伝統的な建物+現代アート!『今井町エリア』@はならぁと2015
中世の古い町並みが遺されている「今井町エリア」で『奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015』が開催中です(11月3日(祝)まで)。貴重な重文の建築物や、丁寧に整備された町家、朽ち果てそうな古い民家などを舞台に、さまざまなアート作品が展示されています。普段は入れないところも多いので、この機会にぜひ!町並みを歩いているだけでも楽しめます!
中世の建物が遺る「今井町」の町並み
歴史的な町家・町並みを活用してアート作品を展示する『奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015』(Twitter・Facebook)。
ボランティアが中心の実行委員会が、県の補助や企業の協賛を受けて運営しており、2014年は約4.5万人が足を運ぶイベントに成長しました。これをきっかけとして、空き町家約30件が店舗や住居として再活用されるなど、街の活性化にも大きな役割を果たしています。
今年も各エリアの展示を見てきていますが、夫婦して本当に楽しませてもらってます。江戸時代から続く歴史ある建築物だったり、昭和に建てられた朽ち果てようとしていた古い民家だったり、普段は中に立ち入ることができない建物へ入れるのが楽しいですね。
この日は、橿原市の「今井町エリア」へ行ってきました(2015年10月24日~11月3日)。奈良には「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された場所は他にもありますが、その中でも古い町並みがもっともよく遺されている場所です。歩いているだけで不思議な気分になれますよ!
橿原市・今井町の通り。美しい格子の家が立ち並び、虫籠窓や卯建など、まるで中世にタイムスリップしたような気分になります。今井町内の一部では、すでに電線などの地中埋設工事が完了していますので、空が広く感じます。他の観光地もこの動きに続いて欲しいですね
<バッチ提示>作法のためのリマインダ @元トウネ精米工場
今井町エリアで開催されている、有料(缶バッチが必要)のキュレーター会場が「作法のためのリマインダ at 元トウネ精米工場」です。
今井町の真ん中に精米工場があったというのも不思議なものですが、外観と内部の倉庫っぽさのアンバランスさが楽しい建物でした。精米に使っていた機械類の痕跡があったり、むき出しの木材とトタンの素っ気ない表情だったり、私が持つ今井町のイメージとはかけ離れているのがいいですね。
ここでは、4名の作家さんの作品が展示されています。パッと見てまったく意味の分からないものもありますが、それぞれとても面白かったです。頭上にカメラが走行していたりしますよ!
有料エリアですので、写真少なめで一部だけご紹介しておきます。
今井町エリアの「元トウネ精米工場」。いつごろの建物かは分かりませんが、昭和くらいにだいぶ手を加えて工場らしくしていたのでしょう。これまでこの前の通りは何度も通っていましたが、この建物にはまったく気づきませんでした
作法のためのリマインダ @中野町家
それと同じキュレーターさんが手がけている無料会場が「中野町家」です。「作法のためのリマインダ」と題して、元トウネ精米工場で展示されているものを体験できたりします
建物の中に入ると、土間にかまどがあるような古い民家です。なぜか柱に陀羅尼助の包装紙が貼ってありました(笑)。資料によると、ここは明治時代の建築で、現在売りに出されています。利用するためにはかなりの改修が必要だと思いますが、内容によっては補助金も出るとか。活用に繋がるといいですね
かまどの後ろの壁に貼ってあった「火の用心」の紙たち。毎年配っていたもので、ずっと並べて貼っていたんですね。そこらのちょっとしたアートよりもアートです!
奈良墨染め布の世界 @本町恒岡町家
時間が足りずに、今井町エリア全体の半分くらいしか見られませんでしたが、その中で特に良かったのが、タラマンさんが本町恒岡町家で行っていた「奈良墨染め布の世界」です。建物も作品も、雰囲気があって素晴らしかったです!
本町恒岡町家に入ってすぐの部屋。奈良が発祥の奈良墨を使って、布を染めていらっしゃるとか。ほのかに墨の香りが感じられて、とても心地いい空間でした
奥の間には囲炉裏もしつらえてあります。この建物は、ほんのすこし前まで某メーカーのショールームのような使われ方をしていたため、内部はしっかりとリノベーションされています。はならぁと期間中は、ここカフェとして営業もしていますので、風情を味わいながらのんびりしてみてください
室内からお庭を眺めたところ。建物の持つ雰囲気に、奈良墨染め布がニュアンスを加えていて、本当に素敵でした。住みたくなりますね
ちょっと分かりづらいですが、この欄間には、たくさんの「亀」が彫られています!大きな亀1匹ではなく、たくさんいるのが珍しいですね。ちなみに、2階にはこれと同様に「鶴」の欄間があります。いい贅の尽くし方ですね!
