奈良・町家の芸術祭 はならぁと2017『橿原エリア(今井町)』
奈良県内の町家や空き家に現代アートを展示する『奈良・町家の芸術祭 はならぁと』。ぷらす会場「橿原エリア」今井町を見てきました。古い町家を舞台に、その雰囲気に上手く馴染んだ作品があったり、圧倒的な違和感を感じさせる展示があったり。たっぷり楽しめました!
ぷらす会場「橿原エリア」も開催に
今年で7年目を迎えた、アートイベント『奈良・町家の芸術祭 はならぁと』(Twitter・Facebook)。奈良県内の町家や空き家に現代アートを展示する企画で、イベント終了後にはその建物がカフェなどとして再活用されるなど、古い建物に新たな命を吹き込む役割も担っています。
私たちは建築物もアートも大好きなため、毎年楽しみに拝見しているのですが、2017年は本当にお天気に恵まれず、週末のたびに台風がやって来て悪天候に見舞われています。
先週のこあ会場は「宇陀松山エリア(10月21日~10月29日)」(紹介記事)に続いて、ぷらす会場「橿原エリア」(10月27日~11月5日)にも行ってきましたが、この日も結構な雨模様でした。
橿原エリアは「今井町」と「八木札の辻」のやや距離のある2つの同時開催なのですが、お天気の関係もあって前者を回るので精一杯でした。そのうちのごく一部になりますが、ご紹介しておきます。
かつては称念寺の寺内町として栄え、「大和の金は今井に七分」と称されるほど繁栄した「今井町」。江戸時代に建てられた建築が多数残り、とても風情のある町並みです。『奈良・町家の芸術祭 はならぁと2017』のために久々に訪れましたが、この日も台風接近のため強い雨でした……
「今西家長屋」リノベとハート型
今西家長屋の「今井の子」と題された会場。5軒続きの長屋になっていて、中へ入ってみると、
思いっきり改修中です。作業しているのは千葉大学の学生さん。壁に漆喰を塗ったりと、室内の装飾を整える作業をなさってました。4年前からこの取り組みが始まって、すでに2軒の改修は完了。この1軒も地道に完成へ近づけているようです。アート作品を展示したりということではなく、セルフリノベーションをライブで見せるというイメージでした
奥から見たところ。建物の裏庭(共有部分)にあとから建て増したトイレやお風呂の痕跡があったり、全体的に懐かしい雰囲気です。作業している学生さんたちも楽しそうで、とても羨ましかったです!
同じく今西家長屋のお隣の部屋では、喜田恭臣さんの作品が展示されていました。畳もあげられた古い建物の天井から、たくさんのハートが吊り下げられています
こちらを向いてもハートだらけ。こういうトリッキーな展示が許されるのも楽しいところです(笑)
「旧松尾家」会場は薄暗く感慨深く
こちらは「旧松尾家」会場。月永進さんの作品が展示されています。外から見ると味のある町家ですが……
中に入ると、基礎部分がむき出しに。長い間放置されていたのか、雨漏りしたり木が腐っていたりします。しかし、なぜか妙に心惹かれます。はならぁとをきっかけに上手く活用されるといいですね
押し入れや階段下の部分には、古い家具がそのまま残されています。タンスには「男物メリヤスシャツ」「バッチ」など、中に何をしまったのか書いてあるのも面白かったです
展示作品は「ソラノカケラ -倭-」。奈良で写した雲の姿を切り取っています。奥の壁などに控えめにかけてありますが、この崩れそうな建物の雰囲気と相まって、何らかの不思議なオブジェのようでもありました
以前は竈があって黒く煤けた壁に、モノクロの奈良の空の写真が。もともと木枠がはまっていた部分が取り除かれて、フレームのように見えるのもおもしろいですね
「恒岡町家」会場の両極端なハレ
渋い町家建築「恒岡町家」会場では、入口に不思議な顔ハメ看板が。このゆるキャラ的な子は「うちぅじん」だとか。今井町の各所でスタンプラリーを開催していたり、人気コンテストがあったり。落ち着いた町並みの中で異色の存在感です
室内に入ってみると、うちぅじんやその他のオブジェに、キラキラのライトが眩く輝く、なんとも不思議な作品が。キッチュです!万華鏡の中をイメージしたとのことで、写真で伝わるかどうかは不明ですが、なかなかおもしろいんですよね
ブラックライトを当てると光るキノコがあったり、そしてそれを収穫できたりと、まぁ独特でした(笑)
同じ「恒岡町家」では別の展示も脇の勝手口から入ると、こんな仰々しい幕があり……、
宮川徳三郎さんによる「婚礼の儀 再現・展示」という、端正な展示が。今井町の旧家が所蔵する調度品を展示し、婚礼の儀も再現するのだとか。このふすまを一枚隔てた座敷では、うちぅじんの周りをミラーボールが回っているんですから、そのギャップがすごいです(笑)
「嘉雲亭」会場の美しい染織作品たち
「嘉雲亭」会場の坂野真子さんの作品「草木と花の風景」。染織作家さんで美しい藍色が印象的でした
こうした作品は、ヒメジョオンやセイタカアワダチソウ、サカキなど、道端の雑草やさまざまな草木を用いて布を染め、その姿を描いています
「旧米谷家」会場の圧倒的な違和感!
国重文に指定されている「旧米谷家」会場では、アーティスト10人のユニットSKHONHTSYN10さんの作品「大人は誰でもはじめは子どもさ。子どもは小さな大人じゃない。」が展示されていました。土間の部分に巨大な白い風船状のものが
美しい文様の布、そしてワイヤーで人型に編まれたオブジェ
お座敷の一室にも不思議な展示が。すべてにおいていい違和感を醸し出しています!
「景観支援センター」会場のパワフルなカオス
「景観支援センター」会場では、奈良教育大学絵画研究室さんの「絵の家2017」が展開されていました。絵の家とは、絵画表現と美術教育に関するプロジェクトで、会期中はさまざまなワークショップが開催されています
建物に入ってみると、たくさんの学生さんたちがわいわい言いながら作品制作に取り組んでいて、まさに美大の一角のような雰囲気でした
いろんな絵が書き込んである円形のすだれ風のもの。その奥に巨大なテディベアが座り、背後の衝立には角に札束を突き刺した鹿などが描かれています。混沌のパワー!
その隣では、さらに不思議な組み合わせが展開されていたり、
庭に目をやると、こんな不思議な光景が広がっていたり。
窓から作品を眺めたところ。現代アーティストの山下圭介さん(奈良教育大学非常勤講師)の作品だとか。この日はずっと雨模様でしたので、薄暗い空に強い色が映えて素敵でした!
2階にもさまざまな作品が展示されています。パワーがあふれていておもしろかったです!
■奈良・町家の芸術祭 はならぁと 2017
HP: http://hanarart.jp/
Twitter: @HANARART
Facebook: https://www.facebook.com/hanarart
●はならぁと こあ 宇陀松山エリア(宇陀市)
・会期:2017年10月21日(土)~10月29日(日)
●はならぁと ぷらす 橿原エリア(橿原市)
・会期:2017年10月27日(金)~11月5日(日)
●はならぁと あらうんど 吉野町国栖エリア
・会期:2017年10月8日(日)(※すでに終了)
●はならぁと あらうんど 曽爾村エリア
・会期:2017年10月25日(水)~10月29日(日)
■関連する記事