2015-02-13
植田正治の世界 (コロナ・ブックス)
植田正治の世界 (コロナ・ブックス)posted...
鳥取県境港市を拠点に、ほぼアマチュア写真家という立場を貫いた写真家「植田正治(うえだしょうじ)」さん(Wikipedia)。作品を多く紹介しながら、その人となりに迫っています。
植田さんの活動は、先日放送されたNHK「日曜美術館」で知ったばかりですが、鳥取砂丘を舞台として、人物や小物を前衛的に配置した作風は「植田調(Ueda-cho)」と呼ばれ、フランスでもその言葉のまま用いられているとか。1980年台に、タケオキクチのカタログなどにも採用されたファッション写真「砂丘モード」など、見覚えがあります。
説明文:「終生山陰の地に留まり、砂丘を舞台に数々の名作を生み出した世界的写真家・植田正治。「写真すること」に幸せを感じ、ひとりの「アマチュア」として撮り続けた、その自由自在な人生と作品―。」
植田さんの写真は、時代によって作風は変化するものの、どれもシュルレアリスムの影響を感じさせるような、不思議なものが多めです。日常を切り取ったスナップ写真のようなものでも、どこか自然ではなく、意図してかせずにかは別として、静かにカメラを向ける撮影者の存在が感じられます。
砂丘の上に、不思議な構図で人物を配置した「パパとママとコドモたち」「少女四態」など、見事な現代アートですね。
ただし、こういった作風の方だけに、一時は忘れられた存在になりかけたり、紆余曲折があったとか。砂丘モードで商業写真を手がけるようになったのが、もうすでに70歳を超えていたというのですから驚きです!色んな面で興味深い方で、本書は入門書として最適でしょう。
鳥取県西伯郡伯耆町には「植田正治写真美術館」もありますので、次の山陰旅行の際には必ず立ち寄りたいと思います。