
直島 瀬戸内アートの楽園 (とんぼの本)
瀬戸内海の直島を舞台にしたアート活動の全貌。インタビューなども充実!行ってみたい!
瀬戸内海に浮かぶ直島・豊島・犬島を舞台としてアート活動を続ける「ベネッセアートサイト直島」。ベネッセの福武總一郎会長が中心となり、建築家・安藤忠雄が美術館の設計を手がけたりしています。本書では、その活動と展示内容を、アーティストや企画者の言葉とともにまとめており、とても楽しく読めました。発売は2011年8月です。
説明文:「直島から、豊島、犬島まで、世界的“現代アートの聖地”を完全ガイド。アーティストや建築家の貴重なインタビューを新収録。」
この直島のことは以前から知っていましたが、本書を含め、その紹介の際のメインビジュアルには、ほぼ間違いなく草間彌生さん(Wikipedia)の水玉柄の「南瓜」か「赤かぼちゃ」が使用されています。個人的にこの方の作品があまり好みではないため、これまで意識的に避けてきましたが、先日のNHK「日曜美術館」での特集を見て、改めてむくむくと興味が湧いて来ました。
●直島 -- 建物が地中に埋設された「地中美術館」、シンプルで美しい「李禹煥美術館」、神社から町家までの様々な家を舞台にしたアート「家プロフェクト」など
●豊島 -- 屋外と繋がった不思議な水が流れる美術館「豊島美術館」、世界の人々の心臓音を集める「心臓音のアーカイブ」など
●犬島 -- 操業を停止した精錬所を使った「犬島精錬所美術館」など
このプロジェクトがスタートしたのは、1985年のこと。工場から出た有毒ガスのため、島の植物は枯れ、ほぼハゲ山だったそうです。そんな島を時間をかけて粘り強く開発してきました。フェリーで渡らなければならない離島ですから、アクセスも簡単ではありません。離島で現代アートを見せるなんて、一見無謀としか思えない計画ですが、よくここまでの規模に成長したものだと感心してしまいます。
しかし、そんな場所だからこそ、現代アートとじっくり向き合うのに相応しいのかもしれませんね。どの作品も、厳格で端正な安藤建築と対峙するように、また馴染むように配され、とても素晴らしいです。ゆっくりと周りたくなる何かが感じられますね。
本書には、福武さんが目指すいいコミュニティの条件として「お年寄りが笑顔でいられる地域であること」という言葉が紹介されています。このアートプロジェクトが根付いていくに従って、最初は半信半疑だった島のお年寄りたちも誇らしげな表情になってきたのだとか。これも素晴らしいことですよね。また、同じく福武さんの「文化は経済に従属するのではなく、その逆でなければならない」という言葉も覚えておきたいと思います。
画像も多くて美しいですし、読み物としても面白い内容です。いつか行ってみたい憧れの土地が増えるかもしれませんので、ぜひ手にとってみてください!