奈良県外で遊ぶ

万葉集の編纂者・大伴家持ゆかりの『高岡市万葉歴史館』@富山県高岡市

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『万葉集』を代表する歌人であり編者とされる大伴家持は、越中国守として赴任していた約5年間の間に多くの秀歌を詠んでいます。富山県高岡市にある『高岡市万葉歴史館』では「越中万葉」と呼ばれる万葉歌を中心に、万葉集の素晴らしさを楽しく学べる施設です。

大伴家持が国守をつとめた「万葉故地」高岡市

約4,500首の歌が収められている日本最古の歌集『万葉集』。歌の作者は天皇から農民まで幅広く、詠まれた土地も東北から九州まで日本各地に及んでいます。

こうした万葉集ゆかりの土地は「万葉故地」と呼ばれ、その中には『万葉集』をテーマとした博物館が設けられているところもあります。これらをすべて巡ってみたいとひそかに考えているのですが、なにせ全国に散らばっているためなかなか進みません。

この中のひとつ『高岡市万葉歴史館』は、私の実家のある新潟県糸魚川市の近く(とはいえ高速道路を使って1時間以上)ですが、年末年始の帰省時期には当然お休みされているので、これまで行けるチャンスがありませんでした。

ところが2024年10月、地元で開催された「えちご・くびき野100kmマラソン」への参加(詳細はこちら)で帰省する予定ができたため、マラソンを完走した翌日(!)にさっそくお邪魔してきました。

▲富山県高岡市は、日本海に面した美しい町です。富山市と同じく、現在も路面電車が現役。のどかさを感じますね。

余談ですが、私はかつて(今はなき)高岡市内の某百貨店さんの担当をしていたため、毎週通っていた時期がありました。久々だったのでかなり懐かしかったです。
▲目的地の近くのスーパー「大阪屋ショップ」さん(※本社は富山)の店舗名は「万葉店」でした。奈良以外で万葉の文字を見かけるのは不思議な感じもしますがちょっと嬉しいです 笑

万葉歌碑や大伴家持ご夫妻の像なども

▲こちらが『高岡市万葉歴史館』TwitterInstagramYouTube)の建物です。

『万葉集』の代表的歌人であり編者と目される大伴家持(おおとものやかもち)Wikipedia)。越中国守として国庁が置かれた高岡の地に赴任した約5年間に、家持や部下たちが詠んだ300首以上もの歌が伝わっており「越中万葉」と呼ばれています。

家持は名門・大伴氏の跡取りですから、いわゆる都会育ちのいいとこのボンボンです。しかし、都では藤原氏の影響力が増し、大伴氏は徐々に勢力を失っていきます。そんな中での地方赴任ですから、いろんな想いはあったでしょう。

「家持の越中国赴任には、当時の最高権力者である橘諸兄が新興貴族の藤原氏を抑える布石として要地に派遣した栄転であるとする説と、左遷であるとする説があります。」

大伴家持の生涯と万葉集│高岡市万葉歴史館 より

また、家持は68歳で没した直後、藤原種継暗殺事件の首謀者と疑われ領地を没収される(後に無罪とされる)など、その人生は波乱万丈。大河ドラマの主人公に選ばれても不思議のない人物だと思います。

▲館の前には、大伴家持が越中二上山とその周囲の美しさを讃えた長歌「射水川 い行きめぐれる 玉くしげ 二上山は 春先の 咲ける盛りに~」の歌碑が建っています(歌の解説などはこちら
▲大伴家持とその奥さん・坂上大嬢(さかのうえのおおいらつめ)の仲睦まじい像も。

「春の苑(その) 紅(くれなゐ)にほふ 桃の花 した照る道に 出(い)で立つ娘子(おとめ)」大伴家持 巻19-4139

現代語訳:春の庭園が紅色に美しく照り映えている。桃の花の下まで咲き照る道に、出てたたずむ娘子よ。(詳しくはこちら

美しく情緒的な名歌として知られている歌ですが、ここ越中で詠まれています。その一連の歌は「越中秀吟」として知られています。

「天皇(すめろき)の 御代栄えむと 東(あづま)なる 陸奥山(みちのくやま)に 金(くがね)花咲く」大伴家持 巻18-4097

現代語訳:天皇の御代が栄えるしるしとして、東の国の陸奥国の山に黄金の花が咲いた。

「立山(たちやま)に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神(かむ)からならし」大伴家持 巻17-4001

現代語訳:立山に降り置いている雪は、夏のいま見ても見あきることがない。神の山だからにちがいない。

越中万葉の内容などわかりやすく展示

▲館内の「万葉体感エリア」では、正面と左右の画面が連動した大型プロジェクションマッピング「大伴家持と越中万葉の世界」が上映されています。家持が越中で詠んだ名歌10首を、美しい映像とともに紹介しており、迫力があります!
▲ちなみに、この日は天平衣装の体験イベントも開催されていたため、
館内を万葉人の気分で観覧していらっしゃる方も。奈良県内では比較的こういう光景を見かけますが、越中の地で目にするとあらためて感動しますね!
▲さらにわかりやすく越中万葉について学べる「万葉学習エリア」と続くのですが、残念ながらほぼ撮影不可のため画像はありません(詳しくはこちらをご覧ください)。

こちらは撮影可能だったスポットで、5つのサイコロを組み合わせて正しい越中万葉の歌を完成させるというもの。難易度もそこそこで正解しても気持ちいいですし、間違えていたらいたで面白いという遊びでした。

展示内容については、もともと興味がある私が楽しかったのは当然としても、一緒に行った両親(万葉集に関する知識ゼロ)にもスタッフの方がわかりやすく解説してくださって、「こういう世界もあったのか」と興味を持てたようでした。
▲廊下には天平衣装の展示 兼 記念撮影スポットがあったり、

▲立山を背景に立つ大伴家持になり切れる顔出しパネルがあったり。

▲またミュージアムグッズもいろいろあります。私はお土産として書籍『越中万葉をたどる』を購入してきましたが、調べてみたら以前に詳しくご紹介してました(詳細はこちら)。いい内容ですのでぜひ!
▲この日は時間が足らなかったため、周囲の万葉故地をたどることはできませんでしたが、近くには大伴家持像が建っていたりしますので、またあらためて歩いてみたいと思います。

画像は、某駐車場から見た(おそらく)二上山。奈良の二上山の麓に暮らす私としては、ぜひ越中の二上山も見ておきたかったのですが、その山がそれなのかちょっとわかりづらくて曖昧です。

ちなみに、館のスタッフの方は「他所から帰ってきた時、二上山の姿が見えるとほっとする。常にすぐ近くにある身近な山」というようなことをおっしゃっていました。私も同じ名前の別の二上山を見て同じことを思っていますし、きっと万葉の時代の大伴家持も同じように思っていたことでしょう。大和と越中がつながったようで嬉しかったです!

高岡市万葉歴史館

HP【公式】高岡市万葉歴史館
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住所富山県高岡市伏木一宮1-11-11
電話0766-44-5511
休館日火曜日(※祝休日の場合は翌日休)、年末年始
開館時間9:00~18:00(※11月~3月は17:00まで)
観覧料一般 300円、中学生以下 無料、65歳以上 240円 など
駐車場あり(無料)
アクセスJR氷見線「伏木駅」より徒歩約25分(車で約5分)
※実際にお邪魔したのは「2024年10月14日」でした。

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