ちょぼくブック発刊記念!『吉野貯木まちあるき』@吉野町
吉野町の製材所が集まる「吉野貯木」エリアの魅力を伝える無料冊子「ちょぼくブック」。その発刊を記念して開催された『第3回 吉野貯木まちあるき』に参加してきました。普段はほぼ近づかない特殊なエリアだけに、見るものすべてが物珍しいんですね。見慣れた奈良とはまた違った面が観られて、とても楽しかったです!
最盛期は110軒の製材所があった吉野貯木
2014年3月29日に開催された町歩きイベント『第3回 吉野貯木まちあるき』に参加してきました。
吉野杉の産地として栄えた吉野町ですが、江戸時代から昭和初期まで、木材を切り出して流すだけの薄利な状態が長く続いていました。奈良県内で吉野杉の加工や流通を担うことを目的として、1939年、地元の製材所などが流通・製材の拠点としたのが「吉野貯木」です。
吉野山の入口となる「吉野神宮駅」の西側エリアにあり、最盛期には110軒もの製材所があったとか。しかし、安価な輸入材などに押され、現在ではその数を38軒まで減らしているのだそうです。
そこで、製材関係者などで作る「Re:吉野と暮らす会」の皆さんを中心として、無料冊子「ちょぼくブック」が発刊され、吉野貯木を説明付きで歩ける記念イベントが開催されたのです。
(この記事に詳しいです「【MSN産経ニュース】吉野林業の魅力発信 拠点案内の無料本「ちょぼくブック」発行へ 奈良」)
第3回目の開催となった「吉野貯木まちあるき」。無料冊子「ちょぼくブック」の発刊を記念して行われました。2000部限定。吉野町役場などへ問い合わせれば、まだ入手可能かもしれません
この可愛らしいのぼりが参加施設の目印です。製材所の屋根にある煙突がモチーフです。いいデザイン!
11時からのオープニング式では、吉野町長も登場!町の職員さんたちを(この日だけの)吉野杉課に任命する式などが行われました。一般参加者は100人を超える大盛況だったようです!
吉野の杉や檜を扱う、林業の中心地です
この日の「吉野貯木まちあるき」は、【1】午前中はフリー 【2】13時から案内を聞きながらエリアを散策 【3】1軒を説明を受けながらじっくり見学(希望者のみ)、という3分構成になっていました。
私たちは、それなりに奈良県内のあちこちをウロウロしてきましたが、このエリアを歩くのはもちろん初めてです。最初に自由に歩いて雰囲気を味わって、後から作業場の内部まで見学できるというのは、順番的にも嬉しかったです。
写真をご覧いただければ雰囲気は伝わると思いますが、とにかくここまで材木関係の業者が集まった場所となると、一般人は立ち入る機会すらないでしょう。見るものすべてが珍しく、興味深いものばかりでした。
午前中は、フリーで街歩きです。電信柱の所在表示が「チョボク」です。貯木のイメージというと、水上に丸太を浮かべてその上を職人さんが器用に歩く……という感じですが、昔は木材を浮かべておく大きな「水中貯木場」が3つもあったとか。現在は埋め立てられ、製材所が建っています
高台から見下ろしたとある製材所。独特の形をした煙突がシンボルです。町のいたるところで目にしました
こんな製材所が並んでいます。こんな場所もあるんですね。これまで知らなかった奈良の風景が見られる貴重な機会になりました
青空と材木と煙突
歴史を感じる木造の可愛らしい建物
ただの倉庫。北陸育ちの私には珍しい作りの建物ですが、生まれも育ちも奈良中部のウチの奥さんには、どこか見覚えのある懐かしい光景なのだとか
木造の建物の隣の作業スペースには、屋根がかかっています
桝井製材所さんの建物。倉庫の前には銘木がいっぱい!懐かしい感じのタイルとガラスもいいですね
阪口製材所さんの、吉野の木を使用したモデルハウス2棟の内部も見学。モダンです!阪口さんのところの元気のいいご兄弟に案内してもらいました(笑)
メイン会場となっていた、福田製材所さんの木造倉庫。屋台などが登場していて、しいたけ飯やウィンナー、ビールにこんにゃくなど、あれこれといただきました!
木造倉庫の屋根。周りに壁などはなく、足元も砂地です。こういう木造建築はかっこいいですね!
