カッコいいほとけ
仏さまは意外とアナーキー。生き方自体がかっこいい!
ベストセラー「へんないきもの」のコンビが、今度は仏さまにテーマを移して世に送り出した一冊。「ただひたすら、かっこいいほとけを、かっこいい、かっこいいと礼賛するだけの本である」と前書きにあるように、まさにそのまんまですね。
こう聞くと、仏像ブームに便乗しただけのミーハー本のように思えますが、これがなかなか面白く読めます。仏さまのチョイスも渋くて、冒頭を飾るのは「深沙大将」(西遊記の沙悟浄のモデルとなった方)です。この方は、三蔵法師の旅を助けたイメージですが、実は前世では過去6回も三蔵法師を殺し、その髑髏を首からぶら下げているというキテレツキャラなんですよね。こういう設定やストーリー展開をサッと紹介してくれるので、面白くテンポ良く読み進められます。
また、仏さまのセレクトも渋くて、五大明王は全て収録されていますが、地獄の方たちはあえて閻魔大王ではなく「司録」「焔摩天」が、十二神将からは頭にウサギさんを抱いた「卯神将」が、人気の「荼枳尼天」「歓喜天」「迦楼羅天」なども登場して、かなりマニアックですね。
インドの神さまとして登場した時から、仏教に取り入れられて仏となり、中国を経由して日本へたどり着くまでに性質がいかに変わっていたのかが、とても分かりやすく捉えられるのもいいですね。最初の属性とは全く正反対のキャラになってしまった方もいらっしゃって、そういった視点からも楽しめます。
眉をひそめたくなる表現が無いワケではありませんが、「仏さま=かっこいい」と思ったことのある方であれば単純に共感できるでしょう。迫力のあるイラストはもちろん、懐かしのテキストサイト的な語り口もいいですし、仏さまにまつわる突飛なストーリーを存分に堪能できました。仏像ファンにも楽しめますし、これまで全く興味の無かった方にもオススメしたいですね。