2012-08-14
入江泰吉・万葉花さんぽ (小学館文庫)
美しい写真に、万葉集研究の中西進さんのエッセイを合わせた文庫オリジナルの写文集
奈良を愛し、その風景を撮り続けた写真家・入江泰吉さん。そして万葉集研究の権威である中西進さん。お二人の写真と文章を、文庫オリジナルとして再構成した内容です。メインテーマは「万葉の花」。四季折々の美しい花々の写真に、その花を詠んだ万葉歌が添えられ、中西さんの季節にちなんだエッセイが加わります。
写真とエッセイで万葉の世界を旅する…的な内容の本は、他にも多数出版されていますが、持ち運びやすい文庫本になっているのがいいですね。お写真も文章もさすがとしか言い様がないクオリティーですし、ちゃんと読みやすくまとまっていますので、手元に置いておきたい一冊です。
例えば、春の歌ではこんなものが紹介されています。
●石はしる 垂水(たるみ)の上の さ蕨(わらび)の 萌え出づる春に なりにけるかも(志貴皇子)
●春の苑(その) 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つ少女(おとめ)(大伴家持)
●磯の上に 生ふる馬酔木(あしび)を 手折(たお)らめど 見すべき君が ありと言はなくに(大伯皇女)
それぞれ春を代表する歌で、花が詠まれていますね。入江さんの美しい写真も掲載されていますので、イメージしやすくなっています。例えば、飛鳥方面へ出かける時など、こんな本をバックに忍ばせておいて、ちょっとした時間に読んでみると気分が盛り上がるかもしれませんね!