社会貢献でメシを食う
「社会起業家」となってメシを食う道を紹介する一冊。ビジネス手法の導入が鍵だとか
社会に貢献しながらそれを職業とする「社会起業家」と呼ばれる職業を目指す方への、わかりやすいガイドブック。先日、このようなニュースをチラリと見た直後に、図書館の特集コーナーで本書を見かけたため、何気なく借りてみましたが、知らない間にこんな動きがあったんですね。ちょっとしたカルチャーショックでした。
説明文:「社会貢献で本当にメシが食えるのか--。就職の壁を前にした、社会貢献を志す若者たちに向け、社会貢献を仕事にするための「4つの選択肢」と、どこを目指しても必ず求められる「プロフェッショナルになること」の重要性を説く。もう「アマ」はいらない。目指すべきは、「社会貢献のプロフェッショナル」!」
本書で紹介されるのは、自己犠牲のもとに成り立つ、儲からないのが当然の慈善活動ではなく、ビジネス的な視点を持った新たな起業(もしくは就職)です。これまでの日本では、そうした貢献を目指すNPOで活動していても、年収は200万程度であり、年齢が30代に入ると将来への不安から職を変えていくことが多かったのだそうです。確かに自己犠牲を強いられるイメージがあって、それが大きな障害となっていました。
それに対して、本書で紹介される社会起業家たちは、NPO団体や株式会社にかかわらず、収益をあげる方法を模索しているそうです。分かりやすくいうと、貧困国へ資金援助をするだけではなく、「釣り方・食べ方・売り方を教えること」が重要だと言われていますが、それをビジネスとして成立させ、事業として継続することを目標としているようなイメージでしょう。
社会貢献をするための選択肢として、●自ら社会起業家となる ●NPOやNGOに就職する ●プロボノ(専門的なスキルをボランティアとして提供すること) ●一般企業に就職して社会起業家を助ける、この4つが挙げられています。今から10年ほど前にはこのような選択肢はまず考えられませんでしたから、時代は変わっていることを実感しますね。
ただし、本書は大局的な観点から書かれており、地方の小さなNPO法人が…というような内容では無かったため、私などにはそれほど身近に感じられない事例(貧困国へ工場を建設して…など)も多かったのも事実です。
興味深かった例としては、月会費制で「病児保育」の施設を運営する「フローレンス」などがありました。女性の社会進出が求められるのと同時に、病気したお子さんの看病のニーズは高まっています。これを助成金ベースではなく、会費制で(利用回数が多ければ追加料金も)展開するという点が支持されているのだとか。ほんの少しだけ仕組みを変えるだけで、十分にビジネスとして成立するんですね。
個人的な話になりますが、私は奈良へ移り住んできてから、ボランティア活動をしている学生さんと何名も知り合いになりました。寺社仏閣や遺跡が多い奈良という土地がそうさせているのか、現代の若者にそういう傾向があるのかは分かりませんが、素晴らしいことですよね。自分の学生時代を思い出すと恥ずかしい限りです(笑)
やや事業スケールが大きいため、そのまま参考になるような内容ではありませんが、おっさんが読んでも不思議な刺激を受けましたので、興味がある方はぜひ。または「社会起業家」などのキーワードで検索すると、同種の本が多数見つかると思います。