2011-10-06

般若寺近くの『北山十八間戸』『夕日地蔵』@奈良坂

般若寺近くの『北山十八間戸』『夕日地蔵』@奈良坂

奈良から南山城へ向かう「奈良坂」。コスモスで有名な「般若寺」などだけではなく、まだ貴重な建築物などが遺されています。この日は、今までなかなか行けなかった『北山十八間戸』『夕日地蔵』と、その付近にある廃墟化したレンガ造りの建物『旧奈良市水道計量器室』を見てきました。


忍性が建てた福祉施設『北山十八間戸』

奈良と南山城を隔てる平城山(ならやま)を超える「奈良坂」。時代によって変遷してきましたが、般若寺町から奈良坂町を抜けていく道(754号)に地名として残っています。コスモス寺として有名な「般若寺」(紹介記事)の一帯といえば分かりやすいかもしれません。

この日は自転車で移動していたので、以前から行ってみたかった国の史跡『北山十八間戸』(きたやまじゅうはちけんと。きたやまじゅうはっけんこ)に立ち寄ることができました。

北山十八間戸とは、鎌倉時代(1243年)、ハンセン病などの不治難病の患者を救済するため、西大寺の僧・忍性によって建てられた福祉施設です。般若寺の北東にありましたが、1567年に東大寺・大仏殿まで焼いた戦火に巻き込まれ焼失。寛文年間(1661~1672年)に現在地に移り、1693年に修復されました。東西約37m、内部は18室に区切られていて、仏間も設けられているそうです。衣食住を提供してきた収容者の数は、のべ1万8千人といわれています。

しかし、残念ながら自由に見学できるものではなく、この日はフェンスの外から眺めるだけになりました。同じ敷地にあるお好み焼きの「三角屋」さんに事前予約を入れておくと、敷地内へ入れるようですので、興味のある方はどうぞ!


北山十八間戸@奈良坂-01

奈良坂にある、国の史跡『北山十八間戸』。フェンスに囲まれていて、周りはお花が植わっていました。向かって右手のお好み焼き屋さん「三角屋」さんと同じ敷地にあります。フェンスは閉ざされていますので、事前に拝観予約をしておきましょう

北山十八間戸@奈良坂-02
「史跡 北山十八間戸」と書かれた石碑

北山十八間戸@奈良坂-03
史跡北山十八間戸の説明。「鎌倉時代の中頃、僧忍性が不治患者救済のため、北山(奈良の北の山という意)に宿舎を設けたもので、はじめ、般若寺の東北に建立されたが、永禄十年に焼けたため、寛文年間に、東大寺・興福寺の堂塔を南に眺められて、不幸な人々の養生にふさわしい今の地へ、鎌倉時代の遺風を承け継いで建てられたものである。建物は、十八の間数のほかに仏間をつけ、裏戸に『北山十八間戸』と縦に刻書がある。大正十二年三月三日、慈善事業の遺跡として史跡に指定された」

北山十八間戸@奈良坂-04
北山十八間戸は約37mの細長い建物です。一室の広さはほぼ2畳分ほど。道路沿いでフェンス越しに見るため、写真を撮るアングルも難しいですね

北山十八間戸@奈良坂-05
真っ白い壁。フェンスが迫っているので、この近さで見られます

北山十八間戸@奈良坂-06
扉の一箇所に「北山十八間戸」の文字が見られました


■北山十八間戸

HP: 参考サイト(Wikipedia)
住所: 奈良県奈良市川上町
駐車場: なし
アクセス: 近鉄奈良駅から徒歩25分ほど

※同じ敷地にある「お好み焼・三角屋」に拝観の管理が委託されています。事前予約をしてタイミングが合えば、フェンスの中まで入れていただけるそうです(0742-22-2594 ミナミハタさん)


■参考にさせていただきました!