製材所の中の見学も。引き込み線跡なども
午後からは、4つのエリアに分かれての「地区別見学」と、希望者は1軒をじっくりと拝見できる「じっくり説明付き見学」が行われました。
素人目には見分けが付きませんが、吉野貯木の製材所は、それぞれ得意な作業分野があったり、扱う木が違ったり、専門化されたプロの集まりなのだとか。詳細は省きますが、普通に歩いていたのでは絶対に分からない、とても興味深いお話の連続でした!
世の中のニーズに合わせて、製材所の作業内容も変わってきていますし、それとともに町の様子も変化しています。配られたマップには、古い時代の吉野貯木の写真なども掲載されていて、昔の姿を想像しながらの町歩きは、とても楽しかったです。
「地区別見学」では、貯木を4つのエリアに分けて、ガイドしてもらいながらの町歩きです。何箇所かの製材所で、お話を伺いながら現場見学させてもらえました
道路の脇にあったちょっとした鉄骨。これは吉野貯木にあった引き込み線の線路を再利用したものだとか。廃止の時に払い下げられ、材木を止める柱などに使用されています。このエリアのいたるところで見かけました
こちらは坂本商店さんの製材所内。寺社仏閣に収める銘木も手がけていて、八角形に整えた木もありました。頭上を通る配管なども独特で、工場萌えに近い驚きがありますね!
移動して、自動でラインを流れる材木たちを見学したり
吉野材を使用したiPhoneケースなどを制作している、丸商店さんの作業場でお話を伺ったり
坂本林業さんの巨大作業場を見学したり、そこで製材の機械を操作させていただいたり
製材所の一角で、職人さんが黙々と作業なさっていました。お話によると、この方は檜(ひのき)の皮を剥く作業を行う専門の方で、神社の屋根を葺く「檜皮葺(ひわだぶき)」の素材となるのだとか!
慣れた手つきで次々に檜皮を外していきます。フリーランスのような形態で作業なさっていて、檜の皮を剥いてもらう・檜皮を販売させてもらうという、双方にメリットのある契約になっているのだとか。これが奈良の社寺の屋根を護るのかと思うと感動しますね!
15時半からの「じっくり説明付き見学」では、「樽丸くりやま」さんで、手作業で樽を作っている作業を拝見しました。壁にかけてあるような独特の刃物と、「ハラアテ」という道具を使って、手早く木を削っていきます。素早く正確!希望者には体験もさせてもらえました
これが樽を組んだところ。釘などは使用しませんから、とめてある部分をカットすると……
一瞬でバラバラになります!吉野材を使用した樽は、やはり味が違うのだとか。吉野杉の樽酒は、吉野町・美吉野醸造さん、兵庫・菊正宗さんが作っていて、吉野の梅谷醸造元「宮滝醤油」さんでも使用されているそうです
大量の木材が集まる姿は美しいです
そんな楽しい一日をダイジェストでお伝えしましたが、とにかく見るものすべてが物珍しくて、本当に楽しかったです。また、無料冊子「ちょぼくブック」を読んだ後だと、そこに暮らす人々の姿に近づけるようで、より親しみが湧くと思いますので、ぜひ手に入れてみてください。
また、観光客として吉野貯木を自由に歩いてみて欲しいと思いますが、大きなトラックが木材を乗せて走っているような、やや荒っぽい場所です。交通などに注意して、他では見られない奈良の一面を散策してみてください!
吉野貯木の東側にある「美吉野グラウンド」。原木市の会場になり、ここで競りなどが行われます。広大!
大量の材木が積まれていて、貯木の町だということが実感できますね。ちなみにその昔、ここは本当の運動用グラウンドでしたが、それを潰して現在のように転用したそうです。今だったら考えられないことですよね(笑)
ローマ時代の建築物のような「水門」の跡。小さな川にかかっている、その名も「材木橋」のところにあります。昔はここに水をためて材木を浮かせたりしていたのだとか
まだまだ現役の、近鉄吉野線の橋脚。レンガ造りの渋い造りです
大量の木材が集まっている様子というのは、それだけでとても美しいですね。そんな写真を何枚も撮ってきましたので、最後にまとめてご紹介しておきます
■第3回 吉野貯木まちあるき
HP: http://yoshinochoboku.okoshi-yasu.net/
Facebook: Re:吉野と暮らす会
場所: 奈良県吉野町 吉野貯木内
開催日: 2014年3月29日(土)
※吉野貯木エリアは、「吉野神宮駅」の近くです。駅の東側すぐには有料駐車場もあります。
※吉野町自らが通販サイト「吉野sg |」を運営するなど、吉野町ではユニークな活動を続けています。ぜひご注目あれ!
■参考にさせていただきました