2011-09-07

『朱花の月』公開記念「河瀬直美」監督作品<予習編>

『朱花の月』公開記念「河瀬直美」監督作品<予習編>

河瀬直美監督の最新作『朱花(はねづ)の月』が公開されました。橿原市で行われたキャンペーンの模様と、河瀬作品の予習として過去の作品の観た感想を記しておきます。とても映画好きとは言えない私ですが、さすが「カンヌの申し子」と呼ばれる方だけあって、そのすごさは十分に感じられました!


三市町村のトップも登壇したキャンペーン

9月3日から全国公開になった、河瀬直美監督の最新作『朱花(はねづ)の月』。前日の2日には、奈良県内のイオン系ショッピングモール3ヶ所を巡る大キャンペーンが開催されると聞いたため、私たちも近場のイオンモール橿原アルルへ見学に行ってきました

私は熱心な映画ファンではありませんので、こんな間近に映画監督や俳優さんを見る機会は初めてです。まずは河瀬監督が、後から主演のこみずとうたさん(@tohtering)が登場しました。ほんの数ヶ月前には、カンヌ映画祭のレッドカーペットの上を歩いていた方たちなんですが、お二人とも奈良在住という親近感があるためか、かなり身近な存在に感じられるのが不思議でした。

また、この映画の撮影は、明日香村・高取町・橿原市の三市町村が舞台になっています。この日は、そのトップお三方が勢ぞろいで登壇するなど、行政側の気合も感じられました。これに絡めて出版された『極・飛鳥』というムック本の販売コーナーもあり、色々と頑張ってますね!


河瀬直美監督映画『朱花の月』-01

河瀬直美監督の最新作『朱花の月』。公開前日の、イオンモール橿原アルルでのキャンペーンを見に行ってみました。映画の舞台が明日香村・高取町・橿原市ということで、ゆるキャラ「あたかちゃん」が登場。この3市町村の頭文字をとって名付けられたという、この地域の共同キャラクターなのです

河瀬直美監督映画『朱花の月』-02
いただいたチラシとうちわ。チラシの石段は、奥飛鳥にある「飛鳥川上坐宇須多岐比売命神社(あすかかわかみにいますうすたきひめのみことじんじゃ)」。うちわのシーンが撮影されたのは、橿原市の藤原宮跡です。河瀬監督の映画は、奈良県内の見慣れた、そしてとても美しくて愛着のある場所が映しだされるのも魅力ですね

河瀬直美監督映画『朱花の月』-03
トークショーが始まりました。向かって右手の女性が、奈良在住の河瀬直美さんです。喋り方も雰囲気も、とても親しみやすい方ですね。中央のお三方は、何と明日香村・高取町・橿原市のトップの方たち!市町村長が勢ぞろいするなんて、気合の入り方が違いますね!

河瀬直美監督映画『朱花の月』-04
中央の方が、『朱花の月』主役の拓未役・こみずとうたさん。俳優オーラが出てますが、実は奈良市内で評判のカレー屋さん『とうたりんぐ(食べログ)』の店長さんだったりします。この後、アカペラで生歌も披露なさってました!多芸すぎます!

河瀬直美監督映画『朱花の月』-06
前売り券を購入し、河瀬直美さんとこみずとうたさんのサインもいただきました!こんなの生まれて初めての経験ですね(笑)


『極・飛鳥』の個人的な書評

極・飛鳥極・飛鳥
橿原高市広域行政事務組合

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奈良県の橿原市・高取町・明日香村の、いわゆる飛鳥エリアの3市町村が共同して商業誌を発売するという、珍しいムック本『極・飛鳥(きわみ・あすか)』。国の緊急雇用創出事業の1つとして企画されたそうで(飛鳥のPR誌「極・飛鳥」のお披露目イベントを開催 - 新文化|WEB本の雑誌)、著者名も「橿原高市広域行政事務組合」です。

この秋には、同地区を舞台に撮影された、河瀬直美監督作品「朱花(はねづ)の月」も公開され、行政も頑張ってプロモーションに励んでいます。

私はこのエリア在住のブロガーの端くれですから、すぐに購入しましたが、なかなか読み応えのある内容でした。ただし、かなり渋い(=地味)な内容なので、どこまで一般受けしてくれることやら…。例えば、冒頭近くのページでも、壺阪寺・久米寺・おふさ観音・飛鳥坐神社・岡寺などはまだ分かりやすい方で、光雲寺・保寿院などが各1ページ、その他にもなかなか名前を聞かない神社仏閣が多数掲載されていて、もう渋いとしか言いようがありません(笑)

中ほどのページからは、聖徳太子や中大兄皇子など、人にまつわる場所を辿っていく内容になり、これは分かりやすいですね。最後はエリア内のお店紹介にマップが掲載されていて、このエリアのガイド本としてはよくまとまっていると思います。全体的に、お寺や神社の比率が多すぎるような印象を受けますが、飛鳥エリアの最大の武器であり魅力ですし、行政サイドが無理やりひねり出した奇妙な企画を推すよりも、これでいくべきでしょうね。

個人的にも、まだ高取町エリアは行っていない場所が多いので、この本を片手にあれこれ歩いてみたいと思います。興味のある飛鳥ファンの方は、ぜひ書店で手にとってみてください!


