僧力結集―奈良のお坊様に会いに行こう! (あをによし文庫)
奈良の二十名のお坊さんたちの法話集。堅苦しいばかりではない興味深いお話でした
タイトルが凝りすぎていて内容が伝わりづらくなっていますが、「奈良のお坊さんたちの法話集」というような内容です。
登場するのは、十二寺院二十名の僧侶の方々。海龍王寺・元興寺・興福寺・西大寺・大安寺・唐招提寺・東大寺・法隆寺・薬師寺といった、奈良を代表する寺院、そして福祉活動に力を入れておられる大乗滝寺・壷坂寺、光明皇后1250年大遠忌を記念して法華寺の久我高照門跡のインタビュー(※この翌年にお亡くなりになられました)などが収められています。
著者は奈良在住のライターで、お寺さんの法話の面白さにはまってしまい、落語の寄席感覚で法話を聴講するようになったそうです。私はよくお寺さんへお詣りしていますが、じっと講話などを聞くのは苦手で、これまではあまり経験がありませんでした。そのような内容が文字に起こされているのですから、やや堅苦しい印象も受けますが、皆さん、さすがは面白いお話やいいお話をお持ちですね!失礼な言い方ですが、あまり期待していなかっただけに、事前の想像よりもはるかに楽しめました(笑)
ただ、純粋な講話というよりも、お寺の歴史を紐解くような内容のお話も混ざっていますので、奈良のお寺に興味がある方であれば、それも楽しめるでしょう。お寺の意外な事実が聞けたり、人生とは、今の社会とはなど、色んなお話しが読めます。
なお、講話といえば、奈良ではやはり薬師寺のものが有名でしょう。元管主でユーモアあふれる講話で知られる高田好胤さんの伝統を受け継ぎ、お話の面白さには定評があります。筆者がはまるきっかけになったのも薬師寺だったとか。本書でも薬師寺から3名の方が登場していますが、皆さん、本当に徹底していますね。
松久保伽秀さんは、『お寺の若いお坊さんに、「ミッキーマウスになれ」と教育しています(笑)。お寺でお坊さんを見かけたら気軽に声をかけてもらって、写真撮ってと言われたら一緒に撮ったらいいと思っています。そのための僕らじゃないかなと。』とまで述べていらっしゃいます。なかなか言えないことですよね!
巻末には、講話が聞けるお寺のリストも掲載されていますし、その中から選んで拝聴しにいくのもいいですね。私は高田好胤さんの著作などを拝読したくなりました。こういう心境になるのは、年齢とかタイミングとか色々とあるんでしょうね。我ながら不思議な感じですが、この本はそのきっかけになってくれた一冊ですから感謝したいと思います!