ポストモダン建築巡礼
「バブル建築」と揶揄されるポストモダン建築たちを、イラスト入りで分かりやすく解説
建築雑誌「日経アーキテクチュア」の人気連載をまとめたもの。分かりづらいポストモダン建築へ実際に行って、写真・テキスト・イラストなどを使って、初心者にも分かりやすくその特異性を解説しています。
内容:「「バブル建築」とひとくくりにされ、正面から論じられることの少ないポストモダン期の建築。 「ポストモダン」が日本を席巻した1975~1995年につくられた有名建築50件の現況を、うんちくたっぷりの文章と、初心者目線のイラストでリポートします。「模索期(1975-82年)」、「隆盛期(1983-89年)」、「熟成期(1990-95年)」の3期に分け、時代順に巡ります。旅行記としても楽しめます! 特別企画として、建築家の隈研吾氏と筆者・磯達雄氏による対談「日本のポストモダン10選」も掲載。」
今から半世紀前後前に建てられた「モダニズム建築」の代表的なものが、次々と解体の危機を迎えていることが話題になったりしました。丹下健三さんなどが設計したシンプルなラインながらも優雅な建築物は、今の時代にも受け入れられやすいものが多くあります。
しかし、本書で取り上げられるような、その次の時代の「ポストモダン建築」はやや装飾過剰に映るため、バブル期の負の遺産と一括りにされがちです。3つの時期に区切って見ていくと、ポストモダンと呼ばれる建築物がどのように一般化し、どのように消費されていったのかが分かりやすいですね。現在の実用一辺倒の建物よりは圧倒的に遊び心があり、(そのデザインが必要か不要かは別として)見ていて楽しいものです。
本書で取り上げられている建物で最も有名なものといえば、興隆期の作品として紹介されている、浅草の「アサヒビール吾妻橋ビル+吾妻橋ホール」でしょうか。通称「ウ●コビル」なんて呼ばれる金色のオブジェがビルの屋上に乗ったものです。外からは何度も見ていますが、よく考えてみるとあのビルの中に入ったことは無かったですね。あのオブジェの中は完全な空洞だというのにも驚きました。不景気の今であれば通らないデザインでしょう。
この他、偶然知っていてかっこいいと思っていた「小牧市立図書館」、行ってみたい鏝絵(こてえ)の美術館「伊豆の長八美術館」、意外なところでは「龍神村民体育館」なども掲載されています。あと、これも外観は何度も見ている「梅田スカイビル」も入ってみるとすごいようですので、近々行ってみたいですね。
本書の最後に取り上げられているのは、鹿児島県鹿屋市の「輝北天球館(きほくてんきゅうかん)」です(画像検索)。これが1995年の作品です。もう二度と日本にこんなSFチックな建物は登場しないのではないか…と思わせるほどのすごさですね!これがポストモダン建築の代表作とはいえませんが、建築業界にも日本にもいい時代だったのかもしれませんね。
とても楽しい内容でしたが、同シリーズに『昭和モダン建築巡礼 西日本編』という本が発売されているそうですが(これも面白そう!)、私はそれを知らずにこちらを先に読みました。読む順番はどちらでも構いませんので、建築に興味が無い方も機会があれば手にとって見てください。