2011-05-02

天才仏師の書籍2冊『運慶にであう』&『別冊太陽 運慶』

天才仏師の書籍2冊『運慶にであう』&『別冊太陽 運慶』

運慶にであう (アートセレクション)』と『運慶 - 時空を超えるかたち (別冊太陽)』という、奈良仏師・運慶(うんけい)に関する本2冊を読了したので、簡単にご紹介しておきます。私は仏像好きですが、この手の内容の本は初めて読んだので、とても参考になりました!


鎌倉時代に活躍した有名な奈良仏師

「運慶(うんけい)」とは、ちょうど1192年の鎌倉幕府が成立した前後に活躍した、日本で最も有名な仏師です。

運慶の父・康慶(こうけい)は、奈良・興福寺の造仏を中心に活動していた「奈良仏師」の一派でした。その当時は、偉大な仏師「定朝(じょうちょう)」の流れをくむ中でも、京都の円派・院派が主流でしたが、次第に鎌倉幕府の要人たちと近しい関係となり、活動の場を広げていきます。1180年、平家の焼き討ちにより、東大寺、興福寺の諸堂が消失し、その復興事業に手腕を振るうとともに、鎌倉や静岡など、源氏ゆかりの寺へ収める仏像を任されていきます。

奈良を拠点に、鎌倉と行き来しながら仏像を作り続けた運慶ですが、確実に運慶作とされるものは30体ほどしかありません。奈良と関西でお会いできる運慶仏は以下のとおりです。

●円成寺・多宝塔 大日如来坐像(国宝)
●東大寺・南大門 金剛力士立像(国宝)
●東大寺・俊乗堂 俊乗上人坐像(重源像)(国宝)
●興福寺・北円堂 弥勒仏坐像(国宝)
●興福寺・北円堂 無著菩薩立像・世親菩薩立像(国宝)
●興福寺・国宝館 仏頭(重要文化財)

●京都・六波羅蜜寺 地蔵菩薩坐像(重要文化財)
●和歌山・金剛峯寺 八大童子立像(国宝)※8体のうち6体
●この他、神奈川・浄楽寺、静岡・願成就院などに作品が遺されています

奈良を拠点としていた仏師集団のリーダーですから、奈良の寺院でたくさんの運慶仏を拝することができるのは当然のことですが、やはり幸せなことだと思います。

ただ、あまりにも身近すぎて、その仕事ぶりが私にもよく理解できていなかったので、図書館で『運慶にであう (アートセレクション)』と『運慶 - 時空を超えるかたち (別冊太陽)』という、2冊の関連本を借りてきて読んでみました。


書評「運慶本」2冊

図書館で借りてきた、偉大な奈良仏師「運慶」に関する書籍2冊を読了しました。より平易な内容の『運慶にであう』、ディープな『別冊太陽 運慶』。いずれも、多数の仏像関連本を手がけている山本勉さんが執筆と監修をなさっています


運慶初心者・仏像中級者向け『運慶にであう』

まずは、運慶仏の入門者向けに書かれた『運慶にであう (アートセレクション)』から。

計16組の仏像たちを写真入りで分かりやすく紹介しています。間には「運慶の生涯(全5回)」という読み物もあり、運慶とその時代が掴めます。

ただし、最低限の専門用語は出てきますので、仏像のことが全く分からない方には理解不能な部分も多いでしょう。まずは、同じ山本勉さんの著書『仏像のひみつ』あたりから読み始めるのが無難です。ただ、『運慶にであう』も、運慶仏の写真は多数掲載されていますので、写真集替わりに読むのもいいかもしれませんね。


書評『運慶にであう』-01

『運慶にであう』の目次部分。確実に運慶作と定まったものから、運慶作と思われるものまで、計16組の仏像たちを紹介しています。間には「運慶の生涯(全5回)」という読み物もあり、運慶という仏師の業績を俯瞰して見られる内容になっています

書評『運慶にであう』-02
運慶の処女作である、奈良・円成寺「大日如来坐像」の紹介から。この本は違いますが、運慶本では表紙に使われることも多い美仏ですね。解説は1ページで、アップにしたりした画像が多数掲載されて、この像の紹介だけで10ページも割いています

書評『運慶にであう』-03
興福寺・国宝館に展示されている「仏頭」。新たな資料が発見されたことによって、最近になって運慶作品とみなされるようになったのだとか

書評『運慶にであう』-04
真如苑所有の「大日如来坐像」。2003年に運慶仏と判定され、2008年にオークションにかけられたことから、海外流出の危機に瀕した仏さまです。この像はこの本の著者である山本勉さんのもとに最初に持ち込まれたこともあり、X線写真などを交えて詳しく解説されています