北山十八間戸 - Wikipedia
鼓阪小学校「北山十八間戸」


レンガ造りの『旧奈良市水道計量器室』

旧奈良市水道計量器室@奈良坂-03

北山十八間戸のすぐ向かい側に、すっかり廃墟化したレンガ造りの建物があります。蔦の間から判別できた文字から調べてみると、これは「旧奈良市水道計量器室」というものだとか。大正初期に、奈良市の上水道を管理するために建てられたもののようです。

再利用も難しい小さな建物ですが、このまま朽ち果てていくだけなのかと思うと勿体ないですね。貴重な近代の遺産として、何か活用方法を見つけてあげて欲しいものです。


旧奈良市水道計量器室@奈良坂-02

北山十八間戸のすぐ向かい側に、蔦に覆われた、不思議なレンガ造りの建物があります。これは「旧奈良市水道計量器室」という、おそらく大正時代のものと思われる施設跡なのだとか

旧奈良市水道計量器室@奈良坂-03
蔦でよく見えませんが、かろうじて「水道計量器室」の文字が読み取れました。すっかり打ち捨てられたようで、物悲しい雰囲気が漂っています

旧奈良市水道計量器室@奈良坂-01
メインの通り側からの眺め。後ろの塔は別の施設のものです


■旧奈良市水道計量器室

住所: 奈良市東之阪町
駐車場: なし

■参考にさせていただきました!

レトロな建物を訪ねて : 旧奈良市水道計量器室
旧奈良市水道計量器室 - 奈良の名所・遺跡


優しく微笑む大きな石仏『夕日地蔵』さま

夕日地蔵@奈良坂-04

北山十八間戸のすぐ向かいの建物の陰に「夕日地蔵」さまがいらっしゃいます。像高188cm、蓮華座を含めると240cmという大きなお地蔵さまで、室町時代後期(1509年)に、興福寺の僧・浄胤が死後の冥福を祈って造立したものだそうです。

このお地蔵さまは、歌人・会津八一(Wikipedia)の歌が有名です。

●ならざかの いしのほとけの おとがひに こさめながるる はるはきにけり

(奈良坂の 石の仏の頤に 小雨流るる 春は来にけり)
(大意 - 奈良坂の路傍に立つ石仏の顎から小雨が流れている。春が来たのだ。)

小雨降る春の日にも、きっと穏やかに微笑まれていたんでしょうね。通りからはやや奥まっているため目立ちませんが、般若寺へお参りに行った際に少しだけ足を伸ばして、ぜひお会いしに行ってみてください。


夕日地蔵@奈良坂-01

北山十八間戸の向かいには、三角地に建つ、おそらく昭和のアパートだった面白い建築物があります。この裏手(写真の向かって左手)のくぼんだ土地を見てみると…

夕日地蔵@奈良坂-02
ひっそりとお地蔵さまがいらっしゃいます。この方が会津八一の歌でも有名な「夕日地蔵」さま。夕暮れにはまだ少し早めの時間帯(14時半ごろ)でしたが、今はもう夕陽が当たらないのかもしれません

夕日地蔵@奈良坂-03
夕日地蔵さまは、こんな場所にひっそりといらっしゃいます

夕日地蔵@奈良坂-05
わずかに微笑む表情が素敵ですね。かなり大きめのお地蔵さまで迫力がありますが、この笑顔で優しく感じられます

夕日地蔵@奈良坂-07
すぐ隣に、歌人・会津八一が詠んだ夕日地蔵さまの歌がありました。「ならざかの いしのほとけの おとがひに こさめながるる はるはきにけり」。いつか春の雨の日にもお会いしにきてみたいですね


■夕日地蔵

住所: 奈良県奈良市興善院町
駐車場: なし

■参考にさせていただきました!

奈良坂の地蔵石仏(夕日地蔵)
夕日地蔵 - 奈良の名所・遺跡



より大きな地図で 北山十八間戸・夕日地蔵 を表示


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