2011-02-01

大津皇子のお墓参りに『二上山』へ登ってきました

大津皇子のお墓参りに『二上山』へ登ってきました

奈良と大阪のを隔て、古代から聖なる山として崇められてきた『二上山』。雄岳の山頂にある悲劇の皇子「大津皇子」のお墓参りをするため、久々に登ってきました。標高も500mほどのものですし、登山道もしっかりと整備されていますので、お手頃なハイキングコースでした。


聖なる山「ふたかみやま」へ

奈良県葛城市と大阪府太子町にまたがる「二上山(にじょうざん)」。金剛山地の北側に位置し、雄岳(517m)と雌岳(474m)が並びます。古くは「ふたかみやま」と呼ばれ、雄岳と雌岳の間に日が落ちる様子から、聖なる山として万葉の時代から崇められてきました



二上山は雄岳と雌岳よりなるトロイデ型火山です。約2000年前には噴火活動をしており石器の材料となるサヌカイト原石を噴出しました。大阪府はもとより近畿各地で発掘される石器のほとんどが二上山産のサヌカイトで作られたものと推定されています。二上山の南側には奈良飛鳥と難波を結ぶ古代の重要道路にあった竹ノ内街道が東西に走っています。また、付近には史跡も多く雄岳の頂上には天武天皇の皇子大津皇子の墓があります。
案内看板より


私は、この二上山の麓あたりに暮らしていますので、毎日のようにその姿を眺めています。以前は、屯鶴峯(どんづるぼう)側から二上山へ入る「ダイヤモンドトレール」というルートで登ったりもしていましたが、ここ数年はすっかり運動不足で、以前ほどの体力はありません。しかし、この日は相方が出かけていて私一人だったため、久々にチャレンジしてみることにしました。

この日は、車を「ふたかみパーク當麻」に停めて移動したため、二上神社近くの登山口から入りました。ここは二上神社口駅からも近くて便利でしょう。また、この他にも当麻寺駅から當麻寺・石光寺も含んだコースを取ることもできると思いますので、事前に調べておいてください。


二上山登山(大津皇子)@当麻の里-01

この日の二上山の様子。1月末にしては、日差しもあって暖かでした。雄岳と雌岳が並んで見えますが、その両方の山頂に立ってきます。なお、iPhoneで撮影した画像を使用するため、全て暗めに写っていますがご容赦ください

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-02
二上山の麓、二上山ふるさと公園前にある道の駅「ふたかみパーク當麻」に車を停めて出発します。二上山の登山口や、葛城の古刹・當麻寺からも近いため、駐車場はいつも混雑しています


雄岳山頂まで40分ほどのハイキングです

二上神社からの登山道は、ちゃんと整備されていてとても歩きやすいものでした。体力並レベルの私が写真などを撮りながら歩いて、雄岳山頂まで40分で到着。年配の方の姿も多かったですし、地元の小学生なども登るようなところですから、それほどの難易度ではありません。

簡単に注意点のようなものを挙げておきます。

・登山靴が必要なほどではありませんが、ちゃんと歩きやすい靴で
・電波が弱いiPhoneでは、山頂以外は通話不可能でした
・雄岳と雌岳の間にトイレなどがあります。売店もありますが、いつでも開いているわけではないので、飲料水と最低限の食料は事前に購入しておきましょう
・雄岳から雌岳へ向かうルートは道も細く、ややこしい分岐もありますのでご注意ください
・雄岳付近はほぼ視界が塞がっていますが、雌岳山頂からは奈良盆地が一望できます


二上山登山(大津皇子)@当麻の里-04

二上神社(倭文神社と掃守神社も合祀されています)の脇から登山道が始まります。二上山ふるさと公園からは1kmほど、二上神社口駅からは500mほどの距離です

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-05
登山道の入り口にはこんなフェンスが!冬の間は閉鎖されるのか・・・と思ってしまいましたが、これは「猪止め」だとか。手で開けて入り、しっかりと閉めて進みましょう。しかし、こんな人里近いところにも猪がいるんですね!

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-06
二上山登山の二上神社ルートは、ほとんどがこうして整備されています。動きやすい靴であれば、登山靴じゃなくても大丈夫でしょう。電波が弱いことで有名なiPhoneユーザーのため、携帯電話は山頂までほとんど使えませんでしたが、他のキャリアだったら通話可能なのかもしれません

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-07
雄岳を30分ほど登ったところから、少しだけ視界が開けています。ただし、冬以外の葉が茂る季節には、全く見通せないと思います。雄岳は山頂でも展望は良くありませんが、雌岳からは大和三山が一望できますので、絶景はそこまで我慢しましょう

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-13
二上山の雄岳山頂。標高517mで、運動不足の私が写真をとりながら登って40分程度で到着しました。山頂には葛木坐二上神社があるだけで、特に目立つものはありません

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-12
二上山の雄岳山頂にある「葛木坐二上神社」。豊布都霊神と大国魂神を祀っています。雌岳にもこれと対になる女神が祀られていたと考えられていますが、現在はありません。現在の社殿は、1974年の二上山大火で焼失し、1975年に再建されたものなのだそうです


二上山には「大津皇子」のお墓があります

二上山の雄岳山頂から、少しだけ雌岳側へ下ったところには、悲劇の皇子「大津皇子(おおつのみこ)」の墓があります。

ごく簡単に説明しておくと、天武天皇の第三子であった大津皇子は、人物的にも優れた人物でした。しかし、天武天皇が崩御して間もなく、謀反を企てたとして処刑されてしまいます。もはや真実は不明ですが、皇位を争う形となったライバル・草壁皇子の母は鵜野讃良皇后(後の持統天皇)であり、我が子を皇位につけたいがための策略だったという説もあります。この事件の後、処刑された大津皇子は別の土地に葬られましたが、そのたたりを恐れ、二上山へと埋葬し直されたのだそうです。

