2010-10-22

不思議な奈良のピラミッド『史跡 頭塔』@奈良市高畑

不思議な奈良のピラミッド『史跡 頭塔』@奈良市高畑

奈良町のはずれに突如として現れる『史跡 頭塔』。ピラミッド状の不思議な構造物で、奈良一番の不思議スポットと言えるでしょう。しかし、見た目の奇抜さとは違い、渋い奈良時代の石仏が祀られた仏塔であり、まさに「奈良のピラミッド」といえるものなのです。


東大寺の僧・実忠が築いた仏塔です

奈良市高畑町にある『史跡 頭塔(ずとう)』は、一辺32mの石積みの基壇上に、7段の階段状の石積みが高さ10mに積み上げられたピラミッド状の構造をしています。

767年の古文書には、東大寺の僧・実忠(じっちゅう)が築いたという記述が見られ、そこでは「土塔(どとう)」と表記されていました。しかし、後に「僧・玄昉(げんぼう)の首塚である」という伝承が広まったため、そこから頭塔と呼ばれるようになったようです。本来の目的は、五重塔などと同様に仏舎利を納める仏塔であったと考えられており、「奈良のピラミッド」などと呼ばれることもあるようです。

1922年には国の史跡に指定され、1977年には各段にある石仏の13基が、2002年には発掘調査で発見された石仏9基が追加で重要文化財に指定されました。

1986年から発掘調査が進められ、北面は復元保存、南面は発掘前の現状保存の形で残されました。石仏などは露出展示をするために保存処理が施され、直射日光を遮るための鞘堂を設置し、未確認の石仏の位置には、新たなものを設置しています。また2000年に周囲の見学デッキや解説板などが作られました。


街中のホテルのすぐ裏側に姿を現します

奈良市高畑町にある『史跡 頭塔』。大きな古墳は見慣れている方でも、奈良の街中に突然こんな異形なものが見えて、驚いた方も多いのではないでしょうか。しかも、そのすぐ隣には「ホテルウェルネス 飛鳥路」があり、奈良の不思議さを実感できる史跡だと思います。

なお、この日は平城遷都1300年祭の特別公開のために、ホテル側から入場していますが、普段は南側から入ります。頭塔の拝観の管理は、地元の民間の方(仲村表具店さん)に委託されているため、この方に施錠された門を開けてもらう必要があります。ご不在のことも多いようですので、必ず事前予約しておきましょう。


史跡頭塔@奈良市-01

市内循環バス「破石町」のバス停付近から『史跡 頭塔』を眺めたところ。隣の建物は「ホテルウェルネス飛鳥路」さん。奈良の街中のホテルのすぐ裏手にこんな史跡があるのが、奈良のすごいところです!

史跡頭塔@奈良市-02
この日は平城遷都1300年祭の特別公開のため、事前予約なしで拝観できました。通常は、拝観者の管理は地元の民間の方に委託されているため、事前予約が必要です。この日はホテルの敷地内から入場しましたが、普段は南側の細い道から入ります

史跡頭塔@奈良市-03
頭塔の東側(ホテル側)に設けられた受付。特別公開の時はこちらから入場します

史跡頭塔@奈良市-04
これは、ホテルウェルネス飛鳥路さんのロビーに貼ってあるパネル。ホテルの屋上からの眺めですね。今は周囲に木製の見学デッキが張り巡らせてありますので、それ以前に撮影したものでしょう。見れば見るほど奇妙な姿ですね

史跡頭塔@奈良市-05
史跡頭塔の施設内の展示パネルより。1987年当時は、ただのこんもりとした丘だったことが分かります。以前から大量の石仏が発見されていたとはいえ、見た目は奈良では見慣れた古墳のようですね。それを発掘調査してみたのが下の写真です

史跡頭塔@奈良市-06
同じく展示パネルより。頭塔の各面に置かれた、重要文化財の石仏の説明です。距離があるため現物を全て肉眼で見るのは難しいため、ここでしっかりと見ておきましょう。如来三尊像や涅槃図など、貴重な奈良時代の石仏です


