d design travel NARA
独自視点の奈良ガイド。見逃しがちな「奈良らしさ」が再発見できます
「ロングライフデザイン」をテーマに、47都道府県それぞれのその土地らしい定番を紹介していくトラベルガイド。「d design travel」。その年に2ヶ月間も居付き、現地を丹念に旅して作られていきます。
その20号目に登場したのが「奈良」号です。通常のガイドブックとはまったく違った視点から、奈良の素晴らしさを発見する、ユニークで読み応えのある内容になっています。
説明文:「「ロングライフデザイン」の視点で、その土地らしい「定番」を紹介していくトラベルガイド。2ヶ月間暮らすように現地を旅して、本当に感動したものだけを本音で紹介しています。各都道府県に根付いた「長く続くもの」・「その土地の個性=らしさ」を選定し、 [観光・飲食・買物・喫茶・宿泊・人物]の6つのカテゴリーにわけて「dマークレビュー」として掲載しています。
「奈良県は道。私たちが歩んできた道。」奈良県は、古代の物事をすぐ近くに感じる事ができる。手付かずの自然の中を人間がどのようにして歩いてきたのか、どうやって「日本」がつくられていったのか、そんな大それた事を、当たり前に理解できる。そんな場所へ行くための道がある。その道を歩んで辿り着く場所は必ず美しい。でも、そこから振り返ってみた、私たちが歩んできた道と、遠く離れて見える日常に暮らす町、戻るべき現実の方が、もっと美しく、もっと愛おしい。その事に、奈良県の旅は気づかせてくれる。」
●SIGHTS:その土地を知る。
東大寺 二月堂(奈良市)/ 宇陀市立室生山上公園 芸術の森(宇陀市)/ MICHIMO(明日香村)/ 奈良国立博物館(奈良市)
●RESTAURANTS:その土地で食事をする。
森正(桜井市)/ 一如庵(宇陀市)/ 竹の館(奈良市)/ 秋篠の森 なず菜(奈良市)
●SHOPS:その土地らしい買物。
オフィスキャンプ東吉野(東吉野村)/ 葛屋 中井春風堂(吉野町)/ 大滝茶屋(川上村)
●CAFES:その土地で、お茶をする、お酒を飲む。
まめすず・ちちろ(奈良市)/ 瀞ホテル(十津川村)/ たかばたけ茶論(奈良市)/ K COFFEE(大和郡山市)
●HOTELS:その土地に泊まる。
大森の郷(十津川村)/ 奈良ホテル(奈良市)/ 紀寺の家(奈良市)/ 江戸三(奈良市)
●PEOPLE:その土地のキーマン。
藤岡俊平(紀寺の家)/ 中野聖子(ホテルサンルート奈良)/ 石村由起子(くるみの木)/ 河瀬直美(映画監督)
● 主な記事
・奈良のふつう:編集部が見つけた、奈良県のあたり前。
・空閑トラベル:編集長の旅行記
・奈良の手みやげ など
定番的なものから、かなり意外なものまで、編集部の独自の視点で選び抜かれています。その選択基準は、単に「伝統的なもの」ということではなく、「長く続いていてその土地らしさを感じさせるもの」といった視点が貫かれていて独特ですね。地元民でもない、一見さんでもない、じっくりと腰を据えて取材を続けて生まれた、いい意味でジプシー的な、ちょっとした浮遊感があります。
私自身は奈良に移ってきてもう10年になります。半分以上は奈良の地元民ですが、純粋な奈良県民ではないため、いまだにちょっとした旅行中(もしくは他所者の野次馬)という感覚が抜けきれません。そんな私から見て、以下の文章などかなり腑に落ちました。
「奈良市の旅では、いわゆる「和」とか「日本らしい」という事を、僕はあんまり感じなかった。むしろ、外国を訪れたような気持ちに近かったと思う。奈良と同様か、それ以上に「古都」と呼ばれるのは京都だが、奈良と京都とは、あまり似ていないように思う。どちらかというと、琉球王朝文化が色濃く残る沖縄に近いものを、僕は奈良に感じた。奈良の人々は、鹿などの動物と共生し、木々や森を守っている。そこらじゅうに仏像や寺社があり、それらは厳かで権威的というよりも、華やかで優しい。その土地の人よりも海外の人の方が多く感じられる観光地だが、名物料理は目立たず、地の野菜が豊富で新鮮。食べ物で人を誘わない。というより、何かで人の気を引くというつもりがない。そんな奈良が、旅が長引けば長引くほど、僕はどんどん好きになっていった。」(P125「編集長が行く 空閑トラベルII」より)
あらためて思いますが、奈良という土地は他のどこにも見つからない、不思議と穏やかな空気感にあふれています。気ぜわしい都会とも違い、自然が厳しい北国とも、おおらかで緩やかな南国ともまた違った、奈良だけが特殊なベールに包まれているかのようにすら感じます。(※この辺りの感じ、また今度どこかにまとめて書きます)
本書では、この目次にある以外にも、奈良の有名な食材で定食を作ったり(東京のイベントで食されたりもしました)、奈良らしいCDや本をセレクトしたり。どのページもしっくりと手触りが感じられるようです。
他のどのガイドブックとも似ていない、愛すべき奈良を存分に感じさせてくれた一冊でした。奈良好きな方はぜひ手にとって見てください!