自宅で「河瀬作品プチ映画祭」やりました

河瀬直美監督映画『朱花の月』-07
レンタルDVDショップ(TSUTAYAさん)の店頭で、河瀬直美さんの作品を探してみたところ、この3本が見つかりました。また、『沙羅双樹』は店頭にはありませんでしたが、オンラインレンタルできました


朱花の月』を映画館に観に行く前に、まずは河瀬直美監督の作品を復習することにしました。以前、BSで放送していた『萌の朱雀』は観ていましたが、それ以外の作品はまだ未見だったのです。

全体の感想としては、思っていた以上に良かったです!

実は私たちは、ここ何年もほとんどテレビドラマは観ていませんし、映画も派手なハリウッド製のものをたまに観るくらいです。気軽にドラマに親しむ習慣すら無い私たちが、重いテーマを扱った集中力を要する河瀬作品を観るのには不安もありましたが、そんな心配は全く不要でした。こんなに集中できたのは久しぶりですね。

河瀬監督の作品のほとんどが奈良を舞台にしていて、どこにでも居るような人たちを中心に、静かに静かにストーリーが進みます。見覚えがある奈良の風景がクリアに美しく、そして淋しげに、時には乱雑なまま映しだされることで、奈良の美しさが強調されているように思えてきます。この映像のパワーはすごいですね。奈良を愛する人間としては、これだけで観ておく価値はあると思います。

ただし、全員が全員、河瀬監督の世界観に引き込まれるわけではないでしょう。ドキュメンタリーのような独特の手法を使っているので、退屈で冗長と感じる方も少なくないと思います。しかし、観た人間の何割かを確実に熱中させるタイプの作品たちですから、ぜひ試しに観てみてください。


(※以下、それぞれの作品の感想を書いています。ネタバレになるような記述は避けているつもりですが、気になる方はご覧にならないようにしてください。)


全てが初々しい出世作『萌の朱雀』

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奈良を描き続ける河瀬直美監督が、1997年カンヌ国際映画祭で、日本人初のカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞し、世に出た作品『萌の朱雀』。奈良県西吉野村を舞台に、奈良県五條市と和歌山県新宮市を結ぶ「五新鉄道」の建設が中止になった頃の、その影響を受けた一家を描いています。

出演者は、國村隼さん以外はほとんど新人と素人ですし、みんなセリフも少なく、感情の起伏も抑えられていてボソボソッとしゃべります。奈良の山中を舞台にした、どこにでもあったような集落と家族が解体されていく様を、静かに静かに追っていきます。とにかく静かに、そして地味にストーリーが進みますので、この世界観が苦手な方は一切受け付けないかもしれませんね。

しかし、家族全員の飾らない(素人っぽい)演技は、不思議なリアリティーがあり、恋愛感情や不安、諦めなどが入り交じった感情たちが交錯する様が、肌感覚で伝わってきます。また、映像も奈良の田舎に行けばどこででも見られるような風景ですが、河瀬監督が切り取ると、風景そのものが意味を持ってきます。見慣れた映画ではなく、ドキュメンタリーに近い見せ方になっています。

同居するいとこ・栄介にほのかな恋心を寄せる「みちる(尾野真千子)」が特にいいですね。作品当時は中学生で、この後で「殯の森」にも主演、来季はNHK朝の連ドラの主役にも抜擢されるそうです。また、静かな孤独を表現した國村隼さんの存在感もさすがでした。

ちなみに、私たちはこの映画を観るのは2回目でしたが、1回目の時はウチの奥さんはストーリーが理解できなかったとか。それほど難しい設定でもありませんが、河瀬作品は説明的なセリフなどはほとんどなく、それを感じさせるシーンを積み重ねていきますので、迷子になりやすいかも。映画を観る前にあらすじなどを読んでおくのもいいかもしれませんね。

萌の朱雀 - 作品紹介§河瀨直美オフィシャルサイト 組画
萌の朱雀 - Wikipedia
萌の朱雀 - goo 映画


ならまちを舞台にした『沙羅双樹』

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ならまちを舞台に、街角にひっそりと息づく、静かな「生と死」を描いた作品『沙羅双樹』。色んな意味で、個人的に大好きな映画になりました。

