『奈良女子大学記念館』をディープに探索 @奈良ひとまち大学
奈良市の「奈良ひとまち大学」さんの授業「奈良が誇る美しい近代建築 ~奈良女子大学記念館をディープに探索~」に参加してきました。国の重要文化財にも登録された近代建築『奈良女子大学記念館(旧本館)』を舞台に、建物の改修工事にも深くかかわられた、奈良女子大学の名誉教授・上野邦一先生の解説付きで、その裏側まで拝見できました。楽しくためになる授業をありがとうございました!
美しい近代洋風建築を隅々まで!
奈良市を舞台にさまざまな授業を開催している『奈良ひとまち大学』さん。普段は立ち入れない施設の裏側などが拝見できたり、しかも専門家の解説付きだったりと、興味深いカリキュラムが開催され、私たちも何度も参加させていただいてます。
3月26日(土)に開催された「奈良が誇る美しい近代建築 ~奈良女子大学記念館をディープに探索~」は、奈良には珍しい、近代の”純洋風建築”である『奈良女子大学記念館(旧本館)』の裏側まで拝見できるというもの。
以前の特別公開の際に、この建物の美しさに魅了されていた私たちは、すぐに応募して、見事に当選!この日を楽しみにしていました。
「奈良女子大記念館」は、1909年に竣工し、国の重要文化財にも登録されています。1994年に大きな改修工事が行われ、さらについ先日まで耐震工事が行われていたというタイミングで、その工事にも深くかかわられた、奈良女子大学の名誉教授・上野邦一先生の解説付きで拝見できるという、とても貴重な機会でした。
歴史的な説明などは省きますが、この日は普段は立ち入れない空調室まで拝見できたり、とにかく楽しかったです!
近鉄奈良駅の北側に広がる「きたまち」エリアに建つ『奈良女子大学記念館』。通常は非公開で、春に定期的に一般公開されています。奈良女子大の校内には何度か立ち入っていますが(用事があれば問題ありません)、女子大とわかっているだけにいつも緊張します(笑)
正面玄関部分。1909年に竣工し、設計は、明治から大正にかけて活躍した建築家・山本治兵衛(Wikipedia)。なお、屋根中央に見える「塔屋(とうおく)」は、本来は鐘などを吊るすためのものですが、その形跡は一切見当たらないとか。デザインのためだけに作られたと考えられるそうです
2階へ続く階段部分の雰囲気が素晴らしいですね!現代は効率優先ですから、廊下のすみに照明を置いたりすることも少なくなりました。陰影のバランスが絶妙です
2階部分は、広々とした講堂です。この部屋に一歩足を踏み入れると、抜け感があります。中央部分の天井を折り上げていてより広々と見せています。また、これだけ広い室内ですが、フロア部分には柱がありません。屋根を支える構造が「木造トラス」のため、これだけの大空間を確保できているのだとか
天井の折り上げ部分。シャンデリアの飾り部分などは通気口にもなっています。半円形の小窓は、明かり採りと通気口ですが、空調設備を整えたことで役割が変わったりしているとか。横方向の梁の上部には天井に向いて照明がつけられていて、間接照明の役割を果たしています
味のある長椅子。8割くらいは当時のものがのこっているとか!講堂は、大学院の入学式・卒業式のほか、さまざま活動の場として使用されています。こんな素晴らしい環境で学生生活を送れるなんて羨ましいかぎりです!
この日の「奈良ひとまち大学」の授業では、名誉教授・上野邦一先生の解説をいただきながら校内をぐるりとまわった後、講堂でスライドを見ながら講義を受ける、というスタイルでした。この建物の修復にも中心的にかかわった方だけに、貴重なエピソードがたくさん伺えました
1階部分の「元応接室」を拝見したり……
こちらは「元食堂兼会議室」だったお部屋です。テレビドラマのセットのようですね!