奈良時代の重要文化財の石仏が22基

航空写真などで頭塔の全体図を見渡してみると、まさにピラミッド状になっていることがよく分かります。長い歴史の間に土に埋もれてしまったとはいえ、やはり古墳とはまた違った姿だったことでしょう。復元された姿を見ても、これが五重塔などと同じ意味合いを持つ仏塔だとは思えないほどで、やはり「奈良のピラミッド」という呼び方が似合いますね。

ただし、当初の頭塔は現在の復元された層のさらに奥にあり、表面からは見えないようになっています。また、小さめの瓦屋根も石仏の保護のために取り付けられたもので、当初からあったものではありません。

頭塔全体には、計22基の重要文化財の石仏が置かれており、パネルなどの説明では、それぞれとても表情豊かでバラエティーに富んでいるようです。しかし、上の層のものになるとかなり距離があるため、肉眼ではほぼんど識別できません。頭塔に行く際には、オペラグラスや双眼鏡などを用意していくといいでしょう。

第一段にある「如来三尊像」を見比べてみましたが、これが奈良時代に掘られたものだと思うと感慨深いものがありますね。素朴な表情のまま一世紀以上もここにいらっしゃったかと思うと、不思議な迫力すら感じられます。

『史跡 頭塔』の姿は、中に入場しなくても遠目からでも見ることができます。ピラミッド状の姿を眺めるだけならそれでもいいのですが、貴重な石仏の表情を見ようと思ったら近づかなくてはいけませんので、ぜひ事前予約をした上で拝観に行ってみてください。


史跡頭塔@奈良市-07

頭塔の東西南北には、このような解説パネルがあります。これは東面のもの

史跡頭塔@奈良市-08
頭塔の東面を実際に見たところ。石組みの間に石仏が配され、その上には瓦のひさしが。瓦の屋根は無かったはずですが、以前の姿が復元されています。南側が現状保存のため、石垣ではなくほぼそのまま遺されています

史跡頭塔@奈良市-09
東面の第一段にある「如来三尊像」。丸々とした穏やかな姿に見えます。こんな素朴な石仏も、奈良時代からずっとここにあり続けたのかと思うと、不思議な迫力を感じます

史跡頭塔@奈良市-11
頭塔の東面の南側からは、頂上にある「五輪塔」が見えます。これは江戸時代に据えられたと考えられているそうです

史跡頭塔@奈良市-12
南面はこんな感じです。通常はこの石碑の下の石段から入場します

史跡頭塔@奈良市-13
史跡頭塔の案内看板

史跡頭塔@奈良市-14
頭塔の南面の図。南側は、まるで古墳のような状態のまま保存されているため、少し高い位置になると草木が生い茂っていてよく見えません

史跡頭塔@奈良市-15
南面の第一段くらいの高さにいらっしゃる「如来三尊像」。線が薄れています

史跡頭塔@奈良市-17
頭塔の西面の様子。如来三尊像や涅槃図などが配されていますが、すでに何を描いたものなのか判別できない「図像不明」といものもあります

史跡頭塔@奈良市-18
これは西面の「如来三尊像」。同じ題材であっても、それぞれ保存状態も見え方も違っているのが分かります

史跡頭塔@奈良市-19
このような見学デッキが設けられているため、全ての角度から頭塔を眺めることができます。なお、見学の際にはオペラグラスなどがあるといいですね。上の方にいらっしゃる石仏もしっかりと見えると思います



大きな地図で見る


■史跡 頭塔

HP: http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-6709.htm
住所: 奈良県奈良市高畑町921番地
電話: 0742-26-3171(現地管理人の仲村表具店さん)
拝観時間: 9:00 - 17:00
拝観料: 300円
駐車場: なし(有料の県立高畑観光駐車場から徒歩5分)
アクセス: JR・近鉄奈良駅から市内循環バス「破石町(わりいしちょう)」下車すぐ

※通常時期には、拝観には事前予約が必要です






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