河瀨直美さんの名作『萌の朱雀 撮影地記念碑』@五條市西吉野町
奈良在住の映画監督・河瀨直美さんの1997年の映画『萌の朱雀』。そのロケ地として使用された赤い屋根が印象的な民家に『萌の朱雀 撮影地記念碑』が建っています。いまから20年も前の作品ですが、あの美しい山並みはまったく変わっていません。場所は五條市西吉野町平雄地区。かなりの山奥で行くのは大変ですが、ファンの方はぜひ!
とても静かで美しい作品『萌の朱雀』
奈良を舞台とした美しい映画作品を世に送り出す「河瀨直美」さん。2007年に『殯の森』がカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するなど、日本を代表する映画監督として活躍なさっています。
そんな河瀬さんの出世作となったのが、奈良県西吉野村(現在は五條市)で撮影された『萌の朱雀(もえのすざく)』(Wikipedia)でした。
奈良県五條市と和歌山県新宮市を結ぶ「五新鉄道」の建設が中止になった頃の、その影響を受けた一家を描いた、静かで美しい作品で尾野真千子さんのデビュー作でもあります。
出演者たちは演技経験のない方も多く起用されています。みな大げさな演技はせず、みなぼそぼそっとしゃべっていて、ドキュメンタリーに近い雰囲気です。過疎の村っぽい閉塞感、失われていくものの哀しさ、滅びの中の一瞬のきらめきなど、ほかの映画では味わえない美しさがあって、個人的に大好きな映画です。
県道49号線の「平雄地区」にあります
国道169号線を五條市から十津川村方面へ南下していたところ、「萌の朱雀 記念碑」と書いた小さな看板を見かけました。
これは萌の朱雀のロケを行った民家の庭に、2013年2月に完成したものです。ネットでそのニュースを見て、機会があったら行ってみたいと思っていましたので、ちょっと寄り道することにしました(参考記事:【産経WEST】映画「萌の朱雀」の撮影地に記念碑 奈良・五條市)。
国道169号線沿いに出ていた「萌の朱雀 記念碑」の小さな案内。ここからの距離などは一切書かれていませんので近くにあるのかと思いきや、車で15分くらいかかります
国道169号線と309号線を結ぶ「県道49号線」を進みます。かなり細い道で、交通量も少ないので、途中で不安になるかもしれませんが、どんどん登りましょう
山道を15分ほど進むと、見晴らしのいい「平雄地区」へ出ます。通り沿いにあるので迷いようもありません
ここが河瀬直美さんの映画『萌の朱雀』の舞台となった民家です。作中では「恋尾村の田原家」として登場していました。赤い屋根が印象的で、ここの縁側から山々を見たシーンなどもありましたね。映画の公開が1997年ですから、もう20年近く前のこと。劇中でも堂々とした風情でしたが、そのまんまの立派さです
お庭側に記念碑が建っています。この日はゴールデンウィークの真ん中で、何名かの方が集まってお庭でバーベキューを楽しまれているところでした。突然おじゃました私たちに、この家の家主さんが対応してくださって、いろんなお話も伺えました!
美しい建物も風景も当時のままでした
これが『「萌の朱雀」撮影地記念碑』です。映画に登場したままの雄大な自然の中に建っています
太田好紀・五條市長の名前で説明があります。「日本人の原風景を世界に知らしめ歴史に名を残す作品がここから誕生しました。この地「平雄」が河瀨直美監督作品「萌の朱雀」のロケ現場になったことを記念し、そしてふるさとが栄えゆくことを祈念し、此処に碑を建立致します。」
碑の裏面は、河瀨直美さんの書です。「恋しい人を想いながら 幾千年も前の人たちも この山を見つめていたのだろうか」。達筆!
貴重な「萌の朱雀」のパンフレット(中には切り抜きなども)を拝見しながら、当時のロケの様子などのエピソードも伺えました。河瀬さんは当時はまだほぼ無名でしたから、自宅をロケに貸すというのは大した決断だったでしょう。いい映画が完成して本当に良かったですね!
ちなみに、この建物には現在ご主人の弟さんがお住まいになっていて、家の前の斜面にある畑で「大和トウキ」などを栽培なさっているそうです。こんな傾斜地での畑作業は大変でしょうね。
■萌の朱雀 撮影地記念碑
住所: 奈良県五條市西吉野町平雄地区
※実際に現地に伺ったのは「2016年5月1日」でした
■参考にさせていただきました
【産経WEST】映画「萌の朱雀」の撮影地に記念碑 奈良・五條市
萌の朱雀(もえのすざく)ロケ地訪問: Michi!-iroiro~紀行