ならまちで墨職人として、旧家に暮らす一家。地蔵盆の日、双子の少年の一人が突如「神隠し」に合います。5年の時が過ぎ、表面上は平穏を取り戻した一家ですが、そのすぐ隣には静かな死の空気があふれています。父親のセリフにある、「忘れていいことと、忘れたらあかんことと、それから、忘れなあかんこと」、これが混濁した状態で暮らしている様子が静かに描かれていきます。誤解を招く言い方かもしれませんが、一部の村上春樹さんの作品に通ずるテーマかもしれません。

生と死、明と暗、静と動など、あらゆる面での対比が上手く描かれています。安っぽい表現ですが、死が身近に存在するからこそ生が鮮やかに輝くんですね。静かなトーンでストーリーは進みますが、バサラ祭のシーンや出産シーンがより明るく輝いています。

父親役の生瀬勝久さんが、圧倒的な存在感!河瀬作品にしては珍しく、比較的饒舌なタイプの役どころですが、素晴らしいですね。この作品がデビュー作となる主人公の無口さと相まって、難しい親子関係が見事に描き出されています。もうこれだけでもグッと来ますね。ヒロインの母親役の樋口可南子さんもさすがですし、主人公の母親で妊娠中という難しい役は、河瀬監督自らが演じています。これもお見事。

ヒロイン(兵頭祐香さん)も初々しい新人を起用しています。セリフは多くないのですが、カメラに映るだけで胸が痛くなるような、少女らしい鋭利さが感じられます。また、出来すぎなほどの理想の幼なじみであり、理想の古都育ちの女の子に見えるのもいいですね。この子の存在自体が大きな萌えポイントであり、父と子の男同士の静かなやり取りもグッと来ますので、男性でも感情移入しやすいでしょう。

全編ならまちロケですから、奈良好きな方にとっては、ならまちの見慣れた風景が登場するのもいいですね。このシーンはどこで撮影されたのかと想像しているだけでも楽しめます。この映画が奈良で撮影されたのが、2002年の夏。私はまだ奈良に来ていませんでした。その当時の奈良の様子を慈しみながら、何度も観てみたくなる作品でした。


沙羅双樹 - 作品紹介§河瀨直美オフィシャルサイト 組画
沙羅双樹 - goo 映画


圧巻!静かなカタルシスを感じる『殯の森』

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2007年のカンヌ国際映画祭で「審査員特別大賞」を受賞した、河瀬直美監督の作品『殯(もがり)の森』。古い民家を改装したグループホームを舞台に、33年前に亡くなった妻の想い出を抱えて静かに暮らす認知症の老人と、不慮の事故で我が子を亡くした女性介護士の触れ合いを描いたヒューマンドラマです。

舞台は、奈良市田原地区。山深い土地に美しい茶畑が続き、他は田んぼと山ばかり。そんな何気なく見過ごしてしまいそうな田舎も、生まれ故郷の奈良にこだわり、奈良の美しい風景を切り取ってきた河瀬監督らしい、圧倒的な映像美でした。森の中で熊笹をかき分けて歩くシーンですら神々しく、禊を行っているような雰囲気すら感じられます。

狭い地域を舞台にした内容で、時間が淡々と進んでいきます。しかし、退屈するどころか、ずっと凛とした緊張感が感じられて、最後まで全くだれることがありませんでした。映画にエキストラとして登場する地元の方々はもちろん、主役に抜擢された「うだしげき」さんがすごいですね。とても、奈良の喫茶店のマスターだとは思えない存在感がありました。

冒頭から奈良の田舎で残っていた古式の葬送の列のシーンはありますが、この映画では誰も死にません。死者の気配だけが濃密に感じられます。しかし、人間の生と死という重いテーマを扱っていますが、ある意味では「ワケありの二人のロードムービー」でもあるでしょう。決して派手でも、分かりやすくもありませんが、静かなカタルシスがあります。

正直なところ、私はヒューマンドラマなんて全く興味はありませんでしたし、この映画のあらすじを見ただけでずっと敬遠してきました。しかし、いざ観終わってみると、「さすが」としか言いようがありません。河瀬監督の映像の力、そして奈良という土地の持つ力を全身で浴びたような、静かなインパクトのある映画でした。レンタルビデオ店にも並んでいると思いますので、奈良好きな方はぜひ手にとってみてください!


殯の森(もがりのもり)公式ホームページ
殯の森 - 作品紹介§河瀨直美オフィシャルサイト 組画
殯の森 - Wikipedia


長谷川京子さん主演の『七夜待』

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今回観た映画の中で、この作品だけは全く好きになれませんでした。ネタバレと酷評になりますので詳しくは書きませんが、主演の長谷川京子さんのファンの方はどうぞ。

七夜待 - 作品紹介§河瀨直美オフィシャルサイト 組画
七夜待 - goo 映画


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