書評『運慶にであう』-05
京都・六波羅蜜寺の「地蔵菩薩坐像」。端正な顔立ちの非常に美しい仏さまですね。運慶の父で、同じく偉大な仏師だった康慶の菩提を弔うために造仏された可能性が高いとか。京都にある唯一の運慶仏とされています

書評『運慶にであう』-06
和歌山・金剛峯寺「八大童子立像」の中の制咤迦(せいたか)童子と恵光(えこう)童子。八大童子の中の6体までが運慶作とされています。解説とともに大きな画像つきで紹介されています

書評『運慶にであう』-07
東大寺・南大門の「金剛力士立像」。色んなアングルの写真を使って、10ページを割いて紹介されています

書評『運慶にであう』-08
東大寺の「俊乗上人坐像(重源像)」。筆者は運慶の作と断定しています。迫力のある作品で、同じく運慶作とされる興福寺・北円堂「無著菩薩立像・世親菩薩立像」とともに、肖像彫刻の傑作と讃えられる像です


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ディープな情報が満載の別冊太陽『運慶』

一方の『運慶 - 時空を超えるかたち (別冊太陽)』は、大判のムック本で画像も大きく見やすいのですが、内容は濃いめです。ファンにはたまらない内容ですね。運慶の時代と仕事ぶりが詳しく解説されていて、とても参考になります。

そして、運慶の父・湛慶には8ページ、同時代の同門のライバル・快慶には16ページを割いて、詳しく作品の紹介と作風の解説がなされているのが、個人的に嬉しいところです。
また、、大仏師でありながら情報が少ない定覚、有名な「維摩居士坐像」などを造像した定慶、運慶の子孫たちの作品もいくつか紹介されていて、仏師集団・慶派の流れをつかみやすくなっています。

大雑把には「ダイナミックな運慶、端正で入念な快慶」というような印象でしたが、それが頭の中で整理できました。これまでは漠然と慶派の仏像を拝してきましたが、より楽しみが増えたと思います。

また、運慶仏は数が限られているため、ちょっと頑張れば全ての運慶作品を拝見することもできそうなんですよね。時間がかかってもいいので、いつかチャレンジしてみたいと思います!


書評『別冊太陽 運慶』-01

こちらは『運慶 - 時空を超えるかたち (別冊太陽)』から。大判のムック本ですが、渋い特集連発の別冊太陽だけに、読み応えは十分。画像も大きく、テキスト分量も新書本くらいはあるでしょう。運慶仏の顔のアップを並べて変化を見たりと、さすがの内容です

書評『別冊太陽 運慶』-02
内容は、歴史・芸術・現代と、多岐にわたります。当時の仏師の力関係や、奈良仏師の集団だった運慶が属する慶派が伸長した理由など、総合的に解説されています

書評『別冊太陽 運慶』-04
運慶たちが主体となって造像した東大寺・大仏殿の様子を描いた図たち。鎌倉時代に再建された大仏殿は、戦国時代に再度焼け落ちてしまったため、今はこのような資料の中でしか知ることはできません。同じ図は『運慶にであう』にも掲載されていましたが、こちらの方が大きく詳しく見られます

書評『別冊太陽 運慶』-05
「東国武士と運慶」。写真は静岡・願成就院に安置された運慶仏です

書評『別冊太陽 運慶』-03
「大仏師康慶の造像」。運慶の父・康慶など、慶派の主要人物に関してもコーナーが設けてあるため、とても参考になりました。その造像の特徴を指摘されると、確かに個性が現れるものなんですね

書評『別冊太陽 運慶』-06
「快慶の軌跡と造像」。運慶のライバルともくされることの多い仏師・快慶。ここでは16ページも割いてその作品をたっぷりと紹介しています。ちなみに、運慶は、大仏師・康慶の長男。快慶は康慶の弟子ですので、血の繋がりはありません

書評『別冊太陽 運慶』-07
「定覚と定慶」。大仏師でありながら情報が少ない定覚(じょうかく)と、興福寺の有名な「維摩居士坐像(国宝)」などを造像した定慶(じょうけい)。少ない資料からその作品を追っています

書評『別冊太陽 運慶』-08
興福寺・北円堂の「無著菩薩立像・世親菩薩立像」。このような大きめ画像も多数掲載されています


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■参考にさせていただきました!

運慶 - Wikipedia










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