り、名物の牡蠣料理などとともに、とても楽しみにしていたのが「宮島の鹿」を観ることでした。
奈良県民の方や奈良好きな方であればご存知だと思いますが、奈良の鹿はエサをもらうときに「おじぎ」のような仕草をします。私も以前は「神の使いだからって、おじぎしないだろ?」なんて思っていたんですが、本当にそれっぽい仕草をするんです!
これが奈良公園の鹿だけの特徴なのか、それとも宮島の鹿も同様なのか、すべての鹿の修正なのか。とりあえず、人と鹿の距離が近い宮島へ行けばそれが確かめられると思ったのです。
しかし、現在の宮島では「鹿への餌やりは禁止」となっています。
宮島で掲示してある「観光客の皆様へお願い」。●いじめない、触らない ●食べ物を与えない ●ゴミを捨てない といった注意書きがあります
現在の宮島の鹿について愛嬌のある宮島の鹿は、人から餌をもらうことに馴れ、しだいに餌を求めて市街地へ下りてきました。その結果、市街地に定着する鹿が増え、人馴れした鹿は餌の匂いからゴミをあさってビニールなどを食べてしまい、胃の中にビニールの固まりが堆積し、鹿が長生きできなくなっています。
そのため市は、鹿に食べ物を与えないことで、人馴れしてしまった鹿を自然へ還す試みを行っています。鹿本来の野生のくらしを守るため、観光客の皆様には、ゴミ処理の徹底と鹿に餌を与えないよう、ご協力をお願いします。
現地の説明より
こうした状況ですから、当然のことですが、奈良の「鹿せんべい」に当たるものも販売されていません。
奈良の鹿と同様に、人間が口にするような食べ物であろうと、紙のパンフレットや匂いのついたビニールであろうと、鹿たちは何でも食べてしまいますが、鹿の健康に重大な悪影響を及ぼします。鹿が近寄ってきてエサをねだったりしますが、こうしたものを与えることは絶対に避けなければなりません。
とはいえ、いつもお腹を空かせている鹿たちですから、何も与えられないのも可哀想に思えて、「奈良の神鹿は恵まれているんだな」とあらためて思いました。
フェリーから宮島へ降りてすぐ、野生の鹿たちの姿を見かけます。町中を鹿が歩く姿は奈良で見慣れているつもりですが、やはり不思議なものですね(笑)
土産物店が並ぶ通りにも、たくさんの鹿の姿が。観光客が健康に良くないエサを与えたり、ゴミを飲み込んだりするため、人からの餌やりを禁止し、山へ還すような方針がとられています
鹿たちが食べ尽くしてしまうため、市街地にはほとんど草は伸びていません。鹿もお腹が空いて可哀想ですが、宮島にお住まいの方も、食害や糞害などで御苦労なさっているとか
野生の状態に戻すため「餌やり禁止」に
宮島の鹿は、宮島が島になる6000年前よりも以前から住み着いていた野生動物です。一時は「鹿は厳島神社の使い」と言われた時期もありましたが、それは正確ではなく、観光上そういう言い方を用いたようです。しかし、住民が残飯を「鹿桶」に入れて与えていた風習があるなど、鹿と共存してきた歴史がありました。
戦後、多くの鹿が殺されてしまい、生息数は激減しましたが、次第に個体数が復活。現在、市街地に近い宮島の北東部に500個体が生息しているとか。島内の全個体数を調査したデータは見つかりませんでしたが、これより多いことは間違いありません。
しかし、個体数の増加とともに、観光客の食べ物を狙って市街地へ住み着く鹿も増えました。農作物への被害、糞尿による悪臭などが拡大すると同時に、交通事故や誤ってビニールなどの食べて健康被害が起きるなど、トラブルも増えたのです。
このため、鹿を野生の状態に戻すため、1998年に「宮島町鹿対策協議会」を発足させ、餌やりの禁止などの方針を決定しました。その後、2008年の「宮島のシカ保護管理ガイドライン」の5年計画にも明記され、2007年ごろから鹿せんべいを禁止するなど、本格的に餌やり禁止が徹底されたそうです。
それと同時に、栄養状態の悪い鹿については保護し、回復を確認してから自然に帰すなどの管理が行われています。
動物愛護の観点からも、餌やりを禁止するのであれば「芝生の造成なども行うべき」「避妊手術を行って計画的に減らすべき」といった意見もあります。行政側もこうした要望は把握しているようですが、極端に予算が少なく、とてもすべて実現できるような状態ではないようです。
増えすぎた鹿。住民との共存の道は
奈良公園に生息している鹿は「約1,100頭」ほどで、約500ha(東大寺・春日大社などの境内地も含めると「約660ha」)の自然豊かな奈良公園に暮らしています。
宮島の面積は「約30平方km」(=約3,000ha)ですが、環境は大きく違います。
国の名勝に指定されている奈良公園は、若草山などの山も含まれますし、広々とした平地も広がっており、鹿のエサとなる植物も豊富です。大好物の鹿せんべいも主食としてではなく、おやつ(=これが無くても生きていける)として与えられています。
増えすぎてしまった宮島の鹿は、島の緑を食べつくし、生態系を変えてしまうほどの存在となってしまいました。殺処分したりすることなく、また異物を食べてしまって苦しませることなく、適正な頭数へ徐々に減らしていくのがベストですが、簡単なことではないのでしょう。
「餌やり禁止」だけ見ても、色んな意見があるようです。
●以前のように、すべてOKにすべき
●健康に悪いものを与えないように、鹿せんべいのみ解禁すべき
●市街地へ定着したままになるので、やはり全面禁止にすべき
宮島で暮らす鹿たちのためにも、島民の方たちのためにも、私たちのような観光客のためにも、ぜひ最良の道を探しだして欲しいと思います。
瀬戸内海を背景にした鹿が観られます!
そんな宮島の鹿たちですが、やはり可愛いものです。奈良では決して見られない「海を背景に歩く鹿」だけで興奮します!
大きな鳥居と、干潮の浅瀬をバックに
海沿いをゆうゆうと歩く鹿
餌をねだって近寄ってくるのは、奈良の鹿と変わりません。餌をあげられないので、宮島の鹿がおじぎするかどうかは確かめられませんでした
道端に伏す鹿
夕日に向かってたそがれる宮島の鹿
海の向こうの夕陽を浴びた宮島の鹿
※私はこの問題についての専門家でも何でもありません。後からネットで調べた内容をまとめて整理しているだけですので、誤った理解などもあるかもしれません。ぜひ以下の参考サイトさまの内容も合わせてご覧ください。
※実際に行ったのは「2015年5月24日」でした。
■参考にさせていただきました
宮島地域のシカについて - 広島県ホームページ
動物の解放宮島の鹿について
おしい!じゃなくて「残念すぎる!広島」~宮島の鹿たち~ - 幸せ音色+ ~reach a last Home~
シカとご理解を
宮島の鹿愛護会から離れることになりました。|フーの宮島の「シカ」考