
奈良の「配置薬」はデザインがレトロで楽しい!
奈良県は「薬(くすり)」の製造販売が盛んです。そのスタイルは、各家庭に一定量を置いておいて、使った分だけ後で生産する「置き薬」。それが理由かどうかは分かりませんが、薬のパッケージデザインがレトロなまま使用されていて、見ていて全く飽きません。「NaRaくすりと健康2012」というイベントで見た置き薬たちの画像などを紹介しておきます。
実家にも当然のように「置き薬」があります
ご存知ない方も多いと思いますが、奈良県は「薬」とゆかりの深い土地です。
吉野地方を中心に修験道の行者が持ち歩いた薬「陀羅尼助(だらにすけ)」は現在でも特産品となっていますし、正倉院宝物の中に薬が収められていたり、貴族たちが宇陀地方で薬狩りに出かけた記録なども残っています。なお、これらは歴史上の話だけではありません。今なお薬の製造販売を行うメーカーも多数あり、奈良県の主要な産業になっています。
それを示すように、奈良県内各地には製薬についての資料館や、薬の神さまとされる「狭井神社」など、薬にまつわるスポットは数多くあります。
奈良の薬の特徴は「大和売薬」という置き薬スタイルの販売方法でした。全国的に有名な「富山の薬売り」に次ぐ規模を誇ったとか。私の実家は富山県に近いので、当然のように置き薬がありましたが、ほんの数年前、奥さんの実家で奈良県産の置き薬を見て、「奈良にもあるんだ!」と驚いた記憶があります。
奥さんの実家にあった増田製薬さんの置き薬(2009年頃に撮影しました)。定期的に使用の有無をチェックして、使った分だけ料金を支払います。合理的なシステムですよね
個人的に薬のパッケージのこの手のレトロイラストが大好きです!総合感冒薬なのに、お姉さんの表情は爽やか!
髪型も服装も、昭和の半ば頃のものでしょうか。こうしたデザインの方が利用者に安心感があるのかもしれませんが、同時に「この薬は古いんじゃないか?」という不安も起こさせるかも?
「NaRaくすりと健康2012」で見た配置薬たち
2012年の10月17日~23日は「薬と健康の週間」でした。その一環として、イオンモール橿原で、10月26日・27日の両日、「NaRaくすりと健康2012」という渋いイベントが開催されていました。くすりに関するパネル展示や禁煙相談コーナーなどがあるだけではなく、「くすりと健康○×クイズ大会」などもあったようですが、私が見かけた時にはすでに終了していたようです。
その展示の一環として「奈良県の配置薬」というコーナーがありましたが、これがレトロパッケージがズラリと並んでいて楽しかったです!
いずれも長い歴史を持つお薬でしょうから、うかつにパッケージを変更したりすると、ずっと飲み慣れたお年寄りの方々が混乱してしまう…なんて理由もあるのかもしれません。いつまでこのデザインで行くのかは分かりませんが、ずっとこのまま続けて欲しいですね!
イオンモール橿原で行われた「NaRaくすりと健康2012」の会場。渋い内容ですし、終了時間も間際だったこともあって、閑散としていました
会場の一角には、奈良県製薬協同組合さんご提供の「奈良県の配置薬」コーナーが。組合に加入している色んなメーカーさんのパッケージが見られる楽しい展示でした!
どれもレトロ!パッケージのお姉さんたちは、この先も変わらずレトロなまんまなんでしょうね。薬の名前にも、ダジャレ混じりのちょっとハイカラなカタカナ系と、重みのある漢字の組み合わせたものなどが見られます
昔のレトルトカレー風のパッケージ。「どん いっぱつ くちく」とはすごいネーミングですよね!駆逐というから虫下しの薬かと思ったら、鎮痛・解熱でした(笑)
<余談>「絆創膏(ばんそうこう)」の呼び方
何回も調べてはそのたびに驚いてまた忘れてしまうので、メモ代わりに。
「全国でこんなに違うバンソウコウの呼び方 | ロケットニュース24」という記事が分かりやすいですが、日本全国でいわゆる「絆創膏」の呼び方は色々あります。地域によってカットバン・バンドエイド・サビオ・キズバンなどのタイプがあるそうです。
ちなみに、全国でも熊本県周辺の九州地域と奈良県では「リバテープ」と呼んでいます。
調べてみると、国内メーカーで初めて絆創膏を作ったとされる「リバテープ製薬」さんの本社が熊本県であり、九州ではその商品名が代名詞となっているのだとか。
そして、なぜ奈良でも同じリバテープという呼び方をしているかと言うと、こちらは奈良県高市郡高取町に本社を置く「共立薬品工業」さんの製品「キズリバテープ」の商品名から。同じリバテープと呼んでいても、九州とはルーツが違うようです。
ちなみに、関西では絆創膏のことを「バンドエイド」(和歌山ではサビオ)と呼ぶのが主流のようですので、奈良県民に方はお気をつけください!
■参考にさせていただきました
リバテープとは (リバテープとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
全国でこんなに違うバンソウコウの呼び方 | ロケットニュース24
充実の冊子『奈良のくすりのプロフィール2』
また、「NaRaくすりと健康2012」の会場では、『奈良のくすりのプロフィール2』という冊子を配布していました。県が制作したもので、これがものすごく充実していて立派なんですよね(1995年に作成、2011年にリニューアル版を作成)。
目次だけを見ても、奈良と薬の古い関係・伝統的な薬・優良な生薬・大和の置き薬・医薬品の生産・製造工場に対する応援・「奈良のくすり」めぐりなど、奈良の製薬業の歴史や楽しみ方が一気に分かる充実した内容でした。
一般的に面白がられるものではありませんし、もうどこで手に入るのかも不明ですが、簡単にご紹介しておきます。
『奈良のくすりのプロフィール2』の最初の見開きページ。全部で28ページあります。奈良と薬の関係を古代から説き起こしていて、読み物としてもなかなか楽しめました
「伝統的な薬」の筆頭には、もちろん「陀羅尼助」が役行者像とともに紹介されています。その他は、西大寺僧・叡尊が作ったとされる「豊心丹」、中国に由来する「六神丸」、さらに「奇応丸」「中将湯」「命の母」などが載っていました
「配置薬業の近代化」というページも。この販売方法はいつの時代まで続けられるんでしょうか
個人的に一番楽しかったのが「奈良のくすりめぐり」のスポット紹介記事です。もうほとんど行ってるんですけど、御所市に「三光丸クスリ資料館」という施設があるとか。いつか見にいきます!
■参考にさせていただきました
置き薬の歴史
薬と薬草/奈良県公式ホームページ
薬務課/奈良県公式ホームページ
■関連する記事