2階では、奈良墨染め布を蚊帳として「映画館」(有料)として利用できるようになっていました。アイディアがすごいですね。2階からの今井町の眺めも素晴らしいですし、ぜひ立ち寄ってみてください
中尾美園さん「みらいの欠片」@細川町家
また、中尾美園さんが細川町家で行っていた「みらいの欠片」という展示も好みでした。大正から昭和初期にかけての二軒長屋(隣とつながった長屋形式の家)で、後にいろいろと手が加えられています
建物に入ってすぐ、「収去物図」と題した巻物のようなものが置かれています。これはこの建物の傷んだ畳や内装などをはがしていった際に、どんなものがあったのかというもの記録したもの。フローリングの柄から庭の植物まで、美しく描かれています
ビニール素材の上敷きや、ボロボロになったピクニックシートまで使ってあったとか!この家に遺された記憶の痕跡をたどることで、タイトルのような「みらいの欠片」が見つかるのかもしれません
むき出しとなった床板に置かれた苔玉。不思議な形の陶器、背後の木枠(もともと神棚だったものだとか)など、どこかしら神性を感じます
通り土間から庭へ抜ける場所。日本家屋らしい陰影が美しいですね
カメラのマツモトさん @景観支援センター
ここからは、観てきた展示を順番にご紹介していきます。景観支援センターでは、カメラのマツモトさんの写真作品の展示がありました。巨樹の写真を大判にプリントアウトした作品たち。ふすまよりも大きな写真作品は迫力があります!2階には今井町の今と昔の景観を比較したパネル展示などもあります
重要文化財「旧米谷家住宅」も会場に
重要文化財に指定されている「旧米谷家住宅」では、Ms &Mr シュウさんの「森に消えた子供たちから町に消えた子どもたちへ」。そして、喜田恭臣さんの「名残」という作品を拝見しました。重厚な日本家屋に端正な作品たち。素敵な雰囲気でした
「大工町筋河合町家」では3名の作品が
「大工町筋河合町家」では、3名の異なるタイプの作家さんの作品が展示されていました。この建物は、外壁にコンクリートのようなものが用いられていたり、やや独特です。玄関はアルミ製のものになっていたりしますが、奥には蔵もある立派な建物です
大村直子さんの「時空~ a space - time continuum」という作品。高い天井を活かした作品あり、不思議なオブジェあり
蔵で展示されているのは、竹本亜典さんの「ここと似た何処か」。油絵で家を描いた力強い作品たち。蔵とも馴染んでいて、観ていて不思議な気分にさせられます
入ってすぐの場所に展示されていた、顕在家はるさんの「ZINE(小冊子)で表現する今井の世界」という作品。今井町の風景を撮影し、小冊子としてまとめています
めえめえ牧場の羊たち、今年も来てます!
昨年に続いて、今年も「羊プロジェクト 山添村めえめえ牧場と子供たち」が開催されています。JR桜井(万葉まほろば)線の土手を羊たちに除草してもらうのと同時に、子どもたちが羊毛を使って作った作品なども展示されています
とはいえ、2頭の羊がいたのですが、もうすでに雑草はほとんど食べ尽くしてしまって、口寂しそうにしていました。「草が無くなったら終了」というような但し書きがあったので、ひょっとしたら早めにお役御免になるかも?
■奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015
HP: http://hanarart.jp/
Twitter: @HANARART
Facebook: https://www.facebook.com/hanarart
・はならぁと ぷらす
会場: 五條新町、生駒宝山寺参道
会期: 2015年10月10日(土)~ 10月18日(日)
・はならぁと こあ
会場: 宇陀松山、八木札の辻、今井町
会期: 2015年10月24日(土)~ 11月3日(火祝)
■今井町│奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2015
詳細: http://hanarart.jp/2015/imaicho
駐車場: インフォメーション(今井まちづくりセンター)でアンケートに記入すると無料券がもらえます
アクセス: 近鉄「八木西口駅」から徒歩3分ほど
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