旅に出たくなる写真漫画が単行本化『アンギャマン』
「ニートの青年が、大阪から伊勢まで神社仏閣を巡りながら徒歩で旅する」という漫画『アンギャマン リアル遠足伊勢巡礼編』が発売となりました。
「スカラムーシュ」というサイトで公開している無料のWeb漫画がベースとなっていて、「旅に出たい!」とそそられるんですよね。奈良の神社仏閣もたくさん登場していますので、徒歩巡礼・貧乏旅行などに興味のある方にオススメです!
無料のWebコミック「リアル遠足」
私はほとんど漫画は読みませんが、ここ最近、「スカラムーシュ」というサイトで連載されている無料のWebコミック紀行文「リアル遠足」のシリーズの大ファンになりました。
作者の左剛蔵さんは、大阪在住の漫画家志望のニート(今はもう作家さんです)です。
この「リアル遠足」というシリーズは、大阪の自宅から飛鳥、高野山、吉野、伊勢、天橋立などの目的地を目指して、自分の足だけで野宿しながら旅をする・・・という企画です。一つの旅を終えると、万歩計は30万歩(!)を超えるという距離を、何日もかけて歩き続けるのですから、とても常人が真似できるようなものではありません。
旅の資金に余裕があるはずも無く、さらにベジタリアンであるため、旅先の名産品を食べたりもしません。宿泊施設を利用するどころか、全てテント泊です。ただ目的地を目指して、その道中にある寺社仏閣などを辿りながら、民家を避けるように険しい道を選びながら先へ進むのみ。
その姿は、まるでストイックな「巡礼者」のようです。
その内容をWebコミック(=漫画)として公開しているのですが、その表現方法は独特で、「背景には、作者がリアル遠足の最中に撮影した実際の写真を使い、そこに登場人物を書き込む」という、ちょっと珍しい手法をとっているのです。
漫画には詳しくありませんので、細かいことは分かりませんが、この手法はとても斬新でした。言葉では分かりづらいと思いますので、実際の作品を何ページ分かご覧ください。
(※作者さんから転載の許可をいただいてあります)
貧乏な徒歩巡礼の漫画が単行本に!
そんな作者さんのメジャーデビュー作となったのが、先日発売された、フルカラーで300ページ強の単行本「アンギャマン リアル遠足伊勢巡礼編」です。
2008年11月に、大阪府の八尾近辺から伊勢神宮(ゴール地点は夫婦岩)まで、約130kmの距離を6日かけて歩き続けたリアル遠足を収録しています(ちなみに、四国八十八ヶ所巡礼の総距離は「約1,300km」とのことですので、ちょうどその10分の1)。
道中では、もちろん奈良を横断しています。法隆寺・長谷寺・室生寺などと、その周辺の寺社に立ち寄っており、背景の写真にはお馴染みのお寺が登場したりするのも楽しいですね。
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心の栄養を欲するアナタへ。大人気ブログ写真漫画がついに単行本化!!
貧乏な徒歩巡礼者=アンギャマン!!
大阪~伊勢の巡礼漫画に加え、貧乏徒歩巡礼のコツ&コボレ話を描き下ろし!!大阪から伊勢へ、ほぼ金を遣わずテントを担ぎ、途上にある神社仏閣にかたっぱしから参拝する。そんなストイックな旅をライフワークとする筆者。
彼の静かな旅を記録したブログ写真漫画は静かな人気を呼び、ついに単行本化された。
日頃から消しがたいストレスをかかえた人に是非!!<単行本の帯より>
(『アンギャマン リアル遠足伊勢巡礼編』より一部抜粋)
強烈な「旅への誘惑」に駆られます
本書の中にもありましたが、貧乏な徒歩巡礼の旅はどう考えても楽しいばかりではありません。歩いて、お参りして、簡単な食事をして、野宿して、また歩く。その繰り返しであり、とても普通の人間が真似できる旅では無いでしょう。
しかし、リアル遠足は決して味気ないものではありません。作者さんが事前に調べておいた、途中にあるあまり目立たないお寺や小さな遺跡に立ち寄るのはもちろん、通りすがりに見つけた小さな神社などにも足を伸ばし、新たな発見を繰り返していきます。車や電車や自転車で通り過ぎるだけでは見つからない、歩き旅ならではの醍醐味ですね。
とはいえ、旅のご褒美といえるようなものはそのくらいのもの。後はひたすらストイックに歩くのみで、神社仏閣以外の観光地には立ち寄ったりしませんし、美味しいものも食べません。どう考えてもメリットの少ない勝負だと思います(笑)
私は作者さんと同じく関西在住ですし、お寺などを巡るのも大好きですから、初めてリアル遠足を読んだ時には、本当に夢中になりました。私がまだ大学生だった頃、沢木耕太郎さんの有名な紀行文『深夜特急』を初めて読んだ時と同じくらい、強烈な「旅への誘惑」に駆られたのです。
「カネは無くても旅は出来る。カネは無くても刺激は味わえる。」そんなことを思い出させてくれたんですよね。
決して「安・近・短」とは言えませんし、作者のように・・・とまではいかないものの、同じような旅をして、それに近い興奮を味わうことが出来るのではないだろうか?そう思わせるだけの身近さがあり、魅力があるのです。
もちろん、何日も仕事を投げ出して旅をすることはもう私には不可能です。でも、それを分かっていながら、今すぐにでも旅に出かけたくなる、そんな気分にさせてくれるだけの熱量が感じられ、何回読み直してもワクワクさせてくれました。
徒歩巡礼に興味のある方や、雑誌「ビーパル」などでお馴染みのシェルパ斉藤さんのファンの方などには、特にオススメですね。
作者さんのホームページ「スカラムーシュ」では、この伊勢への旅も含めて、他の旅も公開されていますので、ぜひご覧ください(トップページの「ログ」から過去のリアル遠足が読めます)。
また、パソコンの画面で眺めるのもいいですが、本になると味わいが違います。移動の電車の中や布団の中で読んでいると、「旅に出たい!」という欲求がムクムクと湧いてきますので、刺激の欲しい夜のお供に「アンギャマン」をどうぞ!
フルカラー300ページのボリューム!
この出版不況と言われる昨今、こんな無名の作者さんの企画を、しかもフルカラーで300ページを超えるような本の出版を決定した「株式会社エンターブレイン」さんもスゴイと思います。ファンの一人として感謝したいですね。
また、ジャンル分けが難しく、書店によっては漫画コーナーにあったり、アウトドアやブログ本コーナーなど、本屋さんとしても売り場に困る作品だと思いますので、お探しの際には店員さんに「アンギャマン」という書名を告げるのが早道だと思いますので、ぜひ探してみてください。
また、ここで言ってても仕方ないことですが、とても「ヴィレッジヴァンガード」さん向きの本だと思いますので、特に関西の店舗のバイヤーさんは平台に積んでみて欲しいですね(笑)
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