こちらは「元校長室」だった部屋。現在は「空調室」となっていて、巨大な機械がどーんと鎮座しています。天井の飾り文様との対比がすごい!この部屋はもちろん一般公開していません。こういうところまで拝見できたりするのが、こういうイベントの楽しみですね!
床暖房の「5cm」を巡る繊細な調整
授業の後半は、講堂でスライドを拝見しながらの座学です。
上野先生から、この建物の歴史について、また1994年に行われた大規模な改修工事のお話などを伺ったのですが、これが本当に興味深かったです。
2階の「講堂」には、足元に床暖房を設置したため、床が以前よりも5cmほど高くなりました。この5cmの段差にあわせて、踊り場部分の床も5cm持ち上げています。最後の一段だけ5cm高いと危ないため、階段の高さを微調整して徐々に吸収するように作りなおしたのだそうです。
また、この際に空調設備を整えたり、踊り場に梁を加えて補強したりと、教えていただければ絶対に気づかない変化がたくさんあったことがわかりました。
後半は、スライドを用いて。江戸時代の地図や古い写真などを用い、奈良女子大学記念館がどういう歴史をたどってきたのかを解説していただきました
こんな見取り図も登場しました!授業をご担当くださった上野先生、そしてスタッフの皆さん、本当にありがとうございました!
和の影響が見当たらない完全な洋風建築
また、個人的に気になっていたのが、「奈良女子大学記念館には、和洋折衷の痕跡はあるのか?」という点でした。
奈良に現存する近代建築は、その多くが「和洋折衷」で作られています。明治初頭に、奈良国立博物館の旧本館(現:なら仏像館)が作られた際に、古都の中心部に洋風建築が建つのは雰囲気にそぐわないと、批判の声も多かったため、奈良では和のテイストを加えた建築が主流となりました。
しかし、この奈良女子大記念館は、和の影響をまったく受けていない、完全なる洋風建築なのだそうです!
天井の折り上げ方を見たりすると、社寺建築と似ていると思ったりもしますし、館内の装飾文様にも和を感じたりもしますが、それもすべてが洋風であり、和を取り入れたものではないのだとか。当時の状況を考えると、かなり思い切った選択ですよね。
奈良女には「佐保会館」もあります
授業の後は、校内を散策してみました。奈良女子大学記念館の裏側(西側)から眺めると、大きな池にその姿が映り、どこかの宮殿に見えますね!
また、同じく奈良女子大の校内に建つ、貴重な近代建築「佐保会館」も外観だけ拝見できました。1928年に建てられた、奈良女子高等師範学校・奈良女子大学の同窓会会館で、2005年に国の登録有形文化財に登録、2007年に耐震補強の大規模な修理が行われました
木造建築ですが、ところどころに洋風を取り入れた印象があります。こちらもいつか拝見してみたいですね
奈良女子大学記念館は、国の需要文化財に登録されていますが、この「守衛室」も合わせて重文です(正門は後に建て替えられているため「附」として登録されています)。小さな愛らしい建物ですが、今も現役。いつまでも伝わってほしいですね
奈良女子大学の向かいにある「旧鍋屋交番 きたまち案内所(奈良市きたまち鍋屋観光案内所)」。旧鍋屋交番の建物を利用した観光案内施設です。ある意味では奈良らしくない洋風デザインですが、この一角にはよく馴染んでいますね
奈良女の校庭で草をはむ鹿。ライバルも少なく、追いかけ回す観光客もいないので、堂々たるものでした(笑)
■奈良女子大学
HP: http://www.nara-wu.ac.jp/
住所: 奈良県奈良市北魚屋西町
電話: 0742-50-3220(総務・企画課)
駐車場: なし(駅付近の有料駐車場を利用)
アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩5分ほど
※「奈良女子大学記念館」は通常は非公開です。春などに期間限定で一般公開されています
※実際に授業に参加したのは「2016年3月25日」でした
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