大津皇子の墓は宮内庁が管理していて、ひっそりと静まり返っていました。古代史に興味がある方は、ぜひお参りしてください。

また、大津皇子が二上山に葬られたとき、その姉・大来皇女が詠んだ歌が有名です。二上山はこんな場所だということを知っておくと、より神聖に思えてきますね。

●うつそみの人なる我や明日よりは 二上山を弟(いろせ)と我(あ)が見む


二上山登山(大津皇子)@当麻の里-08

雄岳の山頂のほんの少し手前にある「大津皇子御墓東一丁」の碑

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-09
大津皇子の墓所。ひっそりと静まり返っています

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-10
「天武天皇皇子大津皇子 二上山墓」とあり、ちゃんと宮内庁が管理しています

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-11
鳥居の向こうには、小さなこんもりとした丘状になっています。ここに大津皇子は葬られたとされています


雌岳山頂からは大和盆地が一望できます

二上山の雄岳から雌岳へは、細い道を伝って10分ほどです。途中にはトイレなどもありますし、雌岳山頂は大和盆地が見晴らせる素晴らしい展望で、ちょっとした公園のように整備されていますので(屋根付きの東屋もあります)、休憩などはこちらでどうぞ。

この日は寒くてのんびりしていられませんでしたが、やはり大和三山が見渡せる光景は美しいですね。三輪方面から遠くに二上山を見る機会は多いのですが、奈良盆地の端にあたる二上山山頂から見る風景はちょっと新鮮に感じました。


二上山登山(大津皇子)@当麻の里-14

二上山の雄岳山頂付近から見た雌岳。ほんの10分少々で行けますが、途中にかなり細い道があったり、分かりづらい分岐があったりしますので、くれぐれもお気をつけください

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-15
雌岳の手前の広場。雄岳から600m、雌岳から100mの位置にあります。屯鶴峯方面から来るダイヤモンドトレールのルートや、祐泉寺から来るルートもここに出ます。期間限定営業の売店や公衆トイレもあります

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-18
二上山の雌岳山頂の様子。真ん中に大きな円形のオブジェがありますが、これは日時計なんでしょうか?この周辺にはベンチなどもあり、休憩するには最適です。この日は寒すぎましたが、春のちょっとしたハイキングにいいですね

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-19
二上山の雌岳山頂からの眺め。大和盆地が一望できます。天香久山・畝傍山・耳成山の大和三山、大神神社のご神体・三輪山などが見渡せて、その向こうに鈴鹿山脈が連なります。大きく拓けている国見の気分ですね!

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-20
雌岳山頂にある万葉歌碑。「大坂をわか越え来れば二上に黄葉流る時雨ふりつつ(作者不詳)」

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-22
天台宗寺院「祐泉寺」。帰りは祐泉寺方面から下りました。しっかりと整備されていますので、苦も無くスイスイ下山できました


大津皇子の本当の墓?「鳥谷口古墳」

祐泉寺からさらに下って行くと、「鳥谷口古墳(とりたにぐちこふん)」という、やや地味な古墳が見えてきます。

一辺が約7.6m、古墳時代終末期(7世紀後半)の方墳などと説明がありますが、実はこここそが大津皇子が本当に埋葬された場所なのではないかという説もあるのだそうです。

●このページが参考になります
マガジン奈良歴史漫歩005号HTML版

この鳥谷口古墳が本当のお墓であるにしろ、伝えられてきたように二上山の雄岳山頂に葬られたにしろ、万葉人が西に見た二上山に大津皇子が眠っていることは間違いありません。ぜひ古代に思いを馳せながら歩いてみてください!


二上山登山(大津皇子)@当麻の里-23

祐泉寺から下山していく途中にある「鳥谷口古墳」。小さな丘の上に石棺があるだけの、奈良県内のどこにでもありそうな古墳です。しかし、「大津皇子が本当に葬られたのはここ鳥谷口古墳である」という説もありますので、万葉ファン必見でしょう

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-24
鳥谷口古墳「この古墳は約1300年前に築造された、一辺が約7.6mの方墳です。墓室は横口式石槨という構造で、南側に開口部があり、二上山産出の凝灰岩が使用されています。また、底石や北側の側壁には家形石棺の蓋石の未製品を利用するなど、特異な石槨の構造となっています」時代:古墳時代終末期(7世紀後半)

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-25
鳥谷口古墳の石槨部分。後から補修してあると思われますが、ちょっと古墳とは思えない雰囲気ですね

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-26
石槨の前にはお花が飾ってあり、きれいな状態に保たれていました。ここに本当に大津皇子が葬られたかどうかは分かりませんが、安らかに眠っていることを祈ります。古代史や万葉集、死者の書などに興味がある方はぜひお参りしてください

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-27
鳥谷口古墳から少し下ったところにある道しるべ。當麻寺・石光寺・當麻山口神社・二上山登山口に、へらつりの釣り堀まであって、かなりのカオスです!健脚の方は、二上山登山も含めて全て一日で回れるでしょう

二上山登山(大津皇子)@当麻の里-28
この近くにある「傘堂(かさどう)」。今から三百年以上前の建築物で、柱一本で宝形造りの瓦屋根を支えるという、他に類を見ない変わったものです。かなり地味ですがお見逃しなく!



大きな地図で見る

※二上山登山をしたのは「2011年1月22日」です






  • Twitterでフォローする
  • Facebookページを見る
  • Instagramを見る
  • ブログ記事の一覧を見る







メニューを表示
ページトップへ